東芝、異例の取締役候補者変更

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東芝は6月13日に臨時取締役会を開き、6月25日に開催する定時株主総会に諮る取締役選任案や、その後に開催する取締役会で正式に決める執行役選任案の変更を決定し、計4人が退任すると発表した。

発表によると監査委員長の太田順司氏と監査委員の山内卓氏が取締役候補から外れ退任する。監査委員会としての調査の結果、「さらなる調査は必要ない」としていた。そのほか、執行役に選任予定だった豊原正恭執行役副社長、加茂正治執行役上席常務が退任する。 報告書で執行役の二人は経済産業省と社内の間に立ち、頻繁にやり取りしていたことが指摘された。

6月10日に発表された調査報告書の指摘を認めた形となる。

助言会社ISSや大株主の3Dは他の取締役候補にも反対、社外取締役の4人も「全員は支持しない」としており、総会でさらに揉める可能性がある。

永山取締役会議長は6月14日午後、記者会見し、外部調査で問題視された東芝と経産省のやりとりについて「コンプライアンス、ガバナンスの欠如と言わざるを得ない」と認め、「不安と心配をおかけする事態となっておわび申し上げる」と謝罪した。

今回退任する4人について「大きな混乱を招く原因になった」として、事実上の引責辞任と認めた。さらに、4月に引責辞任した車谷暢昭前社長について、今回の問題でも「存在がひとつの要因となったことは否めない。経営の混乱を招き、責任は無視できないものがある」と指摘した。

付記

6月25日の定時株主総会で、永山治取締役会議長と監査委員会の小林伸行委員の再任案が否決された。

当初の13人の候補のうち、2人を事前に下したが、更に2人が否決され、取締役は9人となった。


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筆頭株主で9.9%を所有するシンガポールのEffissimo Capital Management は2020年7月の定時株主総会で、ガバナンス強化などを求めて、取締役に同社の今井陽一郎氏ら3人を選任するよう要求した。

また、3D Investment Partners も自社の推薦する社外取締役2人の選任を提案し、車谷CEOらの選任への反対も表明した。

東芝は取締役選任案に反対を表明し、この案は総会で否決された。ただ、東芝の車谷CEOの賛成比率は57.96%にとどま った。

3Dは総会後、議決権の一部が結果に反映されていないとして投票の処理が適切だったか外部調査を要請し、東芝は議決権行使書を集計した三井住友信託銀行に調査を依頼した。

その結果、集計作業した三井住友信託銀行が事前に郵送された1000通以上の議決権行使書を無効扱いにしていたことが判明した。
2020年12月に無効票を含めて議決権行使を再集計した結果、車谷社長の賛成比率を57.96%から57.20%に、反対比率を18.96%から20.13%にそれぞれ訂正した。

Effissimo は「議決権行使をめぐり、株主への不当な圧力があった」とも指摘した。一部の株主が圧力を受けて議決権を行使しなかったと報じられた。

複数の外電が、東芝の議決権の4%を持つアメリカのハーバード大学の基金運用ファンドに対し、経済産業省の関係者が圧力をかけたと報じた。

 詳細は 2021/4/14 英投資ファンド、東芝に買収提案 

東芝は監査委員会による調査の結果、「さらなる調査は必要ない」としたが、Effissimo は第三者委員会による再調査を要求。これを東芝が拒否したため、Effissimo などが臨時株主総会招集を求めた。

Effissimo は、2020年7月の定時株主総会が公正に運営されたかどうかを調査するために弁護士などの選任を要求。
第二位株主で米ヘッジファンドのFarallon Capital Managementは、成長投資の方針についての合理的な説明を含む資本政策案の策定及び株主総会への上程を求めた。

東芝は2021年3月18日、都内で臨時株主総会を開催し、昨年7月に開催した定時総会の運営の適正性について独立した調査を求める筆頭株主 Effissimo の株主提案を可決した。調査の期間は3カ月で、調査者として3人の弁護士を選任した。

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東芝は6月10日、昨年7月の株主総会に関する調査報告書を公表し、同株主総会では、経済産業省と一体となって筆頭株主Effissimo の株主提案権の行使を妨げようと画策したなどと指摘されたことを明らかにした。報告書は、株主総会は「公正に運営されたものとはいえない」と結論付けている。 当時の菅官房長官への接触も出ている。

https://www.toshiba.co.jp/about/ir/jp/news/20210610_1.pdf?_ga=2.228070685.1234270687.1623310389-617751326.1623310389

これを受け、現役の社外取締役で今回の候補に挙がっている4人が、東芝が株主総会に提案している取締役の人事案について異議を唱える声明を連名で出した。

公表された外部弁護士による報告書に関連し、東芝の経営陣が「株主の利益に直接反する行動をとった。容認できない」と表明した。監査委員会についても「透明性がなく、誤った情報を提供した」と批判し、25日の株主総会に諮る13人の取締役の人事案について「全員は支持しない」とした。

4人のうちAyako Weissmanは指名委のメンバーで、自ら選んだ人事に反対する形となった。(候補発表は報告書発表の前であった。)

誰の選任に反対なのかは明示しなかった

米国の議決権行使助言会社 Institutional Shareholoder Services(ISS)は6月12日、取締役候補者13人のうち、永山治取締役会議長ら5人の反対を推奨した。綱川智社長兼最高経営責任者(CEO)ら8人には賛成を推奨した。ISSは海外の機関投資家に対し強い影響力を持ち、東芝株主は海外投資家比率が高い。

反対対象はいずれも監査委員会のメンバーで、株主への圧力問題に対する疑わしい対応の責任を取るべきなどとしている。
また、こうした役員選任案を取りまとめた責任を問い、指名委メンバーも反対推奨の対象に含めた。

東芝の第2位株主である3D Investment Partnersは、永山治取締役会議長など取締役4人の即時辞任を要求した。

調査報告書を受け、永山議長のほか、監査委員会の太田順司委員長、小林伸行委員、山内卓委員の4人が東芝と同社株主の利益に反する行為を行っていると判断した。

東芝は今回、社外取締役で監査委員の2人を候補から外したが、もう一人の小林氏を残した理由は不明。小林氏はCPAで、プロであり、問題点は把握していた筈である。

社側取締役候補者(2人は今回、撤回)敬称略

新任 撤回

現行 役職等 ◎委員長

助言会社
ISS
3D
社外取締役 社内取締役 監査委 指名委
 智 会長
社長CEO
永山 治(否決) 元 中外製薬 (取締役会議長) 反対 反対
太田 順司(撤回) 〇  元 新日鉄 反対 反対
小林 伸行(否決) CPA 反対 反対
山内 卓(撤回) 元 三井物産 反対 反対
Paul J. Brought 元 KPMG 人事案
反対表明
Ayako Weissman 元 投資会社 反対
Jerry Black イオン顧問
George Zage Ⅲ 元 投資銀行
畑澤 守 代)副社長
綿引 万里子 元 裁判官
George Olcott 元 投資銀行
橋本 勝則

元 デュポン

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