米国、大統領貿易促進権限(TPA)法が失効

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米議会が大統領に通商交渉権限を与える大統領貿易促進権限(TPA)法が7月1日、期限切れとなり失効した。

バイデン政権が貿易協定を今後まとめる場合は新たなTPA法を成立させる必要がある。

但し、バイデン政権は米経済の再建を優先する方針で「米国製造業強化に向けた投資をするまで、貿易協定は締結しない」と明言しており、TPA再付与にも慎重な姿勢を示している。

合衆国憲法第2章第2条第2項では、大統領は上院の助言と承認を得て条約を締結する権限を有するとされるが、同憲法第1章第8条第3項では、連邦議会の立法権限として諸外国との通商を規制する権限も認めている。

建国以来、関税の変更は議会が主導し、大統領の役割は議会の立法に対する拒否権の行使に限られていた。

1890年のマッキンレー法はアメリカ商品への不平等、不当な関税を課す国へ追加的関税を賦課する権限を大統領に付与した。

その後、いろいろの変遷があった。

George W. Bush政権は、2002年8月に成立したTrade Promotion Authority法(2002年超党派貿易促進権限法)によって貿易促進権限を得た。
これによって、議会への事前通告や交渉内容の限定などの条件を満たす限り、議会側は行政府の結んだ外国政府との通商合意について、個々の内容の修正を求めず、一括して諾否のみ決することとされた。

米国がこれまで締結したFTAの大半は、TPA手続きにのっとるかたちで発効している。

TPAは2005年6月に延長されたが、その後は再延長が認められず、2007年7月1日に失効した。

Obama政権は環太平洋パートナーシップ(TPP)交渉参加を決めたが、このままでは議会を通すことは難しい。

米超党派議員は2015年4月16日、大統領に強力な通商交渉の権限(Fast track negotiating authority ) を与える貿易促進権限(通称TPA)法案で合意し、議会に提出した。

いろいろな経緯があったが、最終的にオバマ大統領が2015年6月29日、TPA法案に署名、成立した。

2015/6/25 米上院がTPA法案可決 近く成立

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日米など環太平洋連携協定(TPP)参加12カ国は2016年2月4日、ニュージーランドの最大都市オークランドで協定文に署名した。

発効には名目GDP合計85%以上が必要なため、1国で15%以上の日本と米国の批准は必須となる。

Trump大統領は2017年1月23日、TPPからの離脱を宣言、米通商代表部(USTR)は1月30日、TPPからの離脱を参加各国に書簡で正式に伝達した。

2016/11/23 Trump 次期米大統領、「就任初日にTPP離脱通告」を確認

その後、日本が中心となり、米国を除く11カ国での交渉を行った。米国を除く TPP 参加11カ国は2018年3月8日午後、チリのサンティアゴで新協定「TPP 11」に署名した。

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「2015年TPA法」は、2018年6月末を期限としていたが、その後、2021年6月30日まで3年間延長された。

結局、TPAの議会手続きに則したFTAは、米国・メキシコ・カナダ協定(USMCA)のみとなった。

2020/1/18  米国・メキシコ・カナダ協定(USMCA)実施法案可決 

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