英仏、漁業権めぐりにらみ合い、艦船派遣

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英仏海峡に浮かぶジャージー島(英王室属領)の沖合での漁業権をめぐる英国とフランスの対立が深刻化し、5月5日から6日にかけて双方が艦船を派遣する騒ぎになった。

2018年にホタテ漁をめぐり英仏漁船が衝突した「ホタテ戦争」の再来かと一時緊張が高まった。

英国とEUは離脱交渉で揉めに揉めたが、最も問題となったのは「公正な競争の確保(Level Playing Field)」のほか、漁業に関する問題である。

英国はEU離脱で主権を回復し、領海内での漁業を自国で管理しようとしており、逆にEUは従来通りとすることを求めた。

2020/9/11 英国「合意なき離脱」辞せず

最終的に下記の通りとなった。

EUの英水域での漁獲割り当ては5年半にわたり現状から25%削減

初年度15%減、その後毎年2.5%ずつ削減を増やす。(英国は当初 80%減を求めていた。)

その後は英はEU漁船を水域から除く権利を持つ。EU側は継続のための武器ありとしている。(英水産物への関税、税金など)

2020/12/25 英EU、通商協定で合意 

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「ホタテ戦争」は2018年8月末に英仏間で勃発した。

フランスのノルマンディ地方にあるセーヌ湾の広域のところで、ほたての良い漁場である。

フランス船が、イギリス船に体当たりして激突。35隻のフランス船が、5隻のイギリス船に「戦争」を挑んだという。

フランス側には、ホタテ資源の確保のために、小さいホタテをとってはいけない、漁は10月1日から5月15日まで、漁船は15m以下 などの厳しい規則がある。

英仏のホタテをめぐる緊張は15年にわたって続いているが、5年前に英国の大型漁船が海域に入らない取り決めが結ばれ、英国の漁船は1年中ホタテ漁を行っている。

フランス側の禁漁期間に英漁船がホタテ漁を行なうのに怒り、攻撃した。

英国とフランスは2018年9月6日、英仏海峡のホタテ漁をめぐって基本合意に達した。フランス側の禁漁期間中に英漁船がセーヌ湾でホタテ漁をすることを禁じた。

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今回の問題は次の通りで、上記の通商協定の合意後に起こった。

ジャージー島は海峡最大の島で自治権を持つ英王室属領である。英本島から離れ、フランスの沿岸にあり、周辺海域では英仏の漁船が操業している。

昨年の英国のEU離脱を受け、島自治政府が外国漁船に対し、海域での漁業歴を示すことを操業許可の条件とする新規則を導入 した。
位置情報を得る装置を搭載した大型船以外は詳しい履歴を提出できず、海域へのアクセスが大幅に制限された。

このため、「不公平」な扱いに怒った仏漁民は、抗議のため島最大都市セントヘリアの港を封鎖すると主張し、6日早朝、漁船50隻以上が港近くに集結した。

英政府は「予防措置」として海軍の哨戒艇など2隻を沖合に派遣、仏政府も巡視船2隻を送り、双方がにらみ合う事態となった。

緊張の中、自治政府と仏漁船代表者が話し合い、海域アクセスに関する「協議の場」を設けることで合意した。
英・EU当局は連絡を取り合っており、通商協定に盛り込まれている紛争解決メカニズムが適用される可能性が高い。EU当局者は、ジャージー島政府が通商合意の条件に違反したと非難したが、英国政府はこれを否定している。

英国はEUとの協定で英水域での漁獲割り当てで一応の勝利を得たが、当初想定されていた通り、EUへの水産物輸出手続き・費用が必要となり、輸出に支障が出ている。

双方ともに不満であり、今後もいろいろな争いが発生するのではないかと懸念されている。

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