米連邦地裁、FTCのFacebookの独禁法違反訴訟を棄却

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ワシントンDCの連邦地裁は6月28日、米連邦取引委員会(FTC)がFacebookを反トラスト法違反の疑いで訴えていた訴訟で、FTCの訴状を棄却した。訴状のみを棄却しており、FTCは内容を修正したうえで再び提出することができる 。

FTCと同時にニューヨーク州など全米48州・地域の司法長官が Facebookを反トラスト法違反の疑いで訴えているが、こちらについては訴訟そのものを棄却した。

付記

FTCは8月19日、ワシントンの連邦地裁に修正訴状を提出し、「Facebookが少なくとも2011年以来、継続的に個人向けSNS市場での独占力を保持している」と改めて強調した。

顧客が「無料」と認識して使うFBのような事例で「独占力」を立証できるかが焦点だ。連邦地裁は訴状を却下した際「(独占力を及ぼす)市場の境界すら定かではない」と述べていた。

修正訴状でFTCは、「個人向けSNS」を、ツイッターのような情報発信サービスや、リンクトインのようなビジネスSNSとは異なる「市場」と規定した。その上で「2012年以来、米国の個人向けSNS市場で、利用者が費やした時間のシェアはFBが80%を超えた」といったデータを盛り込んだ。

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FTCは2020年12月9日、Facebookを反トラスト法違反の疑いで提訴したと発表した。InstagramやWhatsAppなど、将来競合する恐れのある新興企業を買収し競争を阻害したとし、両社の売却を要求している。

米46州、ワシントン D.C.、グアムの司法長官も同日、Facebookを独禁法違反の疑いで提訴した。(South Dakota、South Carolina、Alabama、Georgia の4州は参加を拒否した。)

Facebookは2012年、写真共有アプリInstagramの開発会社を約10億ドルで買収することを決めた。2010年10月にアプリの提供を始めたばかりで社員はわずか13人。売上高もまだ、ほぼゼロの状態であった。

最終的には買収額は、現金が5.21億ドル、Instagramの従業員に交付されるクラスB株式は1.94億ドルで合計7.15億ドルとなった。FacebookはInstagramの買収を発表した後、株式公開を行い、株価が下がり、結果として買収額が下がった。

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Facebookは2014年2月に、スマートフォン向けメッセージングアプリケーションを手がけるWhatsAppを買収することで両社が合意したことを発表した。

当初160億ドルだった買収額は約183億ドルに膨らみ、従業員引き止めのための制限付き株(RSU)も含めると総額218億ドルを超えた。

FTCは、2012年のInstagram買収と2014年のWhatsApp買収は、自社によるSNS(ソーシャルネットワーキングサービス)独占への脅威を排除するための戦略の一環だったと主張し、2社の売却を促す恒久的な差止命令を求めた。
また、Facebookが競合するサードパーティー開発者に対してAPI(アプリケーションプログラミングインタフェース)へのアクセスを制限することも違法だとし、サードパーティーのアプリ開発者に対して反競争的条件を課すことを禁じることを求めた。

「初期のライバルMySpaceを倒して独占力を獲得して以来、Facebookは反競争的手段を通じて防衛を行うようになった。Instagram と WhatsApp という強力な競争上の脅威を特定し、これらを買収することで脅威を鎮圧した」としている。

FTCはMark Zuckerberg CEOが2008年のメールに「競合するより買った方がいい」と書いたことなど、Facebookの買収戦略を反映しているとみられる複数の例を挙げた。

各州は調査でFTCと協力したが、FTCとは別にFacebookを提訴した。

FacebookによるInstagramとWhatsAppの買収を顕著な例として挙げ、Facebookは市場支配力を増大させるため競合他社を「違法に」「略奪的に」買収したとし、Facebookが州に事前に通知することなく、1,000万ドル以上の価値のある買収を行うことを制限するよう求めた。

また、「違法に買収された企業または現在のFacebookの資産や事業部門の売却やリストラなど、適切であると判断した追加の救済」を裁判所に求めた。

Facebookはこれらの訴訟についてすぐに反論した。

FTCは2社の買収について当時承認しており、これを覆すことは危険な前例になる。「われわれは、競争の激しい市場で事業を展開し続けている。われわれの買収は、市場の競争、広告主、消費者のすべてにとって良いものだった。Facebook、Istagram、WhatsAppが同じ企業に属し、優れた製品とメリットを競う証拠が示せると確信しており、法廷での1日を楽しみにしている」と、争う姿勢を見せた。

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今回連邦地裁は、「裁判所はFacebookの主張のすべてに同意するわけではないが、FTCらの申し出は法的に不十分であり、却下せざるを得ない。FTCの申し立ては、Facebookが実際にどれだけの力を持っているかという重要な問題について具体的なことをほとんど説明していない」とした。

FTCが、「Facebookが米国のSNS市場でシェア60%超を持ち独占に当たる 」と主張しているのに対し、シェアは売上高や販売数量といった指標に基づいて導き出されてきたとの考えを示したうえで、「FTCはFacebookのシェアを計算するのに使った指標や方法を示 しておらず、主張は臆測にすぎない。Facebookが個人向けSNS市場で独占力を得た、という主張を立証するに足る事実を示していない」と指摘した。

「FTCは、『Facebookは独占だ』との社会通念に裁判所はただ頷くことを期待しているようだ」としている。

FTCが「Instagram」や「WhatsApp」の売却を求めていたのに対しては、連邦地裁は「FTCはFacebookによるInstagramやWhatsAppの買収を当時、阻止しようとしなかった」と反論した。

但し、今回は本件訴状のみを棄却しており、FTCが望めば、30日以内に修正した訴状を再提出することができるとの判断を示した。

一方、全米48州・地域の司法長官がFacebookを反トラスト法違反の疑いで訴えた件については、訴訟そのものを棄却した。InstagramとWhatsApp 買収がそれぞれ2012年と2014年になされたのに 、提訴が遅かったことを棄却の理由に挙げた。

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