厚生労働省は8月6日、ペルーから羽田空港に到着した30代女性から、新型コロナウイルスが変異したペルー由来の「ラムダ(Lambda)株」を検出したと明らかにした。
無症状だったという。国立感染症研究所の解析でラムダ株と確認された。
付記
その後の報道で、実は女性は7月20日に羽田に到着、7月23日には感染症研究所がラムダ型と認定、26日には国際機関に報告していたという。
8月6日発表は報道機関が質問したため。
7月23日は五輪開幕日であり、隠蔽したのではないかとの見方がある。米国ニュースサイト The Daily Beastは8月6日付で、「東京はオリンピック直前に命に関わる新しいCOVIDの変異株を隠蔽」と題した記事を配信。「国立感染症研究所の研究者はDaily Beastに、ラムダ株は空港のチェックで発見されたと語った」と報じた。この後、発表された。
その後、この女性が五輪関係者であることが明らかになった。女性は30代でペルーに滞在歴があり、7月20日に羽田空港に到着。大会の許可証を所持していた。
検査でコロナ陽性となったが無症状で、ホテルなどの療養施設に移送されたとみられる。
ラムダ株は、2020年8月にペルーで最初に見つかり、南米で感染が拡大している。
ペルーでは今年4月以降、感染の80%以上がこの変異株によるものとなっている。
ジョンズ・ホプキンス大学のデータによると、7月12日現在の感染者数は約207万9千人、死者は19万3千人以上で、感染者の致死率は9.3%、人口10万人あたりの死者数は596.5人で、世界最悪の状況となっている。ラムダ株の感染は6月24日の時点で、北米、欧州、中東、アフリカ、アジア、オーストラリアの各国で確認されている。
世界保健機関(WHO)は2021年6月14日、南米で流行する新型コロナウイルスの新たな変異株「ラムダ」を「注目すべき変異株」(VOI)に指定した。
ラムダ株が感染力が高く、中和抗体に対する耐性を持つ可能性があると指摘している。
しかし、エビデンス(実証的な証拠)が限られていることから、ラムダ株については引き続き、さらなる調査が必要だと述べた。
VOIは、現時点で感染力などが明確でないというだけで、VOCより警戒度が低いということではない。
デルタ株もWHOは2021年4月27日にはまず「注目すべき変異株(VОI)」に分類した。その後、感染力の強さが確認され、5月11日に「懸念すべき変異株(VOC)」に分類を変更した。
下記の通り、既存のウイルスより感染力が高いだけでなく、ワクチンが効かない可能性もあり、デルタ株よりも危険な可能性もある。
国立感染症研究所は「感染力やワクチンへの抵抗力が従来のウイルスより強い可能性はあるものの、データが限られている」とし、日本では現時点では「注目すべき変異株」に位置づけていない。
8月6日時点
VOC:「アルファ株」、「ベータ株」、「ガンマ株」、「デルタ株」
VOI :「カッパ株」のみ
東京大学研究チームは7月28日、科学論文サイト「バイオアーカイヴ(bioRxiv)」に、ラムダ株の研究結果を公開した。
https://www.biorxiv.org/content/10.1101/2021.07.28.454085v1
これによると、ワクチンがウイルスの力を失わせる「中和作用」に抵抗する突然変異、既存のウイルスよりも感染力が強い突然変異がラムダ株から観察された。
特定の条件でデルタ株よりラムダ株の感染力が強かったという内容もあった。ラムダ変異体のスパイクタンパク質がより感染性が高いのは、T76IおよびL452Q変異に起因する。
中和抗体からの回避には、 RSYLTPGD246-253N変異(タンパク質のN末端ドメインにあるユニークな7アミノ酸の欠失)が関与している。
Source: https://covdb.stanford.edu/page/mutation-viewer/#sec_delta
ただし、ラムダ株が既存のウイルスより感染力が正確に何倍さらに強いのか、致死率はどの程度になるのかについてはまだ確認されていない。研究チームは、「まだ全世界がラムダ株の危険性を認知できていない」と懸念を示した。
それ以前には、ラムダ株は490番目のまったく違う新しいところに変異が生じており、感染力の強さに加え、ワクチン効果が最悪で 1/5落ちるとされていた。(東大研究と異なる)
WHO 2021/6/15時点 (8/4時点でも分類は同じ)
WHO 判断 |
WHO label | 最初に発見 | 変異 | ||
VOC: Variants of Concern |
アルファ | VOC-202012/01 ( B.1.1.7) |
2020/9 英国 |
従来株よりも感染しやすく(1.32倍)、 重症化しやすい可能性あり。 |
23箇所の変異 H 69/V70欠失、Y144欠失、N501Y、A570D、P681H等 |
ベータ | 501Y.V2 (B.1.351) |
2020/5 南ア |
従来株よりも感染しやすく(1.5倍)、 免疫やワクチンの効果を低下させる可能性あり。 |
N501Y (easily gain access to our cells) E484K, K417N (affect our immune system) 242-244欠失 |
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ガンマ | 501Y.V3 |
2020/11 ブラジル |
従来株よりも感染しやすく(1.4~2.2倍)、 免疫やワクチンの効果を低下させる可能性あり。 |
N501Y (easily gain access to our cells) E484K, K417N (affect our immune system) |
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デルタ | B.1.617.2 | 2020/10 インド |
感染力 1.95倍 | L452R | |
VOI: Variants of Interest |
イプシロン | B.1.427およびB.1.429 | 2020/3 米国 |
従来株よりもやや感染しやすく、一部治療薬の効果を低下させる可能性あり。 | L452R |
ゼータ | P.2 |
2020/4 ブラジル |
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イータ | B.1.525 | 2020/12 多数国 |
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シータ | P.3系統 |
2021/1 フィリピン |
従来株よりも感染しやすく、免疫やワクチンの効果を低下させる可能性あり。 | N501Y E484K |
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イオタ | B.1.526 | 2020/11 米国 |
|||
カッパ | B.1.617.1 |
2020/10 インド |
L452R、E484Q、P681R | ||
ラムダ | C.37 | 2020/8 ペルー |
感染力の強さに加え、ワクチン効果が最悪で 1/5落ちる。 南米のほか米国やドイツなど計29カ国で感染が確認 |
490番目のまったく違う新しいところに変異 |
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