中国、「反外国制裁法」初適用、米前商務長官らに制裁

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中国外務省は7月23日、6月に施行した反外国制裁法に基づき、米国のロス前商務長官ら6人と1組織に制裁を科すと発表した。制裁の詳しい内容は明らかにしていない。

Wilbur Louis Ross former US Secretary of Commerce
Carolyn Bartholomew Chairman of US-China Economic and Security Review Commission (USCC)
Jonathan Stivers former Staff Director of Congressional-Executive Commission on China (CECC)
DoYun Kim National Democratic Institute for International Affairs
Adam Joseph King senior program manager of the International Republican Institute (IRI)
China Director at Human Rights Watch Sophie Richardson

Hong Kong Democratic Council 
  米国の無党派、非政府組織で、「香港の基本的な自由、自治、法の支配を保護する」という使命を掲げる。


バイデン米政権は7月16日、香港に進出する企業に対してデータ流出など事業運営上のリスクがあると警告する文書 Hong Kong Business Advisory(国務省、財務省、商務省、国土安全保障省が共同で作成)を公表した。

香港で操業する企業に対し、「香港国家安全維持法」などの法律が適用される可能性があると警告した。同法律の下、米国人一人がすでに逮捕されている。

香港警察は1月6日、香港国家安全維持法を巡る取り締まりに関連し、家宅捜索した法律事務所で米国人弁護士 John Clancey を逮捕した。Asian Human Rights Commission 会長で、香港の民主派デモ隊関連団体のメンバーという。

香港当局は2月28日、香港国家安全維持法違反で逮捕された民主活動家たちの大量起訴に踏み切ったが、Clancey 弁護士は起訴を免れた。同氏は香港メディアに、「自由と人権が制限され、香港は巨大な監獄のようだ」と述べ、当局の民主派弾圧を非難した。

令状なしの電子的な監視の対象になり、当局に顧客データなどを提出せざるを得なくなるリスクがあると警告。

中国の制裁対象にされている個人や団体に関与すれば、米国などの諸外国の制裁措置に加担したとして、中国の報復措置の対象になる恐れがあるとも警告した。

メディアの自由な報道が制限される恐れがあるとも明記した。

また、中国が2020年に香港国家安全維持法(国安法)を制定し、締め付けを強めていることを受けて注意を促し、中国人7人に資産凍結などの制裁を科した。

7人は中国の駐香港連絡弁公室の幹部。ブリンケン国務長官は声明で、中国当局は過去1年間にわたり香港の民主機関を「組織的に阻害」し、選挙を延期し、選挙で選ばれた議員の資格を奪い、政府の政策に反対する数千人の人々を逮捕したと指摘。「香港市民に対する断固とした支持を示すために、米国はきょう、明白なメッセージを送る」とした。

中国はこれに反発、法律に従って全ての必要な措置をとるとしたが、7月23日の中国外務省の記者会見で記者から、具体的にどのような対策を行うのかとの質問が出た。

報道官は次のように答えた。

米国は "Hong Kong Business Advisory" をでっち上げ、中国政府の香港事務所の数人に不当な制裁を課した。国際法や慣行に違反し、中国の内政に干渉するもので、中国は強く反対し、非難する。
米国側の誤った行動に対し、中国は対抗策をとることを決め、反外国制裁法に基づき、6人と1組織に制裁を課した。

香港の問題は中国の国内問題であり、これに干渉する外国の試みは無駄なものである。

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全国人民代表大会(国会に相当)常務委員会は2021年6月10日、「反外国制裁法」を可決し、即日施行された。

貿易、技術、香港、新疆ウイグル自治区を巡る問題について、米欧から圧力を受けていることが背景で、欧米から相次ぐ対中制裁に対抗する法的根拠となる。

この法案は4月に1回目の審査が行われ、2回目の審査を経て6月10日に承認された。

Pompeo 国務長官はトランプ大統領の退任の前日の1月19日、中国新疆ウイグル自治区のウイグル族や他の少数民族に対する同国政府の弾圧をジェノサイド(民族大量虐殺)と認定し、米中関係の緊張を一段と高めた。

これに対し、中国外交部は1月21日、トランプ前政権の Pompeo 国務長官ら28人に対して制裁を課す決定をしたとの声明を発表した。

過去数年間に米国の一部の政治家が中国の内政に深刻に干渉し、中国の利益に損害を与え、米中関係を破壊したと非難し、28人およびその家族に対し、中国大陸、香港、マカオへの入境を禁じるとともに、それらの関連企業・機関が中国側とビジネスをしたり、接触したりすることを制限した。

2021/1/23 中国外交部、米国の前政権幹部に制裁

この後、欧米からの対中制裁に対抗する法的根拠として「反外国制裁法」をつくった。

通常は3回の審査が必要になるが、3回目の審査は省略し、2回目の審査を行うと発表したわずか2日後に承認された。

中国は、外国による封じ込めや圧力、国民への差別的な制限措置などに対し、相応の報復をする権利があると規定し、中国政府は報復の対象となる外国の個人や組織に対して、ビザの発給拒否や国外退去、中国国内の資産の差し押さえ、国内での商取引の禁止などの措置をとることができるとしている。

法律のねらいについて、中国外務省報道官は「国家の主権や尊厳、核心的利益を守り、西側の覇権主義と強権政治に反対するためだ」と述べた。

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アジア歴訪中のWendy Sherman 国務副長官が25~26日の日程で中国を訪問した。 天津で王毅外相らと会談し、中国に対して深刻な懸念を抱いている分野に加え、利益の一致する分野についても意見交換 した。 

その直前での制裁発表は米国側をけん制する狙いがあるとみられる。

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