韓国LG Electronicsは4月5日、スマートフォン事業から撤退すると発表した。
中価格帯のスマホ市場で劣勢だった同社は2022年1月の米家電見本市「Consumer Electronics Show」でディスプレー画面を巻物のように伸縮可能な新型スマホン「LG Rollable」を発表し、高価格帯にシフトする姿勢を示したばかりだった。
「LG Rollable」はその後、開発を中止した。
同社は昨年9月にT字型ディスプレイ搭載スマホ「WING」を発売し注目をあびたが、ほとんど売れていない。
LG Electronicsは北米や中南米、韓国中心に世界でスマホを販売しているが、2020年12月期の販売台数は約2500万台で、売上高は5兆2171億ウォン(約5100億円)、営業損益は8412億ウォンの赤字だった。
赤字は2015年から6期連続で、この期間の累積赤字は4兆7100万ウォン(約4600億円)規模に膨らんでいた。
単位:兆ウオン( 1ウォン=0.098円)
売上高 営業損益 2015 14.34 -0.12 2016 12.24 -1.22 2017 11.16 -0.74 2018 7.88 -0.78 2019 5.97 -1.01 2020 5.22 -0.84 累積 -4.71
2020年の韓国市場では、Samsungが65%を占め、次がAppleの20%、LGは13%(前年は16%)に留まっていた。中国勢に押され、グローバル市場でのシェアは1%程度とされる。
これまで国内生産の撤退や外部委託の活用などでコスト削減を進めたが、黒字化の道筋が見えなかった。
同社は2019年に、国内最大のスマートフォンの生産拠点だった平沢工場をベトナムに移転した。
これによってスマートフォンの工場はすべてベトナム・中国・ブラジル・インドなどの海外に所在している。
このため、同事業の売却を図り、交渉を行ったが、うまくいかず、最終的に外部への技術流出を懸念して売却を断念し、事業撤退を決めた。
当初、有力な売却先としてベトナムのVingroupやドイツのVolkswagenと交渉したが成立しなかった。
Vingroupはベトナムのコングロマリットで、事業は不動産、ホテル・リゾート開発、遊園地事業、小売業、病院事業、教育事業など多岐に渡る。
Vingroupがスマホ事業に乗り出したのは2018年で、それ以来LGと提携しODM生産を行っているため、スマホ事業売却先としてVingroupの名前が浮上した 。しかし、Vingroupが提示した金額がLG側の希望額に及ばなかったため、破談になったとされる。
グローバル市場でのシェアが低く、高い価格で購入する買い手を探せなかった。
7月末をメドに自社スマホの販売を終了する。「スマホの競争激化で事業不振が続いており、主力事業に集中する」と撤退の理由を説明した。
約3700人いるスマホ部門の人材は業績好調の家電やテレビ部門に転籍し技術を生かす。車載電池を手掛けるLG化学でも受け入れる。
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