イタリア政府は3月4日、イタリア国内で製造されたAstraZenecaのワクチンのオーストラリアへの輸出を差し止めたと発表した。
AstraZenecaはイタリアのAnagniにあるCatalent Biologicsの工場にワクチンのvial 充填、包装を委託している。Catalent BiologicsはJohnson & Johnsonのワクチンも扱う予定。
AstraZenecaはイタリア政府に対し、ここから豪州への25万回分のワクチン輸出を申請したが、イタリア政府はこれを差し止め、欧州委員会もこれを支持した。
EUが加盟国に義務づけているワクチン輸出に関する措置に基づいたもので、輸出が差し止められたのは初めて。
イタリア政府は、オーストラリアに輸出するワクチンの量がおよそ25万回分とイタリアやEU加盟国に供給されている量と比べて多いことや、イタリアやEUでワクチン不足や供給の遅れが続いていることなどをあげている。
2月に就任したばかりのMario Draghi首相がEU首脳に対し、ワクチン接種を急ぐ必要があり、約束した分を供給しない医薬会社をやっつけるべきだと述べた数日後に発表された。
EU諸国のワクチン接種は、イスラエルや英国と比べ遅れているが、AstraZenecaは1月に第1四半期のEUへの供給を90百万回分から40百万回分に削減し、その後、第2四半期の供給も50%カットすると伝えている。その後、第2四半期の削減分は欧州外から供給するよう努力しているとした。
Pfizerもワクチン増産に伴う製造工程の変更を理由に、欧州諸国とカナダ向けのワクチン供給を一時的に削減すると明らかにしていた。
欧州委員会は1月29日、新型コロナウイルス対策ワクチンのEU域外への輸出に対し、許可制度を導入すると発表した。
EUが事前購入合意を締結した製薬会社が相次いで供給の遅れを発表し、欧州委は危機感を強めた。
事前購入合意の速やか、かつ完全な履行と透明性の確保を求めている。
概要は次の通り。
対象 | 欧州委が事前購入合意を締結した製薬会社のワクチンを、 EU加盟国から輸出する場合 ただし、人道支援やワクチン分配の国際的枠組み「COVAX」に基づく輸出は規制の対象外 |
輸出社 | 加盟国に通知を行い、加盟国の許可を得なければならない。 |
許可 | 輸出が、事前購入合意に基づくEUへのワクチン供給を妨げないと判断する場合にのみ、欧州委の意見に基づいて出す |
目的 | 「ワクチンのEU市民への速やかなアクセスを確保し、現在の不透明なEU域外への輸出に対処すること」 |
期間 | 2021/1/30~3/31
3月4日現在、これを6月末まで延長することを検討中。加盟国の多く(独、仏を含め)が延長に賛成 |
付記
欧州委員会は3月11日、新型コロナウイルスワクチンの輸出制限措置を6月まで延長すると発表した。
欧州委によるとEUはバルカン諸国やアフリカへの支援用も含め、最大26億回分のワクチンを契約しているが、EUへのワクチン供給が遅れているため延長に踏み切った。
発表文によると、英国やカナダ、日本など31カ国に向け3400万回分(うち日本は270万回分)のワクチンの輸出が許可されたという。一方で承認されなかったのは1件だけ。
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