バイデン米大統領は2月24日、重要部材のサプライチェーン(供給網)を見直す大統領令に署名した。半導体や電池など重点4品目で安定した調達体制を整える。有力企業を抱える同盟国や地域と連携して、中国依存からの脱却を目指す。
先ず重要4品目の供給網を100日以内に見直す。リスクを調べ、それへの対応策の提案を求める。
100-Day Supply Chain Review
担当 | 品目 |
商務長官 | 半導体と先端パッケージング |
エネルギー省長官 | 電気自動車用を含む高容量電池 |
国防長官 (国家防衛備蓄を担当) |
レアアースを含む重要な金属や特定の戦略的物質 |
保健福祉長官 | 医薬品及び医薬品有効成分 |
2021/3/1 米、半導体などの供給網見直し
これを受け6月8日に報告書が公表された。
国内の投資不足や競合国の不公正な貿易慣行により、米国の供給網が脆弱になっていると指摘している。
人工知能(AI)など先端技術のカギを握る半導体について「米国の生産シェアは30年間で37%から12%に低下し、輸入品への依存は米国の長期的な競争力を脅かす」と警告。
国内生産・研究開発支援に少なくとも500億ドルを投じるよう議会に要請したほか、日本や韓国など同盟国を巻き込んで世界的な安定供給体制を目指す「国際フォーラム」を開催する方針を示した。
主な勧告や対策案:
<USTRに「攻撃」チーム>
中国に狙いを定め、米国のサプライチェーンを損なっている不公正な通商慣行をやめさせるための新たな「攻撃チーム」を設ける。
チームを率いるのは中国など外国への制裁関税などの権限がある通商代表部(USTR)。
<商務省は通商拡大法232条>
商務省は米通商拡大法232条に基づく調査を検討している。モーターなどの応用品に使われるネオジム磁石の中国からの輸入問題が米安全保障にどう影響するかを調べる。
<供給制約で作業部会>
米国では木材から鉄鋼に至る供給制約の問題が国内のインフレの懸念をかき立てている。これを解決するため、米政権は作業部会を立ち上げる。
重点的に取り上げるのは住宅建設、建築、半導体、運輸、農業、食品など。
<国防生産法で医薬品生産>
バイデン政権は国防生産法を使って、50~100の重要な医薬品を輸入に頼らず、自国で製造できるようにする取り組みを加速する。
朝鮮戦争中に制定された同法は、既に同政権がコロナ対策でワクチンや他の不可欠な医療用品の生産を増強するのに用いている。
<半導体支援>
商務省は半導体メーカーとエンドユーザーの間の情報の流れを円滑化し情報の透明性向上も進める。半導体不足問題の解決も担う。半導体不足は自動車などの製品の生産を阻害している。
<電池政策>
政府の新作業部会が鉱物の採掘許可に関する法律の手直しを検討する。電池に使われる重要な鉱物について、環境面や労働面や持続可能性の「最も高い基準」を順守しつつ、採掘や加工ができる場所を国内で指定することも検討する。
国際開発金融公社は、重要な鉱物プロジェクトへの国際的な投資を拡大する。
エネルギー省は、先端技術の自動車電池のメーカーを支援する融資に170億ドルを振り向ける。
コメントする