仏製薬大手 Sanofiは6月3日、日本で新型コロナウイルスワクチンの最終段階の臨床試験(治験)を始める方針を明らかにした。
実用化した際にはバイオ医薬品製造のUNIGEN(岐阜県池田町)に生産委託する方針も明かした。
Sanofiは 英GlaxoSmithKlineと組んで「組み換えたんぱくワクチン」を開発している。
Sanofiでワクチンを担当するSanofi Pasteurは、遺伝子組換えDNA技術をベースとするS-タンパク質COVID-19抗原を提供する。
遺伝子組換えDNA技術により、ウイルスの表面に検出されたタンパク質と正確に一致する遺伝子配列を作成することができる。抗原をコード化するDNA配列を、Sanofiが米国で開発に成功し承認された遺伝子組換えインフルエンザワクチンの基盤となったバキュロウイルス発現プラットフォームに組み込む。GSKは、実証済みのパンデミックアジュバント技術を提供する。
両社は2020年5月中旬、最終段階の治験を数週間以内に開始する方針を発表した。
このワクチンは、米政府の爆速ワクチン計画(Operation Warp Speed)の対象に選ばれ、2020年7月31日に米政府が21億ドルを支払い、5000万人分を確保した。
しかし、SanofiとGSKは2020年12月11日、試験計画を遅らせると発表した。
第1/2相臨床試験で、18~49歳の被検者においてはCOVID-19から回復した人に匹敵する免疫応答が示されたが、高齢者において十分な免疫応答が得られなかったことから、すべての年齢層において十分な免疫応答を得るために抗原の濃度を改善する必要性が示された。
2021年2月に改善された抗原を用いて第Ⅱ相臨床試験を実施した。
SanofiとGSKは2021年5月25日、ワクチン候補の第II相臨床試験において、成人全ての年齢層で強力な免疫反応を認めたことを発表した。
アジュバント添加遺伝子組換えタンパク質ベースワクチン候補は、全年齢層の成人で中和抗体を誘導し、95~100%の抗体陽転率を示した。
感染歴のある被験者では1回目接種後に高い免疫反応がみられ、強力なブースター(追加免疫)ワクチンとしての可能性が示された。
グローバル第III相臨床試験は、今後数週間以内に開始される見込み
今回、これに基づき、下記の通り、第Ⅲ相国際臨床試験の開始を発表したもの。
・第Ⅲ相臨床試験は無作為化、二重盲検、プラセボ対照、国際共同試験であり、米国、アジア、アフリカおよび中南米を含む国々における18歳以上の3万5,000人以上の被験者を対象に行う。
日本でもこの試験を実施する。
・主要評価項目は、感染歴のない成人におけるCOVID-19症状の予防とし、副次評価項目として重症COVID-19感染の予防と無症候性感染の予防を検討 。
・臨床試験は2段階で行い、第1段階では当初の武漢株を標的とするワクチン製剤の有効性を評価し 、第2段階では南ア変異株を標的とするワクチン製剤の評価を行 う。
最近の研究結果から 南ア変異株に対して産生された抗体は、他の伝染性変異株に対しても幅広い交差予防効果を示す可能性が示されてい る。
試験は幅広い地域で行うよう計画されており、現在流行中の様々な変異株に対するワクチン候補の有効性を評価することができる。・第Ⅲ相臨床試験を補うものとして、ブースター (追加免疫)試験プログラムを今後数週間以内に開始する予定。
・第Ⅲ相臨床試験で肯定的な結果が得られ、規制当局の審査が進めば、このワクチン候補は、グローバルにおいて2021年第4四半期に承認される見込み 。
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Sanofiは6月3日、新型コロナウイルスワクチンを日本で生産する方針を明らかにし、製造委託先の候補に、岐阜県揖斐郡池田町のバイオ医薬品製造UNIGENがあることを明らかにした。
駐日フランス大使ととも行なった工場視察後の記者会見で発表した。
「世界的に製造のネットワークを構築している。UNIGENとは歴史的に良好な関係を築いてきた流れの中で検討している」と述べた。
なお、UNIGENは、塩野義製薬が開発を進めている新型コロナウイルスワクチンの生産も予定している。
塩野義は、グループ会社のUMNファーマが有するBEVS(バキュロウイルスを昆虫細胞に感染させ、 昆虫細胞内で目的タンパクを発現させる技術)を活用した遺伝子組換えタンパクワクチンを開発しており、国内で唯一BEVS技術を用いた遺伝子組換えタンパクワクチンの製造実績を有するアピ㈱とそのグループ会社である㈱UNIGENと提携し、生産体制の立ち上げを進めている。
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