厚労省、3つ目のコロナ治療薬承認 

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厚生労働省の薬事・食品衛生審議会第二部会は4月21日、すでに国内で関節リウマチ薬として承認されている日本イーライリリーの経口JAK 阻害薬「Baricitinib(商品名オルミエント)」を、新型コロナウイルス感染症の治療薬として使用することを了承した。

投与対象は新型コロナに感染した中等症や重症の患者で、すでに特例承認されている「レムデシビル」との併用を前提にする。

オルミエント®は、Incyte Corpにより経口投与のJAK 阻害剤として発見され、Eli Lilly にライセンス供与された

日本では2017年7月3日に「既存治療で効果不十分な関節リウマチ」用として承認され、9月1日に日本イーライリリーから発売された。

日本での新型コロナの治療薬としての承認はレムデシビル、ステロイド薬のデキサメタゾンに次ぐ3つ目となる。

FDAは2010年5月1日に、Remdesivirを症状の重い入院患者に投与する緊急使用を許可(EUA)した。 10月22日に正式承認した。

2020/10/23 FDA、レムデシビルを正式承認

日本では、海外で先に承認された場合に日本での審査を短縮する「特例承認」を適用して、Gilead Sciencesが2010年5月4日に承認を申請し、厚生労働省が5月7日に「特例承認」している。

2020/5/1 レムデシビル、5月にも特例承認

厚生労働省は、新型コロナウイルス感染症の診療ガイドラインに「デキサメタゾン」を新たに掲載した。2020年7月21日に判明した。

2020/6/17 COVID-19 重症患者にステロイド剤デキサメタゾンが効果

20201119日にFDAがレムデシビルと併用によるバリシチニブの流通及び使用に関して緊急使用許可(EUAを出した。

対象は、酸素投与、侵襲的人工呼吸、又は体外式膜型人工肺ECMOを必要とするCOVID-19の疑いのある、又は検査でCOVID-19と確定した入院中の成人患者及び2歳以上の小児患者。

Eli Lilly と Incyte Corp2020年1211日、米国国立衛生研究所傘下の国立アレルギー感染症研究所(NIAIDが主導した新型コロナウイルス感染症に対する試験の結果が、査読誌New England Journal Medicineに掲載されたことを発表した。

この第III相臨床試験は、867治験施設より1,033人の患者登録された。

本試験結果から、レムデシビル単独療法と比較して、バリシチニブとレムデシビルの併用療法が、COVID-19で入院している患者の回復までの期間の中央値を8日から7日に1日短縮し、うち、中等症から重症の患者では18日から10日に8日間短くなった。人工呼吸に至った又は死亡した患者の割合を低減したことが示された。

この結果は、FDA1119日に発令したレムデシビルとの併用によるバリシチニブ投与に関する緊急使用許可(EUA)を支持するものである。

なお、米国立衛生研究所(NIH)は3月5日付で、新型コロナウイルス感染症の治療指針を更新し、重症患者に、関節リウマチなどの治療薬「トシリズマブ」(中外製薬のアクテムラ)を、既にコロナ治療で広く使われているステロイド系抗炎症薬の「デキサメタゾン」と併用して投与することを推奨した。

英政府は2021年1月7日、「アクテムラ」(Tocilizumab)と「サリルマブ」が新型コロナウイルス感染症の治療にも有効だと発表した。

中外製薬は、年内に国内でCOVID-19治療薬として承認申請する計画に変更はないとしている。

2021/3/16 米国立衛生研究所、コロナ重症治療でアクテムラとデキサメタゾンの併用を推奨

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オルミエントは国内で関節リウマチ薬として承認されている経口JAK 阻害薬である。

JAKは細胞の外から様々な刺激を細胞内に伝えるために働く酵素群(キナーゼ)の1つであるヤヌスキナーゼ(Janus kinase)の略称

関節リウマチでは、サイトカインという物質が白血球など免疫に関与する細胞を活性化して炎症を引き起こす。
サイトカインは細胞の表面にあるサイトカイン受容体に結合することにより細胞に刺激を与え、その刺激は細胞内に伝わって細胞の中心にある核に到達、核内ではDNA合成が盛んに行われ、細胞が増えたり炎症を起こす様々な物質をつくったりするようになる。JAKは細胞のなかでサイトカイン受容体に結合し、サイトカインによる刺激を下流に伝える。


生物学的抗リウマチ薬(注射剤で週1回など間隔を空けて投与)は、薬剤が1種類の特定のサイトカインを細胞の外でブロックすることにより、細胞に炎症を起こす刺激が入らないようにする。
JAK阻害薬(毎日内服する経口薬)は複数の種類のサイトカインに対して、サイトカイン受容体からの刺激を細胞のなかで遮断して炎症を抑える。

アクテムラ(トシリズマブ)は生物学的抗リウマチ薬で、インターロイキン(IL)‐6という特定のサイトカインを細胞の外でブロックする。

重症化したCOVID-19に発症する急性呼吸器不全は致死率が高いが、この原因は炎症性サイトカインの産生が異常に増加し起こるサイトカインストームが原因である。

2020/5/6 COVID-19の致死的急性呼吸器不全症候群の原因はサイトカインストーム


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