欧州議会、EU・中国の包括的投資協定の批准を凍結

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中国と欧州連合(EU)は2020年12月30日、「包括的投資協定」(CAI: Comprehensive Agreement on Investment)を結ぶことで大筋合意した。約7年越しの交渉がようやく妥結した。

2021/1/1 中国・EU、投資協定に大筋合意 

この投資協定の批准を巡り、EUの欧州議会は5月20日、中国がEUの政治家に対する制裁 (下記)を撤回するまで手続きを凍結する決議を、賛成599、反対30、棄権58で採択した。

決議では、投資協定の手続きを行う前に「中国が制裁を解除するよう要求する」とし、「EUと中国の関係は通常通り続けられない可能性がある」としている。決議は法的拘束力を持たないものの、欧州議会の公式な立場となる。

在EU中国政府代表部は3月21日に声明文を発表し、投資協定は「互恵的」であり、一方の側から他方への「優遇」ではないと指摘し、「中国は最初から誠実に相互協力を促進しており、EUの歩み寄りを期待する」とした。
中国の制裁はEUの行動への正当な対応だとしている。

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EUは2020年12月に中国との投資協定を結ぶことで大筋で合意した一方、ウイグルや香港などをめぐる人権問題では厳しい姿勢で臨んでいる。

EUは3月22日、外相会議を開き、世界の人権状況について協議した。

その結果、中国、北朝鮮、ロシア、リビア、エリトリア、南スーダンの6か国の個人11人と団体4つを対象に、深刻な人権蹂躙の責任があるという理由により、制裁の賦課を決定した。

別途、 ミャンマーの軍部高官11人に対しても資産凍結、入国禁止制裁を賦課した。

中国については、新疆ウイグル自治区で人権侵害に関わったとして自治区の公安部門のトップら4人と、自治区の開発や治安維持を担う組織「新疆生産建設兵団」の公安局に対し、EU域内への渡航禁止とEU内の資産凍結の制裁を科すことを承認し、即日、発動した。EU内の個人および機関が、制裁対象に資金を供給することも禁止される。

「ウイグル人への組織的な強制労働や恣意的拘束、信仰の自由侵害について制裁を科す」と説明した。

EUが中国に制裁を科すのは、EUの前身のEC(ヨーロッパ共同体)が1989年の天安門事件を受けて武器の輸出禁止の措置を取って以来、初めて。


これに対し中国外務省は同日夜、対抗措置としてヨーロッパ議会の議員など10人と4つの団体に制裁を科すと発表した。
制裁の対象者やその家族が中国や香港、マカオを訪れることを禁止するほか、関係する企業などに対し、中国との商取引を制限する。

また、EUによる制裁はでたらめや虚偽の情報に基づいているとして「事実を顧みずに黒を白だと言いくるめる乱暴な内政干渉で、国際法や国際関係の規範に反しており、中国とEUの関係を大きく損なう」などと強く非難し、「過ちの重大性を認識し、ただすことを求める」として、さらなる対抗措置も辞さない姿勢を示した。

今回の欧州議会の決議は、この制裁の撤回を求めたもの。 

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