Johnson & Johnson、敗訴のベビーパウダー 関連で破産法活用?

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米連邦最高裁判所は6月1日、Johnson & Johnson (J&J) のベビーパウダーにアスベストが混入していたことが原因でがんを発症したとして、消費者が同社を相手取って起こしていた訴訟で、J&Jの上告を退けた。


J&Jは、タルク(滑石)原料のベビーパウダーの使用により女性20人余りが卵巣がんを発症したとする2018年のセントルイスの陪審の評決を不服として最高裁に上告していた。

これにより、ミズーリ州セントルイスの控訴裁が認めた21億ドルの賠償金支払いが確定した。

J&Jはベビーパウダー商品を巡り2万6000件を超える訴訟を抱えている。

本件に関し、J&Jがベビーパウダー訴訟で抱えた負債を新たに設立する事業体に移管した上で、その事業体の破産法適用申請を目指す計画を検討していると報じられている。テキサス州の「分割合併」法を利用して会社を本体とベビーパウダーやその他タルク(滑石)製品事業の2つの事業体に分け、新たに分割された会社はその後、破産法の適用を申請するというもの。

J&Jは決定を下しておらず、「この構想を最終的に放棄する可能性がある」

これに関し、今後の訴訟で高額な賠償を避けるためとの見方と、米国中に広がる多くの訴訟を1つの裁判所にまとめる狙いだとの見方がある。

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J&Jのベビーパウダーを性器の衛生に使い続けたため卵巣がんになったとして、J&J に対して多くの患者が訴訟を起こしている。

原材料であるタルクが卵巣がんの原因とみられている。タルクはアスベスト(石綿)と非常に似た構造式を有しており、性質も極似している。
(FDA基準に適合したタルクはアスベストの1種のトレモライトを含んでいない。)

J&Jは一貫してベビーパウダーは安全であると主張しているが、これまでの裁判で、同社がタルクの問題点を認識していたことが明らかにされている。


ミズーリ州で2016-2017年に行われた陪審員裁判では5件のうち4件で J&J側が敗れている。原告勝訴の陪審裁判はすべてMissouri 州St. Louisの裁判所であり、原告には他州の女性が多い。

原告
勝訴
罰金+懲罰
(百万ドル)
2016/2/24 St. Louis 10+62=72 数十年使用のAlabamaの死亡女性
2016/5/3  St. Louis 5+50=55 数十年使用の女性
2016/10/28  St. Louis 2.575+65=67.5
+2.5
40年使用の女性
(Imerys Talc Americaへの罰金)
2017/3/7 St. Louis X 36年使用のTennesseeの女性
2017/5/5 St. Louis 5.4+105=110 40年使用のVirginiaの女性
罰金合計

307

Los Angeles Superior Court の陪審は2017年8月21日、スキンケア用品のベビーパウダーが卵巣がんの原因になったとする訴訟で、Johnson & Johnson (J&J) に417百万ドルの支払いを命じる評決を下した。 同様の訴訟では過去最高額となる。

2017/8/24 ベビーパウダー訴訟でJohnson & Johnsonに417百万ドルの支払い命令


その後、ミズーリ州控訴裁は2件の控訴審で、2017年の連邦最高裁の決定を理由に他州の原告への判決を覆した。

2017年6月19日、Bristol-Myers Squibbが自社の製品 Plavix(血小板が集まって血栓ができるのを防ぎ、血液の流れを改善する薬)の薬害裁判での カリフォルニア州最高裁の判決に対し、上告していた裁判で、連邦最高裁はBristol-Myers Squibb勝訴の判決を下した。

原告側は、カリフォルニア州の住民が86人、他の33州の住民が592人で、集団訴訟を起こした。

Bristol-Myers Squibbはカリフォルニア州に本社を持たないとし、原告のうちの592人はカリフォルニア州で薬を飲んだわけではなく、薬はカリフォルニア州で彼らに売るために製造販売されたものではない。
それなのにカリフォルニアで訴えられるのはフェアでないと主張した。

最高裁は8:1で、カリフォルニア州は非居住者に対してはBristol-Myers Squibbへの裁判管轄権を持たないとし、Bristol-Myers Squibb勝訴とした。


2018年に
22名の女性がSt. Louis の巡回裁判所にJ&J を訴えた。

22名のうち、5名はミズーリ州の住民であるが、他の17名は他州の住民である。

2018年7月13日、St. Louis の巡回裁判所の陪審員は6週間の裁判の後、原告勝利とし、J&Jに対し、原告22名に損害賠償として5.5億ドル、懲罰的賠償金 41.4億ドル、合計46.9億ドルの支払いを命じた。
裁判で原告側は、J&Jは製品にアスベストが含まれていることを知っており、それを消費者に伝えなかったと主張していた。

これについて担当判事は2018年12月に陪審員の判断を認める判決を下した。「被告は母親や赤ん坊を対象に販売されると知っている製品にアスベストが含まれていることを知りながら、また製品が与える被害を知りながら、数十年に亘り、安全だと偽って販売してきた」と非難した。

原告22名のうち、17名はミズーリ州の住民ではないが、判事は裁判管轄権で問題なしとした。


J&Jは控訴した。 

ミズーリ州控訴裁判所は2020年6月、一審の47億ドルの評決を一部反転させ、一部を肯定し、 損害賠償を5.5億ドルから5億ドルに、懲罰的賠償額を41.4億ドルから16.15億ドルに引き下げ、全体の裁定額を21.15億ドル とした。

先ず、控訴裁はJ&Jの主張を容れて連邦最高裁の判決を勘案し、州外の17名の審議を行った。

その結果、2名は原告から除外したが、15名は承認した。15名は州外の住民だが、ミズーリ州Unionにある企業がJ&Jのために受託生産しているタルクベースのパウダー Shimmer を使用していたとしてミズーリ州で訴訟する法的f権利を持つと見做した。

この結果、損害賠償は5.5億ドル(22名)から5億ドル(20名)に引き下げた。

メーカーのJohnson & Johnson Consumer Companies は原告22名のうち20名について責任(@25百万ドル)ありとした。親会社のJ&Jは州内の5人について共同責任とした。

懲罰的賠償は、一審が子会社に3,150百万ドル、J&Jに990百万ドル、合計4,140百万ドルとしたが、今回、子会社には20人分として900百万ドル、J&Jには州内の5人に追加の716百万ドル、合計1,615百万ドルとした。

J&Jはミズーリ州最高裁に上告したが、却下され、連邦最高裁に訴えた。

J&Jは、異なる州、異なるバックグラウンド、製品の使用頻度が異なる20人の女性を一緒に原告にする裁判はおかしいと訴えた。

しかし、最高裁は今回、理由を一切述べず、J&Jの上告を却下した。

J&Jはこれを受け、最高裁がこれを審議しないことは、重要な法律上の問題が未解決で残ることとなり、今後、州や連邦裁判所が同様の問題に直面し続けることになるとのコメントを出した。また、最高裁はこれまでに、ヒアリングをしないことは問題点について意見を言わないだけだとしており、今後、当社の主張が通ると信じていると述べた。

また、裁判の問題点はベビーパウダーが安全かどうかではなく、法的手続きの問題であるとし、製品は安全であると主張している。

しかし、同社は昨年、タルクベースのベビーパウダーを米国・カナダ市場から引き上げた。弁護士が訴えませんかとPRしてまわったために販売が減ったためとしている。

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