日本人開発の新タイプの新型コロナワクチン

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赤畑渉博士が米国で設立したVLP Therapeutics, LLCの日本子会社は、開発中の新型コロナウイルスワクチンの第1相臨床試験を6月までに日本で開始する。
ワクチン投与量が通常のワクチンの1/10以下でよいもので、非臨床試験では変異株にも有効性が確認された。

12月に第2相臨床試験を開始、2022-23年の供給を目指す。

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創業者でCEOの赤畑渉博士は、東京大学を卒業後、京都大学で博士号を取得。その後渡米し、NIH のVaccine Research Center の上席研究員として、ウイルス様粒子 VLP (Virus Like Particle) を使ったワクチンを開発した。


日米で2社の製薬会社(アールテック・ウエノ、
Sucampo Pharmaceuticals)を創業し上場させてきた上野隆司博士、久能祐子博士夫妻と出会い、自身が開発したワクチンの実用化を進めるために起業を決意した。2013年にVLP Therapeuticsを設立、夫妻をCo-Founderに加えた。感染症(マラリア、デング熱など)やがんに対するワクチン開発、および遺伝子治療への応用を目指している。


2019年2月に i-αVLP (inserted alpha VLP) Technology で開発したマラリアワクチン候補 VLPM01の新薬臨床試験開始届(IND)が米食品医薬品局(FDA)により認可され、フェーズ I/IIa の患者登録を開始した。

2019/3/5 マラリアワクチンの臨床試験 開始

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VLP TherapeuticsのCOVID-19ワクチンは、Pfizer と同じく、mRNAを脂質ナノ粒子(Lipid Nanoparticle)に内包するものだが、mRNAは体内で分解しやすいため一定量の投与が必要である(下図の左)。

脂質ナノ粒子は、直径10nmから1000nmの脂質を主成分とする粒子で、核酸医薬などを内側に内包させて薬物送達システム(DDS)として利用されている。

これに対し、VLP Therapeuticsのワクチンは自己増殖mRNA(レプリコン)を有効成分とし、脂質ナノ粒子に内包する。
体内で自己増殖する機能を加えることで、微量でも効果が出る(下図の右)。

Molecular Therapy Volume 27, Issue 4, 2019/4/10


体内に投与されたmRNAが自己増殖して大量の抗原をつくりだす。VLPの試算では、1人当たり投与量はPfizer製ワクチンなどの1/10の1~10マイクログラムで済むという。

また、ウイルスの細胞への侵入を効果的に防ぐ設計がなされている。ウイルスは、表面のスパイクたんぱく質が細胞膜上の受容体に結合し細胞に侵入する。開発中のワクチンは、受容体への結合部を狙ってウイルスの病原性を抑える中和抗体を効率良く作成し変異株にも効果を生むと見ている。

但し、mRNAの自己増殖が過度に続くと副作用が出るリスクもあるのではないかとの声もある。


日本医療研究開発機構 (AMED) の2000年度「新型コロナウイルス感染症に対するワクチン開発」に国立国際医療研究センター、医薬基盤・健康・栄養研究所、大分大学および公立大学法人大阪(大阪市立大学)と共同で応募し、採択された。

研究開発課題名:自己増殖 RNA テクノロジーを用いたわが国における新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に対するワクチン開発

このような企業主導型の場合、研究実施予定期間を通じて、1課題あたり原則~100億円が支援される。


2020年10月1日に富士フィルムとの間で新型コロナウイルス感染症ワクチンの製剤の製造委託契約を締結した。


富士フィルムは2020年3月に脂質ナノ粒子製造装置の開発・製造・販売のリーディングカンパニーであるカナダのPrecision NanoSystems Inc.と戦略的パートナーシップ契約を締結している。

今後、富士フイルムは保有する脂質ナノ粒子製剤の製造設備・インフラを活用して、VLP TherapeuticsのCOVID-19ワクチンの製剤のプロセス開発から治験薬製造まで受託していく。
数カ月で1億回分の生産が可能になると見られ、将来は海外への供給も目指す。

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VLP Therapeuticsの開発の現状は下図の通り。


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