EUの欧州委員会は6月9日、欧州中央銀行(ECB)の資産買い入れプログラムについてドイツ連邦憲法裁判所がEU司法裁判所の判断に異議を唱えたことを巡り、同国に対し法的措置を開始すると発表した。
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欧州単一通貨ユーロを使う19カ国の金融政策を決める欧州中央銀行(ECB)は2015年1月22日、定例理事会を開き、ユーロ加盟国の国債などを購入し、資金を大量に金融市場に供給する「量的緩和政策」の導入を決めた。ユーロ圏は物価が下落し続けるデフレの懸念が強まっており、量的緩和はこれを払拭する狙い。
2015年3月から2016年9月末まで、毎月 600億ユーロ(約8兆円)、総額1兆1400億ユーロ(約156兆円)の金融資産を買い取る。国債、政府機関債、国際機関債を対象とする買い取りプログラムは"The Public Sector Purchase Programme (PSPP)"と名付けられた。
EUの最高裁に当たる欧州司法裁は同プログラムを適法と判断していた。
しかし、2015年に約1750人のドイツの法律学者と経済学者の集団がこれに問題提起した。
ドイツ憲法裁は2020年5月、ECBの資産買い入れプログラムは権限の範囲を超えていると指摘し、ECBが政策の必要性を証明しなければ、ドイツ連邦銀行は国債買い入れを停止する必要があるとの判断を下した。
ドイツ憲法裁は、ECBはPSPPについて適切に「均整性」テストを適用しておらず、ドイツはそれに異議を唱えるべきだった、とし た。
そして、3か月の期限を設けて、この政策が適切に均整性テストを適用していることを示すように要求した。
もし、3か月以内にこれがなされなければ、ドイツ政府やドイツ連銀は量的緩和政策への参加を止めなければならない、と主張した。
ドイツ憲法裁の考え方は、EU加盟各国の司法にはEU法が国内法にどんな時に優越するのか、あるいはしないのかを決める権利がある ということで、EU司法裁判所をEUの最高裁とする体制に挑むもの。欧州司法裁の判断を権限の範囲外と認定した。
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今回欧州委は、ドイツ憲法裁判所の一部違憲判断はEU法の一体性を損なうとした。
欧州委の報道官は「EU法は加盟国の国内法に優先する。EU司法裁の判断は全て、国内裁判所を含む加盟国の当局に対し拘束力を持つ」と強調。独連邦憲法裁の判断はEU法の基本理念に反し、EU法の整合性を脅かしかねないと述べた。
欧州委は法的措置の第1段階として、ドイツに告知書を送付し、調査について通知すると同時に、2カ月以内の回答を求める。 返答がなかったり、不十分だったりする場合は、最終的に、EU司法裁に罰則適用を要請する可能性がある。
独首相府の報道官は「手続きが定めるとおり、書面で対応する」と述べた。
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