米国立アレルギー感染症研究所(NIAID)のAnthony Fauci 所長は1月22日、今後2週間以内にJohnson & Johnson 子会社のJanssen Pharmaceutical が開発中の新型コロナウイルスワクチンがFDAから緊急使用の承認を受けるとの見通しを示した。
所長は、「J&Jのワクチンは超低温で保管する必要がないうえ、接種は1回で済むという点で、Pfizer製やModerna製とは大きく異なる」と評価した。
2021/1/26 J&Jのワクチン、2週間以内に米国で緊急使用許可
Johnson & Johnson は2月4日、新型コロナウイルスワクチンの緊急使用許可をFDAに申請した。
Fauci 所長の希望より若干遅れたが、FDAは2月27日、緊急使用を承認した。
J&Jは米国向けに3月末までに2000万回分、6月末までに1億回分を供給する見通しで、2021年には10億回分を生産する計画であった。(単独ケース)
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Biden大統領は3月2日、新型コロナウイルスワクチンについて、5月末までに米国の全ての成人の接種分を確保できる見通しだと述べた。
これまでは、7月末までに約3億人の米国民全員分のワクチンを供給するとしていた。併せて学校再開に向け、3月末までに教職員が少なくとも1回目のワクチンを接種することを目指すと表明した。
大統領は、米MerckがJohnson & Johnsonの新型コロナウイルスワクチンを生産すると発表した。J&Jの「1回接種ワクチン」の生産を加速する目的で政府がアレンジした。
Merckは米国の2つの製造設備をJ&Jのワクチン生産に充てる。1つの設備でワクチンそのものを生産し、もう一つの設備で小瓶(vial)に充填する。
保健福祉省によると、Merckが設備をワクチン生産の安全基準を満たすために改造、改善するために国防生産法(Defense Production Act)により105百万ドルをMerckに支給する。
政権発足当初から、J&Jがワクチン生産能力が十分でないことを認識し、追加の生産施設を米国中で探してきたとされる。
1月25日に米Merck (米加以外での社名はMSD : Merck Sharp and Dohme)は、同社のCOVID-19ワクチン(V590 と V591) の開発プログラムを打ち切ると発表した。2種のワクチンは、Phase 1の臨床試験で自然感染や既存のワクチンと比べ、免疫反応が劣るとデータで示されたためで、2つの新型コロナ治療薬の開発に集中する。
2021/1/26 米Merck、ワクチン開発中止
米政権は直ちにMerckとの交渉に入った。
保健福祉省は発表を受け、これによりJ&Jは当初予定の「6月末までに1億回分供給」を「5月末までに1億回分近くを供給」に繰り上げられ、最終的にJ&Jの供給力を倍増すると述べた。
Merckは具体的な数量は明らかにしていないが、この提携は非常に意味のあるもので、J&Jのワクチン供給能力を劇的に増やすと述べた。また、この設備は自社のワクチン用のものであり、他の医薬品の生産に支障を来さないと述べた。また、他のワクチンメーカーへの協力もやぶさかでないとしている。
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加藤官房長官は3月2日、このワクチンが国内でヤンセンファーマにより治験を実施中であり、薬事申請が行われた場合には、有効性や安全性を確認のうえ、承認される手続きを踏むことになると説明した。
しかし、毎日新聞によると、契約条件のうち接種後に健康被害が出た場合の補償を政府が肩代わりする範囲を広げるよう企業側が求め、折り合いが付いておらず、日本政府内での調達の機運は乏しい という。
政府関係者は先行して米英3社と供給契約を結んでいることから「十分な量は確保できた」としているという。
実際には、このワクチンは超低温での保管の必要がないことや、1回接種という大きなメリットがあるとともに、米英3社の契約はあっても、いつ入荷するか分からない状況であり、政府の消極的な姿勢は大問題である。
米政権との姿勢の違いが極めて大きい。
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