セブン&アイ・ホールディングスは、米子会社7-Eleven, IncによるMarathon Petroleum からのコンビニエンスストア併設型ガソリンスタンド部門「Speedway」事業に関する株式その他持分の取得が5月14日に完了したと発表した。
取引の対価の総額は210億ドル(2兆3232億円)で、日本で普通社債で3,500億円、金融機関借入で4,820億円を、米国で普通社債で10,950百万ドル、金融機関借入で2,250百万ドルを調達して支払いにあてた。
取得した店舗への今後15年おけるガソリン供給契約をMarathon Petroleumと締結した。
これに対し、米国の連邦取引委員会の一部の委員が異議を唱えた。
付記
7-Eleven, Inc は5月19日、買収した「Speedway」と7-Elevenの合計293店の売却で米3社と合意したと発表した。
売却の内訳はAnabi Oilに124店、Jacksons Food Storesに63店、CrossAmerica Partnersに106店舗で、同社は4月末にFTC事務局との間で、給油所293店の売却を含む和解契約で合意していた。
米東部地域では今回の売却後もシェアが高い地域があるとされ、今後のFTCの動向に注目が集まっている。
付記
米連邦取引委員会(FTC)は6月25日、下記の内容の同意命令書を決議で承認した。一部の委員が反対を表明していたセブン&アイによる同業「スピードウェイ」の買収が承認される見通しとなった。
委員の4人が賛成し、就任したばかりのカーン委員長は棄権した。
FTCが発表した合意内容によると、セブンイレブンは、上記の通り、米国内の「スピードウェイ」と「セブンイレブン」の合計で293店を米同業など3社に売却し、今後5年間は店舗を買い戻すのにFTCの承認が必要になる。また、10年間はFTCが指定した商圏で資産を売買する際はFTCへの事前通知が必要となる。
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セブン&アイは2020年8月3日、同社の米国子会社7-Eleven, Incを通じて、米石油精製会社Marathon Petroleumの傘下の「Speedway」ブランドで運営されるコンビニエンスストア事業および燃料小売り事業を持つ複数の事業会社の株式その他の持ち分を取得することを発表した。 米国にはガソリンスタンド併設のコンビニエンスストアが多い。「Speedway」はMarathon Petroleum直営のガソリンスタンドとコンビニを運営する。
Marathonは2019年10月にSpeedway事業を分社化し、上場させる方針を発表した。選択と集中戦略に基づく方針で、ガソリン需要の低下が予想されて逆境にある本業の石油精製事業をテコ入れすることを目的とした。
その後、事業売却に方針を変更し、英ガソリンスタンド運営EG Groupに投資する英投資ファンドのTDR Capital やセブン&アイと交渉を行った。当初の売却提示価格は220億ドルであった。
一旦はセブン&アイが断念したとの報道もあったが、最終的にセブン&アイが当初提示価格よりも安い210億ドルで買収した。取引完了は2021年第1四半期(1~3月)を見込んだ。
米国で業界第3位のSpeedway(約3,900店舗、2019年末時点)を買収することで、米国内店舗は約1万4,000店舗と大きく拡大し、業界第2位の カナダのケベックでスタートした Alimentation Couche-Tard("Couche-Tard"や"Circle K"など 約5,900店舗、2019年末時点)を店舗数で倍以上引き離すことになる。
但し、米国ではコンビニが乱立しており、Speedwayを合わせても、同社のシェアは約9%にとどまる。
その後、セブン&アイは米FTCとの手続きを進めてきた。
買収後のシェアは約9%で、これ自体は問題にはならないが、FTCは一部の州で寡占化によるガソリン価格の高騰を懸念した。
FTCの審査で難航し、FTCの要請に基づき契約時期を4回変更し、当初2021年3月までとしていた買収完了予定の延期に応じ、最終的にスピードウェイ買収の契約日を5月14日と決めた。
4月末にはFTC事務局との間で、給油所293店の売却を含む和解契約で合意した。FTCの事務方も委員に合意の承認を勧告したという。
FTC委員会は定員5名で、決定には過半数の賛成が必要である。(同一党からは3名しか指名できない。)
しかし、現在1名が欠員で、民主党系が2名、共和党系が2名となっている。
Biden大統領は3月22日、空席のFTC委員にLina Khan を指名した。任命は上院の承認待ちとなっている。
民主党系2名、共和党系2名のFTCは、全委員がこの取引に問題があると認識したが、対処方針をめぐり意見が分かれ、過半数の合意が必要となる買収の阻止や訴訟などの強制措置には至らなかった。
報道によると、合意した契約日の3日前の5月11日、Slaughter臨時委員長らが合意を検討するための時間がほしいと要請した。セブン&アイは「法的根拠がない」として拒否し、5月14日に契約を締結した。
これを受け、民主党系のRebecca Kelly Slaughter臨時委員長、Rohit Chopra 委員が連名で異議を唱える声明を発表した。
「独占につながる懸念がある違法なものだ」とし、全米のガソリンスタンドやコンビニでの価格高騰を招くとした。
競争上の懸念を払拭する対策を合意できていないなかでの契約締結は「極めて異例で困惑している 。両社は自己責任で契約を進めた」とし、司法当局と連携して調査を継続し、反競争的な弊害に対処するため「適切な道筋を決める」と している。
共和党系のNoah Phillips委員とChristine Wilson委員も買収の違法性には同意しており、「効果的な救済策を講じないまま、FTCは取引の完了を許可した」と非難した。臨時委員長らの声明について「当事者を拘束せず、消費者は無防備なままだ」と不満を漏らした。
セブン&アイは今後、事業の分離を求める訴訟などのリスクを抱える可能性がある。
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