OECD、デジタル課税で米提案を採用へ

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巨大IT企業を念頭に置くデジタル課税の国際ルールづくりで、経済協力開発機構(OECD)は米国の新提案を採用する調整に入った。5月19~20日に開いたオンライン会議で、関係国の交渉担当者に新たなルールに基づく複数の試算を示した。

米国が4月に提案した案に沿ったもので、利益率と売上高の規模による簡素な線引きで世界の100社程度を課税対象にする。

既に具体的な基準について約140の交渉参加国・地域に伝え始めた。 早ければ20カ国・地域(G20)が7月にイタリアで開く財務相・中央銀行総裁会議での合意をめざす。

デジタル課税と並行して議論する法人税の最低税率についても、米国は従来想定の21%から引き下げて「15%を下限」とする案を示した。

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巨大IT企業が各国市場で膨大な利益を稼ぎながら、恒久的施設(Permanent Establishment) を置く国が課税権を持つという原則に基づき、全く法人税を納めないことが問題となっている。
特に欧州各国が問題とし、独自の課税を始めた。

フランス上院は2019年7月11日、Digital Services Tax法案を可決し、Macron 大統領は7月24日にこれに署名、これが法律となった。

米通商代表部(USTR)は2020年7月10日、フランスの「Digital Services Tax」を巡り、2021年1月6日から化粧品、ソープ、ハンドバッグの21品目、13億ドル分のフランス製品に25%の報復関税を課すと発表した。

イタリア議会代議院(下院)は2019年12月23日、2020年の予算案を賛成334、反対232で可決した。このなかで、フランスに追随してデジタル課税の2020年1月1日導入を決めた。

英政府は2020年3月12日、大手IT企業を対象にした新たなデジタル課税を4月に導入することを正式に決めた。

米通商代表部(USTR)は2020年6月2日、Digital Services Taxを巡り、英国など10カ国・地域を調査すると発表した。不公正だと認定すれば制裁関税を含む対抗措置を検討する。

経済協力開発機構(OECD)は2019年10月9日、高収益を上げている多国籍大企業(デジタル企業を含む)の消費者向け活動の拠点がどこにあるか、どこで収益を上げているかにかかわらず、確実に納税するための新枠組み案を公表した。10月17日からの20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議に報告し、2020年1月の大筋合意に向け、各国は詰めの議論に入る。

対象は連結の売上高が7.5億ユーロ以上で、利益率が10%超の「消費者向け」ビジネスを行う大規模企業
採掘産業、コモディティ、金融サービス等は除外)

対象となるグローバル企業の利益を分割し、それぞれに別個に課税する。

通常利益 一般的な利益
(OECD案では利益率10%分)
従来通り 恒久的施設(Permanent Establishment) を置く国が課税権を持つ。
超過利益 ブランド力や知名度といった「無形資産」で全世界の消費者から稼いだ利益 各国での売上高の割合に基づいて課税

2020/2/18 OECD、多国籍企業課税新ルールの影響の試算発表

デジタル課税を巡る議論はOECDを中心に2020年末の最終合意をめざすが、各国の意見が折り合わず議論が難航した。

米通商代表部(USTR)は2020年6月17日、Mnuchin米財務長官がDigital Taxを巡る国際協議からの撤退を決めたと伝えた。
その後、2020年12月に
デジタル課税の枠組みを「セーフハーバー」とする案(企業がデジタル課税の対象となるか否かを選択できることを認める案)を提案した

OECDは2020年1012日、デジタル課税等について検討しいる「包摂的枠組み」が、合意期限を当初の「2020年内」から「2021年半ばまで」に延期する旨の声明を発表した

米通商代表部(USTR)は2021年1月7日、フランスが導入した「デジタルサービス税」への対抗措置として計画した制裁関税を巡り、発動を無期限で延期すると発表した。「同様の調査が並行して続いており、対応をそろえる」ためだと説明した。

詳細経緯は 2020/10/23 フランス、デジタル税を再開 の後半参照

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バイデン政権のイエレン米財務長官は2021年2月26日、バイデン政権発足後初めて参加したG20財務相・中央銀行総裁会議で、大手IT企業を対象としたデジタル課税をめぐり、「骨抜き案」の導入を主張していたトランプ前政権の方針を転換すると表明し、国際的な協議の進展へ歩み寄りを示した。


本年4月に米国が新たに提案した内容が判明した。

2020年10月にOECDがまとめた素案は、オンライン広告やクラウドサービスなどの業種で線引きしようとした。オンライン教育やIoTは対象外とする。
この案については業種の区分の定義が曖昧などとの批判があった。

米国案は、売上高と利益率の規模で機械的に対象を決める。米企業の狙い撃ちになるのを避け、対象を世界で100社ほどに絞り込む。
企業の国別売上高に応じて税収を各国に配分するという現行案の仕組みは変えない。

今回、OECDは関係国の交渉担当者に新たなルールに基づく複数の試算を示した。いずれも米国が4月に提案した案に沿っており、利益率と売上高の組み合わせで一定の基準を超えるグローバル企業に課税する。

具体的には売上高を100億ドル(約1兆1000億円)以上とする案や、利益率の水準を15~20%以上とする案などがある。

財務省幹部によると「現状の試算では日本企業はほとんど含まれない」という。

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