UL 規格不正問題

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すこし古い話だが、 東洋紡と京セラの2社が、米国の安全規格であるUL規格に関して長年にわたって不正を行っていたことが判明した。

東洋紡は最初に昨年10月末にPBT樹脂についての不正を発表した。これはDICから譲り受けた製品で、DICの不正をそのまま引き継いだものであ ったが、その後、本年2月と3月にDICから譲り受けたもう一つの製品と東洋紡自身の製品で不正があったことを発表した。

京セラは2021年1月8日、6製品の不正を発表したが、京セラのケミカル事業部は2002年に東芝ケミカルを買収して作られたもので、東芝ケミカル時代から延べ35年にわたり不正を続けていた。

UL規格は米国の第三者安全科学機関であるUnderwriters Laboratories(UL)が策定する製品の安全規格。

ULは、認証、試験、検査、アドバイザリー/トレーニング・サービスの提供によって、120年間にわたり、発展を遂げてきた世界的な第三者安全科学機関。

材料・装置・部品・道具類などから製品に至るまでの機能や安全性に関する標準化を目的としている。
UL規格の認証取得は任意だが、州のプロジェクトではUL認証を義務付けている場合も多く、アメリカの電気製品の多くはUL認証品となっている。

火災保険業者によっては「このUL規格が無い場合、保険を受け付けない」としているところもある

米国に製品を輸出する多くの企業にとって、 その材料が不適合であることは製品そのものが問題となる可能性があり、大問題である。

不適合材料を使っているか否かを調査し、しかるべき対応を余儀なくされる。既に、不適合材料が判明し、顧客に連絡したり、販売を停止したり、材料を切り替えたりする企業が出ている。

部品点数の多い自動車メーカーへの影響は大きい。

経緯や内容は下記の通りだが、1社だけの特殊な例ではない。両社とも買収した事業が不正をしているのを知りながら、そのまま継続している。東洋紡の場合、引き継ぎ製品の不正が分かり、念のため調べたら自社でも同様のことを多数の製品で、多数のやり方で実施していた。

DICの場合、売却したPBT樹脂で今回不正が分かったが、同社の他の製品で同様のことをやっていないだろうか。(PBTだけ不正をやった特殊事情があるのだろうか)

1社だけの特殊な例でないとすれば、これだけ続発すると他社に同様のことがないとは確言できない。

米国の需要家の目に、これが日本の慣行と見られ 、日本の製品は品質面で信用できないと見られると大問題である。

さらに、日本の基準や規格、規則はきちんと守っているのだろうか。

1. 東洋紡

ポリブチレンテレフタレート(PBT樹脂「プラナック®」 について、ULに認証登録されている性能値に対して、実際に販売している商品の性能値が一部適合していないことが判明した。

ULが不定期に実施する確認試験時に、実際に販売する商品と異なる組成のサンプルを提出していた。

東洋紡からULに報告、2020年10月28日にUL保証が取り消された。

本件について、12月29日に調査結果を発表した。

本事業は2010年3月31日付でDICから譲渡を受けた。その時点で事態を把握したが、上層部に報告せず、確認試験用の組成も含めて引き継いだ。

2013年11月に担当部門内で報告されたが、継続した。

2015年10月に本件に関する資料が作成され、撤退には代替品が必要として、販売を続けながら開発を進めた。

2020年になり、開発が失敗、8月に幹部に報告され、会社として事態を認識、その後、ULに報告。

なお、UL提出用サンプルの生産は同社の品質保証部門の監査の対象外であった。

その後、他に問題がないかどうか調査した。

2021年2月3日発表  「バイロペット®」 、「グラマイド®」 、「ペルプレン®」 で問題発見、UL保証取消

2021年3月26日発表 更にバイロアミド®」 、PPS樹脂」 、「グリラックス®」 で問題発見、UL保証取消


当該製品の概要と不適合理由は下記の通り。(日経クロステック)

このうち①ブラナック(PBT)は上記の通り、2010年3月にDICから譲渡を受けたが、⑦のグリラックス(熱可塑性ポリエステルエラストマー)も2009年3月にDICから譲渡を受けたものである。

https://xtech.nikkei.com/atcl/nxt/column/18/00001/05428/


2.京セラ

京セラは2021年1月8日、6製品の難燃性および絶縁性について、ULが実施する認証試験で実際の製品とは異なるサンプルを提出していた事実等が確認されたと発表した。

この認証不正は35年前からのことという。京セラのケミカル事業部は2002年に東芝ケミカルを買収して作られたもので、東芝ケミカル時代に不正が行われていたということになる。

京セラは2002年5月16日、東証2部上場の東芝ケミカルを、8月1日付で株式交換により買収し完全子会社とすることで合意し、株式交換契約を締結したと発表した。

これに伴い、東芝ケミカルは社名を「京セラケミカル」に変更する。京セラは買収により、東芝ケミカルの有機化学を基盤としたファインケミカル技術と、自社のファインセラミックス技術を融合し、高付加価値の部材開発を進め、電子部品グループとして競争力強化を図る。

当該製品の概要と不適合理由は下記の通り。(日経クロステック)


https://xtech.nikkei.com/atcl/nxt/column/18/00001/05417/




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