キューバで新型コロナウイルスの国産ワクチンの開発が着々と進んでいる。現在、5種類を開発中で、うち2つのPhase Ⅲ臨床試験(治験)の結果が出た。
国営バイオ医薬品会社 BioCubaFarmaは6月19日、傘下のFinlay Institure がCentre for Molecular Immunology と National Biopreparations Centreの協力を得て開発中のワクチンSoberana 02が、3回接種のうちの2回接種だけで62%の効果を示したと発表した。世界各地の規制当局や世界保健機関(WHO)などの保健当局から承認を得るために必要な有効性の基準をクリアした。
3回目の接種後の後期段階の結果が「当然さらに優れたものになる」と予想している。
「Soberna」はスペイン語で「主権 ("sovereign")」を意味する。
週明けの6月21日には、キューバの遺伝子工学研究所(Center for Genetic Engineering and Biotechnology)が、自身が開発する3回接種のワクチン 「Abdala」 がPhaseⅢで92.28%の有効性を示したと発表した。
「Abdala」はキューバの英雄(革命家、詩人)のJosé Martí の詩から名付けられた。,
これら2つのワクチンについては、同国の規制当局がまもなく緊急承認を行なう。
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キューバは外国からコロナワクチンを輸入せず、自前で賄う態勢を続けてきた。
COVID-19がキューバに侵攻すると、政府は直ちにヘルスケアシステムとバイオセクターを総動員した。人口当たり死者数は西半球では最低レベルである。海外にも多数の専門家を派遣している。
キューバのバイオテク部門はユニークで、完全に国営であり、イノベーションは利益を目的とせず、全て国民の健康ニーズに合わすことを目的としている。また、大学や研究機関、政府の公共福祉部門間で継続した徹底的な情報交換が行われている。
キューバのバイオ技術部門は何十年もワクチンを対外輸出してきた実績がある。早速5種類のワクチンの開発に着手した。
本年3月末時点で世界で 23のコロナワクチン候補がPhaseⅢ治験に進んでいるが、ラテンアメリカではキューバのSobernaとAbdalaのみがこれに含まれている。
当局もコロナワクチン候補の接種を研究の名目で既に開始しており、これまでに人口約1120万人のうち約100万人が接種を完了している。
政府統計によると、首都ハバナでは1カ月前にAbdalaの接種を初めて以来、毎日の新規感染者数が半減したとしている。
アルゼンチンやジャマイカ、メキシコ、ベトナム、ベネズエラなどからキューバのワクチンの購入への引き合いがある。イランは今年初め、後期臨床試験の一環としてキューバのSoberna 02の生産に着手した。
キューバのワクチンは3回接種だが、2 - 8℃で安定的で、特殊な冷凍設備を必要としない。
開発中の5つのワクチンは全てスパイクタンパクだが、このうちSoberna 02のみは conjugate vaccine(結合型ワクチン)で、SARS-CoV-2スパイクタンパク質の受容体結合ドメインを破傷風トキソイドに化学的に結合したもの。スパイクタンパク質サブユニットは、チャイニーズハムスター卵巣細胞培養で産生している。
残り3種は下記の通りで、いずれも臨床試験が進んでいる。
1) Finlay Instituteの「Soberana Plus」 (当初のSoberana 01の後継)
2) Center for Genetic Engineering and Biotechnologyの「Mambisa」
経鼻ワクチンで、注射を必要としない。
「Mambisa」19世紀後半にスペインの支配に対し戦った兵士たちから名付けられた。
3)「Pan-Corona」
Cuban Center for Genetic Engineering and Biotechnology (CIGB) の研究員が開発した。2020年にキューバと中国の共同研究機関として中国湖南省永州市に設立されたYongzhou Joint Biotechnology Innovation Center で開発している。
このプロジェクトは中国側の要請で開始された。キューバの専門家がデザインしたラボ、設備を使い、キューバの技術者のアイディアを基に開発される。
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