バイデン米大統領は6月24日、8年間で1兆2000億ドル規模のインフラ投資計画で超党派の上院議員と合意したと発表した。国内の道路や橋梁などを刷新し、経済活性化を目指す。
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バイデン大統領は3月31日、国内のインフラの整備等に8年間で2兆2500億ドルを投入する新たな計画 American Jobs Plan を発表した。
2021/4/2 バイデン大統領、American Jobs Plan 発表、8年間で2兆2500億ドル投資
バイデン大統領が上院共和党のグループとの間で進めていたインフラ投資計画(American Jobs Plan )を巡る交渉が6月初めに決裂した。
サキ大統領報道官は、大統領が別の民主、共和両党の上院議員に接触し「超党派の提案をつくるよう求めた」と表明した。
2021/6/10 米インフラ計画の交渉決裂
バイデン大統領は6月24日、ホワイトハウスで議員団の10人と協議した。合意後の演説で、「与野党どちらも望んだすべてを得られなかったが、コンセンサスが反映された」と述べ、双方が歩み寄った意義を強調した。
今回の計画は、新規投資として 交通インフラに3120億ドル(当初計画 6210億ドル)、その他インフラに2660億ドルの合計5790億ドルを見込んだ。
道路・橋梁に1090億ドル(当初 1670億ドル)、鉄道(旅客、貨物)に660億ドル(800億ドル)、公共交通に490億ドル(850億ドル)、空港に250億ドル(250億ドル)など。
電気自動車インフラや電気バス等には150億ドルと、当初計画(1740億ドル)のほんの一部しか認めなかった。その他インフラでは、ブロードバンドに650億ドル(1000億ドル)、水道に550億ドル(1110億ドル)、電力に730億ドル(730億ドル)など。
これにBaselineのもの5年間で3940億ドル、8年間で6300億ドルを加え、5年で合計9730億ドル、8年で12090億ドルとした。
研究開発や製造業支援などの人的インフラ投資はすべて省かれた。
財源は、徴税の強化やコロナ対策予算の使い残し分などから捻出する。法人税率引き上げなどの増税案は、野党・共和党の強い反対で除外された。
与党・民主党は成長戦略の残る部分について、特例を使って単独で可決することを視野に入れている。
バイデン大統領や議会民主党指導部は以前から、在宅医療や保育施設への投資を含む 人的インフラ投資について(企業増税や富裕層への増税案を含む)、共和党の賛成が得られないことを前提に、別の法案 で通すことを考えていた。
2本目の法案は、上院で共和党の賛成を必要としない「財政調整措置(リコンシリエーション)」の手続きを使う狙い である。
上院にはフィリバスター制があるため、賛成には60票が必要だが、現在は民主党系が50議席、共和党50議席のため、通らない。
通常のやり方では60票の賛成がないと予算が決まらないことになるため、 Congressional Budget Act of 1974 が成立した。
2本目の法案を予算と結びつけることにより、次の手続きでフィリバスターを回避できる。
① 予算決議案
連邦歳入総額、歳出総額、財政赤字(黒字)額を示した上で、国防、農業、エネルギー等20の政策分野の歳出上限額を規定するほか、当該年度以降の複数年度の財政見通しを示すもの。大統領に送付されず法的拘束力を有するものではない。
予算決議案の審議時間が50時間に限られているためフィリバスターを回避できる。
② 予算決議案が成立すれば、財政調整法を審議する。予算決議に各委員会への財政調整指示(歳入、歳出、財政赤字、公的債務上限を変更するために既存の法律を改正する指示)が含まれると、各委員会はこの指示を受けて財政調整法案を策定、策定された法案は予算委員会でまとめられ、一つの包括的な法案として議会で審議され、両院の本会議で可決、大統領の署名を経て成立。
審議時間が20時間に限られているため、上院でのフィリバスターは財政調整法には適用されない。
バイデン大統領は「夏場の今後数カ月間で、今会計年度が終了する前にこの(超党派)法案に加え、予算決議についても採決が終わっていると期待する」とし、「だが法案がこの1本しか送られなければ署名しない。2本立てだ」と述べた。
この発言を受けて共和党上院トップのマコネル院内総務はこうした二段構えの戦略を強く非難した。「大統領は超党派合意を支持してから2時間足らずで拒否権行使を示唆した」と痛烈に批判した。
バイデン大統領は6月26日、自身の発言について声明を出し、「合意したばかりの計画に拒否権行使の脅しをかけている印象を与えたが、そのような意図は全くなかった」と釈明した。
なお、この場合、与党全員が賛成のうえ、50:50で副大統領(上院議長)が賛成を投じて初めて可決できる。与党から1人でも反対が出れば通らない。
今後、難航が予想される。
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