新型コロナウイルス新規検査法を開発

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医療検査機器開発のマイテックと琉球大学は3月15日、「量子結晶」を用いたプラズモン増強効果により新型コロナウイルスを2分で可視化する新規検査法を共同開発した と発表した。

PCR検査はウイルス遺伝子を増幅して検出するため、手技が煩雑で結果を得るまでに数時間(通常、1~4時間)かかる。また、迅速抗原検査はどこでも簡単に検査できるが、PCR検査と比較すると感度が低く一度に大量の検査はできない。

開発された検査法は、光がミラーボールの反射のように増強されるマイテックの技術を活用、蛍光顕微鏡で観察する。

マイテックは、バイオチップ(プロテオ®)表面に1分で金属錯体の結晶(量子結晶)を固相化させる特許技術を有しており、この技術を応用し、1滴の血液でがんを早期診断する新しい検査法を確立している。

今回、上記の技術をCOVID-19の診断に応用する研究開発を、琉球大学大学院医学研究科 感染症・呼吸器・消化器内科学の研究チームと共同で行った。

これまで2回の試験で、感染者と非感染者の計175人の検体を扱い、72~94%の割合でPCR検査の陽性の判定と一致した。

この新しい検査手法をCV(Coronavirus Visualization)検査と命名した。CV検査では検査時間を大幅に短縮できることだけでなく、測定前の工程が2ステップと簡便で、かつ迅速抗原検査では検出できないような低ウイルス量の検体でも定量的にカウントすることができた。


仕組みは下図の通り。

手順1.光の増強効果がある量子結晶の試薬と、新型コロナウイルスに反応する抗体を付着させた プロテオ®バイオチップを準備する。量子結晶でナノレベルのくぼみをつくる。

マイテックは プロテオ®バイオチップ(蛋白質等を特異的に検出するバイオチップ)の表面に1分で量子結晶を固相化させる特許技術を有している。

量子結晶はマイテックが世界で開発に成功した新たな概念の新規プラズモン物質固体中での自由電子の集団励起の量子)で、蛍光物質の光を増強する特徴を持ってい る。
また、量子結晶は通常12時間以上かかる金属錯体の固相化を1分に短縮する事ができる。

手順2.検査を受ける人の唾液や鼻腔から採取した検体に標識抗体(蛍光物質)を混ぜ、チップにたらす。 ここまでを最短2分で済ませることができる。

検出 感染している場合は、ウイルスと抗体がくっつき、光がミラーボールの反射のように増強されるマイテックの技術でウイルスに付着した蛍光物質が増強され、通常の顕微鏡でも確認できる。ウイルスがなければ、抗体とくっつかず、洗浄されるため、光らない。

共同記者会見で、琉球大学大学院医学研究科の金城武士助教は「これまでウイルスを可視化して診断しようというアイデアはなかった。迅速、簡便で一度に大量の検査ができ、多くの患者をいっぺんに診断する状況には非常に有用だ」と強調した。

製品の開発費に数千万円かかり、その確保が課題となる。実用化した場合、1検体で5千円程度の検査費用を見込み、さらなる低減を目指す。

東京五輪・パラリンピックまでに実用化したい考えで、空港の検疫所やイベント会場など、人出が多い場所での検査を見込んでいる。

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バイオベンチャー「マイテック」は長谷川克之氏が1999年に妻の長谷川幸子社長とともにを設立、息子の裕起氏が加わった。広範囲分野の研究を独学で進め、「量子結晶」「過酸化銀メソ結晶」を発見、2011年にそれをもとに超早期のがん診断を簡易かつ安価に行える世界初のがん診断ツールを開発した。

「過酸化銀メソ結晶」のチップに、がん患者の血液から分離させた血清を乗せると、がん細胞から出る「ヌクレオソーム」を吸着し、がんの大きさが直径0.1ミリ以下の超早期のがんでもその有無を約3分で診断できる。蛍光顕微鏡で確認する。

対象となるのは、膵がん、肺がん、乳がん、胃がん、肝がん、大腸がん、舌がん、甲状腺がん、腎臓がん、前立腺がん、子宮がん、卵巣がんなどの固形がんで、がんのリスクをA(リスク低)・B(要観察)・C(リスク高)の三段階に分類・判定する。

現在、リスクスクリーニング検査(リスク判定)として全国の医療機関で実施している。

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