米財務省は4月16日、貿易相手国の通貨政策を分析した半期為替報告書を公表した。
2020年12月にトランプ前政権が「為替操作国」に指定したスイスとベトナムに加え、新しく台湾が「為替操作国」の認定基準を満たしたが、今回、バイデン政権は為替操作国の認定を見送った。
1988年の法律に照らし、それら3カ国・地域に「効率的な収支調整を妨害する、もしくは国際貿易において競争上の不当な優位性を得る」意図があったと結論付ける「十分な証拠はなかった」と説明した。
今後、公式協議を含むenhanced engagementsを行い、為替相場の過小評価と対外不均衡の過小評価の基調的な原因に対応するために特化した行動計画を策定するよう呼び掛ける。
3か国は認定基準では「為替操作国」なのに今回認定を見送った理由として、台湾への配慮があるとの見方がある。今回、初めて台湾が認定基準に該当するが、中国対策や半導体供給などで台湾との関係が重要ななか、経済制裁につながりかけない「為替操作国」指定を回避し、台湾を外す以上、既に指定しているスイスとベトナムも外したというものである。
「監視リスト」には、2020年12月の日本、中国、韓国、ドイツ、インド、イタリア、マレーシア、シンガポール、タイに加え、前回は外れたアイルランドと、今回初めてメキシコが指定された。メキシコの経常黒字はGDPの2.4%で、従来の基準では問題になっていない。
2020/12/22 米、スイスとベトナムを「為替操作国」に指定
米財務省は為替操作国に指定する条件として(1)対米貿易黒字の規模(2)経常黒字の規模(3)継続的な通貨売り介入――を掲げている。
従来の基準 | 2019/5より改正 | |
①重大な対米貿易黒字 | 対米貿易黒字が200億ドル(米国GDPの約0.1%) 以上 | 同左 |
②実質的な経常黒字 | 経常黒字がその国のGDPの3.0%以上 | GDPの2.0%以上 |
③外為市場に対する介入 | GDPの2%以上(ネットで)の額の外貨を繰り返し購入 (12カ月のうち、8カ月) |
同左 (12カ月のうち、6カ月) |
3基準全てに該当すれば「為替操作国」となる。次の場合、「監視リスト」に入る。
2基準に該当 & 1基準だが、前年「監視リスト」の場合
なお、中国は常時、「監視リスト」
③の外為市場介入(12カ月のうち6カ月)は、台湾、スイス、インド、ベトナム、シンガポールの5カ国。
日本は介入ゼロ、中国は若干の介入はあるが、12カ月のうち6カ月未満で対象外となっている。
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3基準 |
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2基準 |
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1つだが前年に監視対象 | 丸数字は問題となった項目 |
日本 | 中国 | 韓国 | 台湾 | ドイツ | スイス | インド | アイルランド | ベトナム | イタリア | マレーシア |
シンガポール | タイ | メキシコ | |
2016/4 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | ー | ー | ー | ー | ー | ー | ー | ー | ー |
2016/10 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | ー | ー | ー | ー | ー | ー | ー | ー |
2017/4 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | ー | ー | ー | ー | ー | ー | ー | ー |
2017/10 | 〇 | 〇 | 〇 | ー | 〇 | 〇 | ー | ー | ー | ー | ー | ー | ー | ー |
2018/4 | 〇 | 〇 | 〇 | ー | 〇 | 〇 | 〇 | ー | ー | ー | ー | ー | ー | ー |
2018/10 | 〇 | 〇 | 〇 | ー | 〇 | 〇 | 〇 | ー | ー | ー | ー | ー | ー | ー |
2019/5 |
〇 ①② |
〇 ① |
〇 ② |
ー | 〇 ①② |
ー |
ー |
〇 ①② |
〇 ①② |
〇 ①② |
〇 ①② |
〇 ②③ |
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2019/8 | 操作国 | |||||||||||||
2020/1 | 〇 ①② |
〇 ① |
〇 ①② |
ー | 〇 ①② |
〇 ①② |
ー |
〇 ① |
〇 ① |
〇 ①② |
〇 ①② |
〇 ②③ |
ー | ー |
2020/12 | 〇 ①② |
〇 ① |
〇 ①② |
〇 ①② |
〇 ①② |
操作国 | 〇 ①③ |
ー | 操作国 | 〇 ①② |
〇 ①② |
〇 ②③ |
〇 ①② |
ー |
2021/4 | 〇 ①② |
〇 ① |
〇 ①② |
操作国 非認定 | 〇 ①② |
操作国 非認定 | 〇 ①③ |
〇 ①② |
操作国 非認定 | 〇 ①② |
〇 ①② |
〇 ②③ |
〇 ①② |
〇 ①② |
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