米、ウイグル人権侵害で中国企業を制裁

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米商務省は6月23日、中国でウイグル族の人権を侵害しているとし、米企業からの製品輸出を禁じるEntity List に中国企業4社と中国共産党系の組織(ウイグル綿花の主要生産団体)を追加した。

Entity Listは輸出管理法(規則 744.11(b) )に基づき安保上懸念がある企業を指定するもので、海外企業を含む企業が米国のハイテク製品や技術を同社に輸出する場合は商務省の許可が必要になり、原則却下される。

米国はすでに、新疆ウイグル関連で多数企業をEntity List に載せている。

米商務省は 2019年10月9日付で輸出規制の対象である「エンティティー・リスト(EL)」にハイテク8社と、新疆ウイグル自治区各地区の公安部門など20機関の合計28団体・企業を加えた。

2019/10/9 米、中国の少数民族弾圧でハイテク企業と公安部門をEntity Listに追加 

2020年6月5日に、ウイグル関係の人権侵害関与理由により9団体をEntity Listに追加 した。うち7社は監視関連の企業である。

2020年7月20日、中国・新疆ウイグル自治区のウイグル族の強制労働や遺伝解析に関わったとして、衣料品や家電などを手掛ける中国企業11社をEntity Listに載せた。

2020/7/21 米、ウイグル族弾圧で中国11社を禁輸対象に追加 

今回の一部の企業は、太陽光発電パネルに使われる単結晶シリコンやポリシリコンを製造している。

商務省によると、この5社が新疆ウイグル自治区での強制労働や監視活動など、人権侵害に関わった疑いがあると説明している。

対象:

Hoshine Silicon Industry (合盛硅業工業)

Xinjiang Daqo New Energy (大全新能源傘下の新疆大全新能源)高純度ポリシリコンメーカー

Xinjiang East Hope Nonferrous Metals Co.(東方希望集団傘下の新疆東方希望有色金属)

Xinjiang GCL New Energy Material (GCL New Energy Material Holdings 傘下)

Xinjiang Production and Construction Corps(新疆生産建設兵団:XPCC) 中国共産党の傘下組織でウイグル綿花の主要生産団体(下記)

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付記

米商務省は7月9日、安全保障上の懸念があるとして中国やロシアなどの34団体を輸出禁止対象に加えると発表した。
このうち中国の14団体は、新疆ウイグル自治区でのウイグル人、カザフ人や他のモスリム人に対する抑圧、大量拘束、ハイテクによる監視など人権侵害を理由に挙げた。

団体名はまだ発表していないが、報道では、首都ウルムチで中国当局と共同で顔認証ラボを設立したDeepGlint(Beijing Geling Shentong Information Technology )、中国の軍需企業の子会社の新疆聯合荘子社と成都西武安全システム同盟、監視カメラ会社のLeon Technologyなどが挙がっている。

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別途、米労働省は、中国で強制労働でつくられたポリシリコンを "List of Goods Produced by Child Labor or Forced Labor"に追加した。

2005年のTrafficking Victims Protection Reauthorization Act に基づき、国際基準に違反して児童労働、強制労働で生産されたと信じるに足る製品とその生産国をリストするもので、現時点で77か国、156製品が指定されている。

このリストは罰則に使うのではなく、児童労働や強制労働の廃止のため、広く注意を喚起するためのもの。

バイデン政権は同日、強制労働に関与しているとして、合盛硅業からの太陽光発電パネル素材の輸入を禁止した。「米国はサプライチェーン内の強制労働を容認しない」とした。
今後も措置が追加される可能性があり、調査は継続していると明らかにした。米企業はポリシリコンの代替的な調達先を見つける必要に迫られる可能性がある。


中国外務省の趙立堅報道官は6月24日、中国企業の権利と利益を守るために「必要なあらゆる措置」を取ると述べた。

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米政府は2020年12月、ウイグル自治区で綿製品を生産する中国最大の団体「新疆生産建設兵団(XPCC)」の製品に対して禁輸措置を発動した。

米政府は2021年1月13日、中国共産党による少数民族の強制労働を理由に、中国の新疆ウイグル自治区で生産された綿製品の輸入を禁じると発表した。今回は生産者を問わず同地区全体を包括的に禁輸対象とした。

米税関・国境取締局(CBP)がウイグル自治区で生産された綿製品の輸入を差し止める命令を出した。「強制労働が使われている合理的な情報がある」として、生地から完成品まであらゆる製品を対象に含めた。 米メディアによると、米国が同自治区から輸入する綿製品は過去1年で約90億ドルと推定されている。

ウイグル自治区は綿製品で世界有数の産地で、日米欧の衣料品メーカーが販売する製品も関わっている。

2021年1月、米税関・国境警備局(CBT) は新疆ウイグル自治区の強制労働をめぐる輸入禁止措置に違反したとして、ロサンゼルス港で「ユニクロ」の男性用シャツの輸入を差し止めた。「新疆生産建設兵団(XPCC)」が原材料の生産に関わった疑いがあるとしている。綿の原材料は生産過程が複雑で、原産地の特定が困難とされるが、輸入する企業に、強制労働の製品を使っていないと証明する義務を課していた。

ユニクロのファーストリテイリングは、「CBPの決定は非常に遺憾だ。サプライチェーンにおいて強制労働などの深刻な人権侵害がないことを確認している。CBPに対し、あらゆる証拠を提出し、適切に対応している」としている。

EUは3月22日の外相理事会で、中国・新疆ウイグル自治区での少数民族ウイグル族の不当な扱いが人権侵害に当たるとして、同自治区の中国当局者ら4人と1団体を対象にEU内の資産凍結や域内への渡航禁止の制裁を採択した。

米国、英国、カナダも同日、中国での少数民族ウイグル族の不当な扱いが人権侵害にあたるとして、中国政府当局者らへの制裁をそろって発表した。

米財務省は、中国の新疆ウイグル自治区での人権侵害に関与したとして中国政府当局者2人(自治区の公安トップと新疆生産建設兵団の共産党委員会書記)に制裁を科したと発表した。「国際的に非難が広がるなかで中国がウイグル自治区でジェノサイドや人道に対する罪を続けている。我々は世界中の同盟国と連携し、中国による犯罪行為の即時停止と犠牲者のための正義を訴えていく」と強調した。

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