韓国地裁、元徴用工らの集団訴訟で訴え却下

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韓国人元徴用工や遺族計85人が日本企業計16社に計86億ウォン(約8億4700万円)の損害賠償を求めた訴訟で、ソウル中央地裁は6月7日、原告の請求を却下した。地裁は1965年の日韓請求権・経済協力協定に触れ、「訴訟で請求権を行使できない」と結論づけた。


「却下」は訴訟の要件を揃えることができず、本案の審理なく裁判を終わらせること。

5月28日の第1回口頭弁論で、原告・被告双方が求めた審理の延長に地裁が応じず、6月10日の判決期日を指定。さらに原告一人一人への連絡なしに期日を急遽変更し、7日に判決を言い渡した。

元徴用工をめぐっては既に2018年に日本企業に賠償を命じる最高裁判決が確定し、その後も同種訴訟で日本企業敗訴が相次いでいた。

韓国大法院は2018年10月、日本製鉄強制徴用の被害者が出した損害賠償訴訟で被害者の勝訴を確定した。日本製鉄(旧新日鉄住金)に対し、戦時中に日本の工場に動員された4人の韓国の元労働者に1人あたり約1000万円の賠償を命じた。三菱重工業に対する判決も確定している。

大法院判決(11対2の決定)は、戦時中に行われた日本統治下の朝鮮半島から日本本土の工場などへの動員は「日本政府の不法な植民地支配や、侵略戦争の遂行と結びついた日本企業の反人道的な不法行為」と認定していた。

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今回の判決は大法院(最高裁)判決を覆し、徴用問題に関連して正反対の2つの判決が当面共存することになった。1965年に日韓が修交し締結した協定および交渉内容に対して相反した意見となる。

今回の裁判官は、3月29日判決の下記の裁判を担当しており、判決はある程度予想できた。

ソウル中央地方法院は3月29日、元従軍慰安婦の女性らが日本政府に損害賠償を求めた訴訟で1月に勝訴した件で、原告が訴訟費用確保のために日本政府の資産差し押さえを求めたのに対し、これを否定する決定を行なった。

確定判決を有効としつつ、外国の資産への強制執行はその国家の主権侵害にあたる可能性を指摘し、韓国内の日本政府の資産を差し押さえた場合、「憲法上の国家安全保障、秩序維持、公共の福祉と相反する結果を招く」と懸念を示した。

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原告らは2015年5月、戦時中に日本本土の工場に強制動員されたとして、三菱重工業や日本製鉄、三井造船(現・三井E&S)、ENEOS、住友金属鉱山、三菱マテリアルなど17社を相手取り提訴した。
5月に入り、原告側が1社に対する訴えを取り下げて被告が16社となり、公示送達の効力が発生した後の5月28日に第1回口頭弁論が開かれ、即日結審していた。

日本企業側は、1965年の日韓請求権協定で解決済みとする日本政府の見解に沿って賠償責任はないと主張した。

判決で裁判所は、「原告側の請求権は韓日請求権協定によりすぐに消滅したり放棄されたとはいえない」が、「韓国国民が日本や日本国民を相手にして権利の行使をすることは制限される」とし、「この事件の請求を認めることは、国際法違反の結果を招き得る」と指摘した。

さらに、仮に原告の請求を認める判決が確定し、強制執行に至った場合、「国家の安全保障や秩序維持を侵害するため権利の乱用に該当する」とした。

大法院が日本の植民地支配を「不当」としたことについても「不当性は国際法的に認定されていない」とした。

大法院全員合議体のうち、「個人の請求権は行使できない」とした少数意見(2人)の法理を引き合いに出した。


原告側はすぐに控訴することを決めた。
韓国では、これが大法院に行った場合、控訴審の結果がどのように出てきても、大法院が3年越しに自分たちが下した判決を否定するのが容易ではないため、従来の判例を維持するという見方が支配的である。

付記 原告側は6月14日、裁判所の損害賠償請求訴訟却下判決を不服として控訴した。

韓国内では裁判官への批判が殺到している。

与党代表は判決直後「朝鮮総督府京城裁判所の判決なのか疑われる」という表現まで使って判決を猛非難した。該当判事を弾劾しようという青瓦台の国民請願掲示サイトへの投稿は1日で20万人以上になったという。

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