経済産業省は7月21日、有識者会議で新しいエネルギー基本計画の原案を示した。
本文 https://www.enecho.meti.go.jp/committee/council/basic_policy_subcommittee/2021/046/046_005.pdf
概要 https://www.enecho.meti.go.jp/committee/council/basic_policy_subcommittee/2021/046/046_004.pdf
付記
政府は10月22日、新たなエネルギー基本計画を閣議決定した。同日、2030年度に温暖化ガスの排出量を13年度比46%減らす目標を国連気候変動枠組み条約の事務局に提出した。
基本計画は7月の原案から変更していない。基本計画の内容を大きくかえれば与党の了承を得るプロセスなどでCOP26までに間に合わなくなる可能性があった。
今回は、2050年カーボンニュートラル(2020年10月表明)、2030年の46%削減、更に50%の高みを目指して挑戦を続ける新たな削減目標(2021年4月表明)の実現に向けたエネルギー政策の道筋を示すことが重要テーマとなっている。
菅義偉首相は4月22日、閣僚が参加する地球温暖化対策推進本部で、日本の2030年度における温室効果ガス削減目標を引き上げると発表した。2030年度の排出量を2013年度比で46%削減する。同時に「50%(削減)の高みに向けて挑戦を続ける」と話した。
経産省はそれまで40%弱削減を目標に検討を進めてきた。このため短期間での46%削減への変更に向け、無理な辻褄合わせを余儀なくされた。
2050年に向けては、温室効果ガスの8割を占めるエネルギー分野の取組が重要とする。
電力部門は、再エネや原子力などの実用段階にある脱炭素電源を活用し着実に脱炭素化を進めるとともに、水素・アンモニア発電や CCUS (Carbon dioxide Capture, Utilization and Storage) / カーボンリサイクルによる炭素貯蔵・再利用を前提とした火力発電などのイノベーションを追求。
非電力部門は、脱炭素化された電力による電化を進める。電化が困難な部門(高温の熱需要等)では、水素や合成メタン、合成燃料の活用などにより脱炭素化。特に産業部門においては、水素還元製鉄や人工光合成などのイノベーションが不可欠。
脱炭素イノベーションを日本の産業界競争力強化につなげるためにも、「グリーンイノベーション基金」などを活用し、総力を挙げて取り組む。
最終的に、炭素の排出が避けられない分野については、DACCS (Direct Air Carbon Capture and Storage) や BECCS (BioEnergy with Carbon Capture and Storage)、植林などにより対応。
2050年カーボンニュートラルを実現するために、再エネについては、主力電源として最優先の原則のもとで最大限の導入に取り組み、水素・CCUSについては、社会実装を進めるとともに、原子力については、国民からの信頼確保に努め、安全性の確保を大前提に、必要な規模を持続的に活用していく。
経済産業省は、この素案をもとに議論を深め、10月にも閣議決定することを目指す。
1.電力需要
2. 電源構成
再生エネルギーは現行計画の22~24%から、36~38%に大きく引き上げた。
原発は、 「社会的な信頼は十分に獲得されていない」と明記、新増設は見送られたが、「必要な規模を持続的に活用する」とし、2030年度の原発の比率は現行の20~22%を維持している。
新しく 発電時にCO2を出さない次世代燃料として期待される「水素・アンモニア」が加わった。
化石燃料の比率は減ったが、なお、41%程度を占める。石炭火力も大比率(約19%)で残っている。
橘川武郎国際大副学長は、全体的に無理のある数字が並んでおり、示された30年度のエネルギーミックス達成は非常に厳しいだろうとしている。
経済産業省自身が、不確実性を含んだ「野心的な見通し」としている。
3. 再生エネルギー
実現のための対策:
送電網に関するマスタープランの策定、
蓄電システム等の分散型エネルギーリソースの導入拡大
蓄電池や水素の活用等による脱炭素化された調整力の確保
系統混雑緩和への対応促進
系統の安定性を支える次世代インバータ等の開発
次世代型太陽電池、浮体式洋上風力発電といった革新技術の開発
無線送受電技術により宇宙空間から地上に電力を供給する宇宙太陽光発電システム(SSPS)の研究開発
参考 2021/7/14 発電コスト試算 太陽光が原発より安価に
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