米CDC、新型コロナ対策として新たな住宅立ち退き猶予措置を導入

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米疾病対策センター(CDC)は8月3日、新型コロナウイルス感染予防策として、感染率が高い地域を対象に新たな住宅立ち退き猶予措置を導入すると発表した。有効期間は10月3日まで。

CDCのワレンスキー所長は「デルタ変異株の出現で米国内の市中感染が急拡大しており、ワクチン未接種者をはじめ多くの米国人のリスクが高まっている」と指摘、「立ち退き猶予は、人々にコロナ感染が広がる密な場所を避け、自宅にとどまらせるのに適切な措置だ」と強調した。

新たな措置によって多数の家賃滞納者が強制退去から守られることになるが、7月末で失効した前回の全米を対象にした住宅立ち退き猶予措置に比べると、適用範囲は限定的となる。

アスペン研究所などの調査によると、現在、米国で家賃を滞納しているのは650万世帯の1500万人超に上り、滞納額は合計200億ドルを超えている。

付記

米国最高裁は8月26日、CDCによる10月3日までの住宅立ち退き猶予措置を無効と判断した。続けるためには議会が特別に認める必要があるとした。

保守派6人が無効とし、リベラル派3人が反対した。

最高裁は6月29日に4対5で7月末までの延長を認めたが、賛成した保守派判事は「7月末に期限がくるというのが直ちに停止することに賛成しなかった理由だ」とし、「議会は7月31日以降も立ち退き猶予を認めるため、新しい、明確な法律を通すべきだ」と付言していた。

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2020年の新型コロナウイルスの蔓延で多数が失業し、収入を断たれ、家賃が払えなくなった。通常でも毎年200万人以上が家賃を払えず、立ち退きを余儀なくされているが、2020年はコロナの関連でこれが急増した。

これを受け、米政府は連邦政府が支援する不動産について2020年7月25日まで一時的に立ち退きを禁じた。多くの州でも同様の措置をとったが、いずれも2020年6月から7月にかけて終了した。

米連邦政府が新型コロナウイルス対策として発動した失業給付の特例が2020年7月31日に失効し、支給額が一時的に大幅に減額する。これに続き、中小企業の雇用維持策も8月7日に申請期限が切れた。

連邦議会は家賃支援で約500億ドルの予算を通したが、支給が遅れている。

トランプ大統領2020年8月8日、新型コロナウイルス感染拡大を受けた追加経済対策として、失業給付を増額する措置の延長を含む4つの大統領令に署名した。

(1)失業給付を週400ドル上乗せ

(2)給与税の納税を猶予

(3)学生ローンの利払い猶予

(4)住宅の強制立ち退きの一部停止 家賃未納者の立ち退きを一時停止したが、既に期限切れとなった。

CDCとDepartment of Health and Human Services に対し、立ち退き停止が必要かどうか検討を求めた。

2020/8/9 トランプ大統領、失業給付増額等へ大統領令  

これを受け、米疾病対策センター(CDC)は2020年9月、立ち退きによってホームレスが増えることで感染拡大の懸念があるとして、一定の所得以下の人の立ち退きを猶予する措置を取った。 平時であれば、1カ月以上の滞納で立ち退きを求められる場合が多い。

感染拡大が長引いたことでCDCはその後、猶予措置の延長を重ねてきた。

野党・共和党が立ち退き猶予はモラルハザードを生むと主張してきたほか、家主側の負担が膨らんでいる。

バイデン大統領は本年3月、6月末で切れる猶予措置を延長した。6月24日に政権は最高裁に対し、猶予措置を7月末まで延長したと通告した。

最高裁は6月29日、Alabama Association of Realtorsが起こした立ち退き猶予措置の無効化を求めた訴訟で、7月末までの延長を認めると同時に、米議会が立ち退き猶予を正当化する立法措置を取るべきだったとの認識も示した。

最高裁の9人の判事のうち、保守派4人は直ちに停止することを支持、リベラル派3名と保守派2名が7月末までの延長を認めた。

保守派のKavanaugh判事は、「7月末に期限がくるというのが直ちに停止することに賛成しなかった理由だ」とし、「議会は7月31日以降も立ち退き猶予を認めるため、新しい、明確な法律を通すべきだ」と付言した。

米国勢調査局による最新の調査では、全米で360万人が家賃を払えず今後2カ月以内に立ち退きを迫られる可能性がある。住宅ローンの延滞者も含めると全米で家を失う可能性のある人は470万人にも及ぶ。

全米のホームレスの人の数は20年に58万人と前年比2.2%増加しており、21年はさらに膨らむことが懸念される。

大統領はCDCに対し、従来より規模を縮小して住宅立ち退き猶予措置を復活させるよう求めた。しかしCDCは、最高裁が最近示した判断を理由に、法的権限がないとして拒否した。

大統領は7月29日、新型コロナのデルタ型変異株の感染拡大を踏まえ、立ち退き猶予措置を延長するよう議会に要請した。

米下院は7月30日、同措置を10月18日まで延長する法案の全会一致での可決を目指したが、 正式な採決に至らなかった。上院は本会議を開いたものの、立ち退き猶予措置については審議しなかった。

この結果、この措置は7月31日で終了した。

民主党の上院トップのシューマー院内総務とペロシ下院議長は同措置を再導入するよう政権側に求めた。

バイデン大統領は州・地方政府に対し、少なくとも2カ月間は立ち退き禁止令を延長あるいは新たに発動するよう呼び掛けた。ニューヨークやカリフォルニアなど一部の州は既に、州の立ち退き禁止令の延長を決めている。

大統領は新たな猶予措置には法的リスクが伴うと認めたが、法廷で検証される間、賃借人に「時間的猶予」を与え得るとの見方を示した。

CDCは、7月末でいったん失効した家賃滞納者に対する立ち退き猶予措置を復活し、10月3日まで2カ月間延長すると発表した。新型コロナウイルスのインド型(デルタ型)の感染が拡大しており、感染防止のため自主隔離できる住居が必要と判断した。

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