ベトナム国防省傘下の軍医学院は6月10日、ホーチミン市の製薬会社 Nanogen Pharmaceutical Biotechnology JSCが開発中の新型コロナウイルスの組換えタンパク質ワクチン 「Nanocovax」の第3期臨床試験を開始した。
被験者計1万3000人を2つのグループに分けて、25mcgのワクチンとプラセボ(偽薬)の接種を行う。これまでに約6500人のボランティアが集まっている。インド、バングラデシュでも実施する。
第3期臨床試験の被験者の年齢は18歳以上とし、上限は設定しない。これまでに応募があったボランティアの中で最年長は83歳となっている。今回の試験では高血圧や糖尿病などの慢疾患のある被験者にもワクチンが投与される。
順調に進めば、第3期臨床試験は9月末までに完了する。COVID-19の第4波が国内で急拡大している中、保健省はナノコバックスについて緊急措置としての使用許可を検討中である。
当初見込まれるワクチンの生産能力は、年間1000万~2000万回分だが、緊急使用が承認されれば、Nanogenは2021年中に5000万回分、2022年にさらに1億回分を製造することが可能で、国内需要に対応できるものと期待される。
Nanogenは1997年に設立された。先進的は組換えDNA/プロテイン技術を基に、医薬品原体や治療薬を開発しており、癌、B型肝炎、C型肝炎、慢性腎不全による貧血などの治療のための遺伝子治療薬を提供している。
新型コロナウイルスワクチン「Nanocovax」の開発とともに、これとは別に、目薬および点鼻スプレー形態の新型コロナウイルス治療剤の臨床試験にも臨む計画だと される。
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退行性疾患などの治療剤を製造する韓国のHLB製薬は2020年12月、Nanogenと医薬品精製、新薬開発などの分野で協力する覚書(MOU)を締結した。
両社は医薬品に関する開発技術や国内外の事業ネットワークを共有するオープンコラボレーションを通じ、開発力を強化する。
HLB製薬が投資している韓国のバイオ企業 Next Scienceは、Nanogenの株式10.4%を保有している。
Next Scienceの子会社で免疫増強剤などを開発していたDanDi Bioscienceと、免疫チェックポイント阻害剤を開発していたNanogenとの相乗効果を見込んだほか、ベトナムで開発した新薬はASEANで販売できることが背景にある。
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ベトナムでは、「Nanocovax」以外にも、「Covivac」「Vabiotech」という2つのワクチンの第Ⅰ相試験が現在行われている。
Covivac は、Institute of Vaccines and Medical Biologicalsが開発した。
Vabiotechは、Vaccine and Biological Production Company No. 1 (Vabiotech)が開発した。
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ベトナムではAstraZenecaのワクチンとロシアのSputnik Vが承認されている。
ベトナム保健省は6月3日、中国シノファーム製の新型コロナウイルスワクチンの緊急使用を承認した。3種類目となる。
ベトナムはASEAN10カ国の中で、これまで中国からのワクチン供給を受けていない、唯一の国だった。
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