国産ワクチン、承認は来年以降

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第一三共は3月22日、新型コロナウイルスワクチンの臨床試験(治験)を始めたと発表した。日本人152人を対象として、安全性や有効性を確認する初期段階の治験である。
同社のワクチンはPfizerやModernaと同様、mRNAを使うものである。

mRNAは体内に入ると分解されてしまうため、脂質の膜にくるんでワクチンとして投与するが、第一三共は独自技術を用いた材料を膜に使用し、接種後の炎症が起きにくくなることが期待できるという。

KMバイオロジクスも同日、開発中のワクチンの第I/II相臨床試験(治験)を始めたと発表した。毒性をなくしたウイルスを用いる「不活化ワクチン」で、同タイプの新型コロナウイルスワクチンの治験は国内初となる。

国産ワクチンでは他に、アンジェスと塩野義製薬が臨床試験を行っている。

KMバイオロジクス 独自ワクチン   前臨床段階 2021年3月21日 第I/II相治験開始 
国立感染症研究所、東京大学医科学研究所、医薬基盤・健康・栄養研究所との協業による不活化ワクチンの開発
2020年度内の国内臨床試験開始を目標
アンジェス
 
Phase Ⅱ/Ⅲ段階

ワクチンの実生産(大規模生産)体制の早期構築を 図るための事業
2020/6/26 アンジェスのコロナワクチン、大阪市大病院で治験へ

タカラバイオがその製造を担い、AGC Biologics社が中間体の分担製造、Cytivaが精製用資材の優先的な供給で、更にシオノギファーマが中間体の分担製造で協力体制に加わった。

塩野義製薬
 
組換えタンパクワクチン感染研/UMNフ ァーマ/塩野PhaseⅠ/ Ⅱ段階

遺伝子組換え技術を用いて培養細胞よりコロナウイルスのタンパク質抗原を製造しコロナウイルスタンパク質抗原を人に投与するための注射剤

付記 2022/11/26 塩野義製薬、COVID-19ワクチンS-268019の国内における製造販売承認申請 

第一三共

メッセンジャーRNA(mRNA)ワクチンDS-5670  前臨床段階 
  2021年3月22日、国内で152人を対象に初期段階の治験開始


付記 2023/1/13 追加免疫の国内製造販売承認申請(下記)

第一三共バイオテックの工場での生産体制整備

IDファーマ/感染 アイロムグループのIDファーマ  前臨床段階
コロナウイルスの遺伝情報を
持ったセンダイウイルス(仙台の東北大で発見)投与するワクチ人体の中コロナウイルスのタンパク質(抗原)が合成される

GMPに準拠したベクター製造施設・細胞培養加工施設(CPC)を保有

Medicago
 
海外生産
田辺三菱製薬のカナダ子会社

2020/7/17 田辺三菱製薬、カナダ子会社の新型コロナウイルスワクチンの第1相臨床試験開始を発表


最も進んでいるのはアンジェスのワクチンである。

同社では当初、2021年春の臨床試験終了、2021年中の実用化を予定していた。しかし、大規模な追加治験を求められたことから、実用化時期も2022年以降にずれ込む。

付記

第一三共 新型コロナに対する国産mRNAワクチン「DS-5670」を承認申請
第一三共は2023年1月13日、新型コロナに対するmRNAワクチン「DS-5670」について、18歳以上の追加免疫用として承認申請したと発表した。
自社創製品で、冷蔵温度帯(2~8度)で流通可能なことが特長のひとつとなる。

国産の新型コロナワクチンの申請は塩野義製薬の「S-268019」(同)に続く2剤目、国産mRNAワクチンの申請は初めて。

同社は今回、通常承認の手続きで申請し、承認取得後に初回免疫用やオミクロン株対応2価ワクチン、小児適応などの一変申請を行い、新たな適応を追加していく方針。

DS-5670の生産は埼玉県北本市の子会社 第一三共バイオテックの工場で生産する。

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日本での医薬品承認手続きは下記の通り。

1)通常の承認制度

臨床試験は、比較的少人数の健康な人を対象とする第Ⅰ相試験、少数の患者を対象とする第Ⅱ相試験、多数の患者を対象とする第Ⅲ相試験という流れで行わう。

2) 特例承認制度

国民の生命及び健康に重大な影響を与えるおそれがある疾病のまん延等を防止するために緊急に使用されることが必要な医薬品で、当該医薬品の使用以外に適当な方法がない場合、特例的に承認する。但し、我が国と同等の水準にあると認められる国で承認されたもの。

現状は下記に限る。
対象品目:
「新型インフルエンザのワクチン」と
      「新型コロナウイルス感染症にかかる医薬品」 (レムデシビルを見越して追加)
我国と同等の水準の国:「米国、英国、カナダ、ドイツ、フランス」のみ

レムデシビルとPfiazerのワクチンはこれにより承認された。

3) 条件付き早期承認制度

有効な治療方法が乏しく患者数が少ない疾患等を対象とする医薬品で、治験実施が困難、あるいは治験の実施にかなりの長期間を要する場合、検証的臨床試験の成績を求めることなく、市販後に必要な調査等を実施することを承認条件として当該医薬品の製造販売承認を行う制度。

①適応疾病が重篤であること、
②既存の治療法がないこと等により、医療上の有用性が高いこと、
③検証的臨床試験の実施が困難であること、
④検証的臨床試験以外の臨床試験等の成績により、一定の有効性、安全性が示されると判断されること

米国には、流行が終わるまでの「緊急使用許可」制度があるが、日本にはない。(米国での緊急使用許可も日本の特例承認制度の対象にはなる。)

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日本では新型コロナの患者が少なく、海外と同じ数万人単位の治験は難しい。

ワクチン接種グループと偽薬(placebo)接種グループで感染者を比較するが、患者が少ない場合、両者の差が少なく、ワクチンの有効性が判断できない。

このためアンジェスでは、「検証的臨床試験の実施が困難であること」を理由に、数百人規模の治験ですむ条件付き早期承認を2021年春から夏ごろをメドに取得する狙いであった。

しかし医薬品医療機器総合機構(PMDA)が2020年9月に公表した新型コロナワクチンの評価方針では、治験を「適切に評価できる規模」とする条件をつけた。

試験の規模に関する考察
ワクチンの有効性を評価する試験では、感染症の発生率、臨床的エンドポイント、発症予防に相関する免疫反応(存在する場合)等に基づいて、適切に評価できる被験者数を設定すべきである。発症予防効果をエンドポイントとする有効性試験は、通常多数の被験者数が必要となる。

「感染症予防ワクチンの臨床試験ガイドライン」について

この結果、アンジェスが狙った、数百人規模での治験による条件付き早期承認は無理となった。

日本で数万人単位の治験を進めるのは難しく、海外治験が必要となるが、ワクチン評価指標では「1年の観察期間が必要」と定められており、治験終了は2022年以降になる。

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なお、世界的にワクチンの接種が進むにつれ、大規模治験で「未接種者」の確保が難しくなりつつある。また、感染が広がるなかで偽薬を投与することは倫理的に問題となる。

このため、新しい評価方法が必要となる。

各国の薬事規制当局で作る国際組織のICMRA(International Coalition of Medicines Regulatory Authorities)では、接種後の血液中の抗体の量や免疫反応を比較する試験を行う等の代替案を提示した。

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