ドイツ政府は3月5日、脱原発で生じた損害を補償するため、総額約24億ユーロ(約3100億円)を支払うことで電力4社と合意したと発表した。
ドイツでは2002年にシュレーダー政権が脱原発の方針を決めたが、2010年になってメルケル政権が原発の稼働期間の延長を打ち出した。
2011年3月11日の福島第一原発事故で、この決定が覆ることになった。
メルケル首相は3月11日の事故を受け、翌12日に国内すべての原発の点検を表明し、14日には前年(2010年)に決めたばかりの「原発の運転延長政策」の凍結に踏み込んだ。
さらに3月15日には、国内17基の原発のうち1980年までに稼働を開始 (32年の運転年数期限到達)した7基の運転を3カ月間停止すると発表した。(このほか、Kruemmel 原発は故障で停止中で、実質8基が停止となる)
その後、メルケル政権は、福島原発事故後のドイツ国内の反原発運動の圧力に抗いきれずに、すべての原発を2020年までに廃止するという以前の決定を受け入れることになった。
2011年6月末のドイツ連邦議会で、この決定が513対79で可決された。
この決定で、8基の旧型の原発が2011年に廃止され、9基の原発は2022年までにすべて廃止されることが確定した。
VattenfallのKruemmel 原発は2011年3月時点で休止していた。
電力会社RWE は2011年4月1日、3月15日の政府によるBiblis原発の運転停止命令は行政手続き法に違反していたとして、メルケル政権とヘッセン州政府を相手取り、行政訴訟を起こした。政府の安全規則に従っており、停止命令の法的根拠はないと主張した。
他社も相次いで訴えたが、電力会社の敗訴が続いた。
2016/7/12 ドイツの原発停止訴訟、電力大手の敗訴続く
原発事業者のRWE、E.ON とスウェーデンに本社を置く Vattenfall の3社が所有権、職業及び事業の自由を侵害されたとして、憲法裁判所に訴えた。
3社とも脱原発に異議はないとした上で、適切な損害賠償(190億ユーロ)を求めた。
これに対し、憲法裁判所は2016年12月6日、原発を操業していたエネルギー企業各社が補償を求める権利を認める判断を下した。
原子力発電からの脱出を加速させたことは容認できるとし、さらに段階的廃止の決定自体も合法だとしながら、企業側が政府から「適切」な補償を受け取る権利があると認めた。
憲法裁判所は補償額の決定は行わない。政府に対し、2018年央までに補償額を決めるよう指示した。
2016/12/9 ドイツの憲法裁判所、原発廃止で原発事業者の補償請求権を認める
今回、政府は憲法裁判所に訴えた3社のほか、EnBWも加えて、補償金の支払いで和解した。
内訳は下記の通り。 (百万ユーロ)
電力会社 対象原発 補償額 EnBW Phillipsburg 1
Neckarwestheim 180 EOn Isar 1
Unterweser42.5 RWE Biblis A
Biblis B880 Vattenfall
(Sweden)Brunsbüttel
Krümmel1,425 合計 2,427.5
補償額は、即時停止により得られなかった収入 (at a rate of EUR33.22/MWh)と、停止命令前に稼働期間延長のために行ない、無駄になった投資額の合計とされる。
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