「永遠の化学品」PFAS にからみ、米大企業の2つの動きが相次いで暴露された。
PFASは「パーフルオロアルキル化合物、ポリフルオロアルキル化合物及びこれらの塩類」の略称で、「永遠の化学物質」と呼ばれる。
非常に持続性のある(難分解性)化学物質群で、フッ素系またはポリフッ素系アルキル物質と呼ばれ、主にフッ素系の界面活性剤として70年以上の長きに渡って多くの用途に使用されてきた。
実際には、半減期は平均 4.5年(PFOAは約5年、PFOSは2~3年)だが、常用されている化学物質の中では非常に長いため、この名前が付いている。
ハーバード大学公衆衛生大学院のジョセフ・アレン准教授が2018年に警鐘を鳴らすため、「フッ素(F)-炭素(C)結合」から「Forever Chemicals」の言葉を用いた。
約4,700種類あると言われ、中でもパーフルオロオクタン酸(PFOA)とパーフルオロスルホン酸(PFOS) が代表的。
ソース https://j-valve.or.jp/env-info/8929/ |
これらを含む残留性有機汚染物質は、毒性があり、分解しにくく、生物中に蓄積され、長距離を移動する物質であるため、国際的な汚染防止の取り組みが必要とされ、POPs条約が締結されているが、PFOSが付属書B(製造・使用、輸出入が特定の用途、目的に制限)に、PFOAは附属書A(製造・使用、輸出入の原則禁止)に収載されている。
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Obama政権下のEPAが2011年に 、「永遠の化学品」('forever chemicals')PFASや分解してPFASになるPFAS precursor をシェールガス、シェールオイルの水圧破砕法(Fracking )に使用するのを承認していたことが判明した。EPAでは物質名をfluorinated acrylic alkylamino copolymerとしており、P-11-0091, P-11-0092, and P-11-0093 と表示し、具体的な名前は商業秘密として開示していない。
Physicians for Social Responsibility がFreedom of Information Act に基づいて情報を取得して7月12日に公表、New York Timesが報じた。
EPAの科学者が、物質が「永遠の化学品」('forever chemicals')になって環境にとどまり、ヒト、野生動物、鳥類に有害であることを知りながら、フラッキングでの使用を承認していた。
Exxon Mobil とChevron 2社は使用している企業に含まれている。
2012年から2020年の間に、Arkansas、Louisiana、Oklahoma、New Mexico、Texas、Wyomingの各州の1200か所以上の井戸で使用された。
もっと広く使われた可能性があるが、大企業がconfidentiality を理由に公開を妨げている。
Physicians for Social Responsibilityでは、「住民が知らないうちに非常に恐ろしい化学物質に晒されてきたのは恐ろしいことだ。PFAS汚染の歴史を考えると、EPAと各州はどこで使用されたかを国民に知らせ、影響から守るべきだ」としている。
DuPontの化学品事業Chemoursが使用の申請を行った。当時、DuPontは危険を認識しており、PFASケミカルからの退出に合意していた。
Chemoursは2015年に分離・独立した。DuPontとChemoursは2017年2月13日、West Virginia州のDuPontのWashington 工場から河川に流出した化学物質 PFOAにより健康被害を受けたとする3550件の訴訟で、合計 6億7070万ドルの支払いで和解したと発表した。和解金はDuPontとChemoursが等分に負担する。
2017/2/17 DuPont とChemours、PFOA被害訴訟で和解
EPAは、2010年に最初に3物質の審査を行う以前に、これら化学品がPFOA様の物質に変換すること、PFOA やPFOSは非常に有害であるとの明確な認識を持っていた。いくつかの事件で多額の罰金を課していた。2006年にはEPAはDuPont、3M、他6社と"stewardship" program を開き、各社はPFOAなどの流出を2010年までに2000年比で95%減らすことを約束させている。各社は2015年までにPFOAの生産、使用を順次減らすことを約束している。
しかしながら、EPAはその後、PFASの多数の新しい商業使用を承認した。2015年には200人以上の科学者グループが、PFOAやPFOSの代替を狙う新しい短鎖のPFASは健康や環境により安全なものではないと警告した。この代替物が今回のものに含まれていると推測されている。
EPAの研究でこれら化学品が分解してPFOA様の物質になることを知りながら、EPAは物質が分解してどうなるかを調べる追加テストを要求しなかった。また化学品がどこで使われ、EPAが恐れる環境汚染を起こすかどうかの追跡調査も求めなかった。さらに、飲み水の水源、住家、学校などからの一定範囲での使用禁止も求めなかった。
EPAは承認した理由を明らかにしていないが、いろいろな資料から、これら3剤の毒性が他よりも低いとみていた可能性、石油・ガスに使用される薬剤が環境に流出しないと考えていた可能性もある。
Physicians for Social Responsibility では下記の勧告をしている。
•Health assessment 人の健康に影響するかどうか
•Testing and tracking 使用場所、廃棄場所を調べ、水、土、動植物での残存を調べる。
•Funding and cleanup
•Public disclosure
•Moratorium on PFAS use for oil and gas extraction 使用禁止
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同時期に、Exxonが議会でPFASの使用制限の動きが強まるのを懸念し、それに対応するため、裏でロビー活動を行っていることが明らかになった。
エネルギーと気候変動の報道を行う「Unearthed」誌が、ヘッドハンターを装ってExxonのsenior director of federal relations のKeith McCoyにインタビューを行い、7月1日にその内容を発表した。Channel 4 News でも報じられた。
2021年5月のZOOM会議でのKeith McCoyの発言 要旨:
Exxonは"forever chemicals"と呼ばれるPFASの使用を制限する議会の動きに対応するため、裏でロビー活動を行った。
Exxonは油田ではPFASを含んだ泡消火薬剤を使っており、規制を避けたい。しかし、ExxonがPFASを使っていることは明らかにしたくない。
ExxonはChannel 4 News に対し、「製品のいくつかで使用はしている。防火のためのPFASを含んだ泡消火薬剤を購入している」と答えている。
日本でもPFOS含有消火器等はある。取扱いにあたっては、化審法に基づき、屋内保管、容器の点検、保管数量の把握、譲渡・提供の際の表示等の遵守義務がある。政府は可能な限り、代替品への切替を求めている。
このため、ロビー活動はAmerican Petroleum Instituteの名前で行った。この問題でExxonの名前が出るのを避けるためで、「ExxonMobilがこれらの化学品を生産している」「ExxonMobilがこれらの化学品を使っている」との話が広まるのを止める狙いであった。「議員が、これはExxonMobilの製品だ、ExxonMobilは水を汚染しているなどと話し始めたら、もうお終いだ」
Exxonの活動でPFASの規制強化を遅らせることができた。
一つの手段は研究の提案で、いろいろやっているうちに、あまり話題にならないようになる。
Exxonはまた、使い捨てプラスチックの最大のメーカーだが、気候変動対策として米国でプラスチックが規制されるのを防いだ。「こうこういう理由でプラスチックを禁止できない、こうこういう理由で100%リサイクルはできない」といった調子でだ。
これらに関して、Exxon が法律を破ったということは示唆されていない。
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