飲む(錠剤)ワクチン、貼るワクチン

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4月26日のTBSテレビ「あさチャン!」が「飲むワクチン」を取り上げた。

米国の製薬会社 Vaxart Inc が開発している経口ワクチンで、同社の最高科学責任者 Ph.D. Sean Tucker は次ぎのように述べている。

錠剤タイプの飲むワクチンを開発している。注射器や注射を打つ医師も必要ないし、さらに冷凍が必要な従来のワクチンと比べ、保存や運搬の負担が大幅に軽減できる。

飲み方も簡単で、1錠服用したのち28日間空けさらに1錠、合計2錠を服用するだけで完了。年1回、2錠飲むことが想定されていて、従来のインフルエンザ予防と同じ扱いになる。

すべて上手くいってくれれば、1年くらいで提供することができるようになる。

同社のワクチンはAstraZenecaなどと同じ複製能力を欠損させたアデノウイルスに新型コロナウイルスの表面のスパイクタンパクの遺伝子と自然免疫系を活性化するアジュバントを組み込んだもので、同社のシステムは VAAST™ delivery platform (Vector-Adjuvant-Antigen Standardized Technology)と呼ばれる。

錠剤型のワクチンで、口から投与され、小腸の粘膜から作用し、粘膜免疫を誘導するという他のワクチンとは異なるアプローチを取っている。

粘膜免疫は腸管を中心とする体の粘膜のバリア機能で、口から入ってきた細菌などから体を防御する役割を担っている。粘膜には生体内の免疫細胞の6〜7割が分布している。

粘膜免疫を利用した経口ワクチンとしては、現在日本で承認されているのは経口ポリオワクチン(弱毒生ワクチン)のみだが、海外においてはロタウイルス、コレラウイルス、腸チフスなどが承認されている。

錠剤表面をコートすることで胃酸から守られ、小腸に送達するように製剤化されている。アデノウイルスベクターが小腸の粘膜上皮細胞に取り込まれると抗原たんぱく質を発現し、免疫を誘導する。更に、組み込まれているアジュバントがワクチンの効果を高める。

錠剤が飲めない幼児や老人のための液剤化も開発中である。

同社はこれまでにこのシステムをインフルエンザなど多数のウイルスについて安全性や効果のテストを実施してきている。


別途、英国のバイオ企業のiosBio も錠剤ワクチンの
OraPro vaccine platformを開発してきた。50℃の熱に耐え、胃の過酷な環境を通過できる。

同社は本年1月12日、米国のImmunityBio, Inc.との間でOraPro™ vaccine platform technology worldwideの独占ライセンス契約を締結した。
ImmunityBioの第二世代のCOVID-19のAdeno ワクチン候補の経口での
臨床試験を 米国で始めている。


AstraZenecaの
開発チームのチーフは本年2月、現在の全てのワクチンは注射だが、これは必ずしもベストではなく、鼻スプレイや錠剤も考えられ、検討を始めていると述べた。

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University of Pittsburgh School of Medicineの研究者らは4月1日、新型コロナウイルスのスパイクタンパク質を抗原とし、微細な針を並べた「マイクロニードルパッチ」で投与するワクチン候補を開発し、マウスで抗体価の上昇を確認したと報告した。

研究者らは、2003年の重症急性呼吸器症候群(SARS)と2014年の中東呼吸器症候群(MERS)のコロナウイルスで研究を行ってきてた。

ワクチンは、多数の微細な針(マイクロニードル)がシート状に並んだマイクロニードルアレイ(MNA)を使ったマイクロニードルパッチで皮膚から投与する。
ワクチンは針に溶け込んでいる。常糖とタンパク質からなるマイクロニードルアレイは、皮膚に貼ると溶解し、含まれている抗原分子が浸透して、強力な免疫を誘導する。


このワクチンは冷凍あるいは冷蔵保存の必要はない。常温保存が可能なので輸送費を削減し、特に後発開発途上国へのワクチン配布をサポートする。

マイクロニードルパッチのSARS-CoV-2ワクチンをマウスに投与したところ2週間で中和抗体が誘導された。

マイクロニードルワクチンは、滅菌に用いるガンマ線照射を行っても、その効果を維持した。

ワクチンは Pittsburgh Coronavirus Vaccineからとって、PittCoVacc と呼ばれる。

開発者は2つの点で安全性を主張している。1つはワクチンの抗原が従来のインフルエンザワクチンよりもはるかに低用量だから。2つ目は、使う抗原は皮膚内の非常に限られた部分に浸透するので、一部の患者で見られるような全身反応が起こる可能性は殆どない。

今後数カ月以内に安全性を確かめる第Ⅰ相の臨床試験を開始する。


東大でも同様の研究を行っている。工学部精密工学科の金範埈教授等の「溶解性マイクロニードル式経皮ワクチンデリバリーパッチ」である。

「DAB(Droplet-born Air Blowing)」と呼ぶ製造方式で、インクジェット技術を使って、薬を混ぜた溶解性物質の液滴(Droplet)を基板上に等間隔に付着させる。その後、もう1枚の基板を重ねてから、2枚の基板をゆっくり引き離すと、溶解性物質の粘度が高いためDropletは引き延ばされる。このとき冷風を当てておけば、適当な場所で切れてマイクロニードルが完成する。

既存の方式では過熱が必要でワクチンへの適用は困難だが、この方式では適用可能である。

 


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