バイデン政権は7月28日、政府調達で米国製品を優先させる「バイ・アメリカン」法について、運用を強化する新ルール案を発表した。
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Buy American Act は米国で国内産業の保護・生産奨励を目的として、自国製品の優先購入などを義務付けた法律で、大恐慌下の1933年に、連邦政府が物資の購入契約又は公共建設の委託契約を締結する場合に、米国製品の購入又は米国製資材の使用を連邦政府に義務づけるものが最初。
「米国製 」は米国産品の比率が50%以上のもの。
次の場合は適用除外①公共の利益に反する場合、
②米国製品価格が外国製品より6%以上高く 、当該米国製品を調達することが「不合理」とされる場合、
③当該製品が米国内で入手不可能な場合等。
Trump大統領は2017年4月18日、連邦政府機関に米国製品の調達を優先するよう求める"Buy American"、高度な技術を持つ外国人労働者を対象とするビザの審査を厳格化する"Hire American"の大統領令を出した。
2017/4/22 Trump大統領、"Buy American"、"Hire American"の大統領令
Trump大統領はNAFTAに代わる「USMCA(米国・メキシコ・カナダ協定)」で自動車の関税ゼロのためのRules of originを変更し、域内部品調達比率を62.5%から75%に変更、更に時給16ドル以上の地域での生産割合を40-45%とした。
2018/10/4 NAFTA、3カ国協定を維持、USMCAに改称
Biden 大統領も就任直後の2022年1月25日、「バイ・アメリカン」法の運用を強化する大統領令に署名した。
・ 従来認められてきた適用除外を最小限に減らし、運用面の抜け穴をふさぎ、調達条件となる米国製の要件を引き上げる。
(i) "component test" で米労働者が製造に寄与した付加価値を考慮
(ii) 国内比率の引き上げ 50%→55%、鉄鋼製品は95%
(iii) 外国品使用が可能な場合の内外価格差の引き上げ 大企業の場合は6%→20%、中小企業の場合は 12%→30%
・ ホワイトハウス内の米行政管理予算局に担当ポストを設け、米国製品を優遇する政策を省庁横断で進める 。
・ 全米のネットワークManufacturing Extension Partnershipを活用し、省庁が必要とする製品を生産できるメーカーを探すのに役立たせる。
・ 米国内の地点間の物品の輸送を行う船舶は米国船籍で、1)米国人配乗、2)米国人所有、3)米国建造でなければならない、という法律。
・ 各省庁は半年ごとにレビュー
2021/1/28 バイデン大統領、米国製品の政府調達拡大の大統領令
2022年4月には Made in America Office を設置、ここで検討を続けてきた。
今回、下記の新ルール案を提案した。
現行の国内比率は55%となっている。これを直ちに60%とし、2024年までに65%、2029年までに75%へと段階的に引き上げる。
抜け穴を封じるとともに、業界がサプライチェーンを再整備するための時間を与える。
新しい優遇価格制度で重要品目(Critical Supply Chain、pandemic supply chain )の国内サプライチェーンを強化
現時点では、連邦政府機関が調達価格を算定するに当たって、
(a)「国内最終製品」を採用する場合は外国製品と比べて大企業なら20%、中小企業なら30%の価格優遇を、
(b)「国内建設素材」を採用する場合は企業の規模を問わず外国製品と比べて20%の価格優遇を与えている。
今回、それらが「重要製品」に該当する場合はさらなる優遇幅を認める。
製品で使用されている国産部材の比率を報告することを義務付け、透明性を増す。
(現状では、製造業者は、自社製品が国産部材の最低比率を満たしていると報告するだけでよい。)
規則案は60日間の意見公募を経て最終決定される。
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