イスラエルと米国に本拠を置く医薬品開発会社Oramed Pharmaceuticalsは7月21日、子会社のイスラエルのOravax Medical Inc.が世界初の新型コロナウイルスの錠剤型ワクチンの治験をまもなく開始すると発表した。
イスラエルの Ichilov Hospitalで治験を準備しており、Israeli Ministry of Health の承認を待っている。.
Oramed Pharmaceuticalsは2006年設立で、現在注射薬で使われている薬を経口薬に変える技術を開発している。
同社は新しい Protein Oral Delivery (POD™) technologyを開発した。
経口摂取されたタンパク質 (ワクチンも下記の通り、タンパク質)は、胃腸内の過酷な酸と 、プロテアーゼ(タンパク質分解酵素)、および小腸の壁によってもたらされる物理的障壁によって危険にさらされるため、ほとんどのタンパク質ベースの医薬品は錠剤の形で服用することはできず、注射により血液循環に直接送達されている。
Protein Oral Delivery technologyは、 下記により問題点を解決した。
(1)腸溶コーティング(Enteric coating):カプセルは酸性の強い箇所では無傷で、小腸で初めて溶ける。
(2)特殊なプロテアーゼ阻害剤 :プロテアーゼによるタンパク質の分解を防ぐ。
(3)吸収促進剤サプリメント:小腸での薬剤の吸収が促進される。同社はこれを使って、糖尿病治療用に世界初の経口インシュリンカプセル(ORMD-0801)を開発中である。
Oramed Pharmaceuticalsは2021年3月19日、COVID-19用の経口ワクチンの開発のため、インドのPremas Biotech Pvt. Ltd. との 合弁会社 Oravax Medical Inc.をイスラエルに設立すると発表した。
Oramed Pharmaceuticals のPOD™ oral delivery technology とインドのPremas Biotech (提携する米国のAkers BioSciencesの技術を 含む)の新しいワクチン技術を統合して、経口ワクチンをつくるもので、Oramedが63%を出資、Premas Biotechや同社と協力している米国のAkers BioSciences等が出資する。
このワクチンはPremas Biotechのウイルス様中空粒子(VLP) 技術で、Premas Biotechは SARS-CoV-2ワクチンに使用できる3つ(スパイクタンパク質、エンベロープタンパク質、および膜タンパク質)の抗原の特定に成功した。
ウイルス様中空粒子(VLP) はウイルスと外見上よく似た構造を保持するが、空洞でウイルスゲノムを持たないため、細胞内で増殖しない。一方、ウイルスと同じカプシドタンパク質から構成されているため同一の抗原性を保持しており、安全性を確保しながら免疫を強く誘導することができる。 免疫細胞は、ウイルスや細菌の表面にあるタンパク質を認識することにより、感染性病原体を識別して破壊するようにプログラムされている。
COVID-19には、ワクチン候補となる可能性のある3つの表面タンパク質(スパイクタンパク質、エンベロープタンパク質、および膜タンパク質)がある。Pfizer、Modernaなど、一般的にはスパイクタンパク質を使っている。
変異株に対応するには、複数の抗原を標的とするのが望ましい。特定のタンパク質に変異が生じて効かなくなっても、免疫システムは他の2つの抗原を認識できる。
Premas Biotechは米国のAkers BioScienceと協力し、SARS-CoV-2に対するトリプル抗原ワクチン候補に取り組み、使用できる3つの抗原の特定に成功した。
2021年3月に動物実験を通じて新型コロナウイルスに対する免疫形成が確認された。
Akers BioSciencesは2021年4月、MyMD Pharmaceuticals, Inc. に買収された。
VLP platform technology は注射でも経口でも利用できるが、Oramedでは経口ワクチンを開発している。通常のワクチンとしてのほかに、既にワクチン注射を受けた後の booster としても開発している。
Oravaxではイスラエルでの治験のあと、グローバルに広げることを考えている。治験ではデルタ株のような変異株についてもテストする。
錠剤型ワクチンは保管と流通が手軽で、コールドチェーンなど流通インフラと医療装備が不足した開発途上国などでも使用が拡大すると予想される。
Premas Biotechはインドで注射タイプを開発、販売する計画。
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