WHOは2020年3月に、COVID-19の治療のため各国の研究機関を結集してWHO Solidarity Trial Consortiumをつくり、抗ウイルス薬候補4剤(レムデシビル、ヒドロキシクロロキン、ロピナビル、インターフェロンβ-1a)がCOVID-19入院患者の死亡率を減らすことができるかを調べた。
結果はいずれも、入院患者の死亡率を減らすことではほとんど効果がなかった。
今回、Solidarity調査の次の段階としてSolidarity PLUSを開始するが、独立した専門家委員会によって選ばれた既存薬剤3剤の効果を確かめる。
臨床試験は52ヵ国600超の病院から数千人規模の入院患者を登録し、実施される見通し。
選ばれたのは次の3剤:
1) アルネスネート(artesunate)
アルテスネイトは、マラリアの治療に使用される医薬品で、ヨモギ属の薬草Artemisia annua から抽出されるartemisinin誘導体。
インドの多国籍製薬会社Ipca Laboratories が生産する。30年以上、マラリア治療に使われており、極めて安全。
抗炎機能を評価する。
2)イマチニブ(imatinib)
イマチニブは小分子チロシンキナーゼ阻害剤であり、特定の種類の癌の治療に使用される経口化学療法薬で、Novartisが生産する。
初期の臨床データで、肺毛細血管漏出を逆転させることを示唆している。オランダで実施された臨床試験で、安全性の問題がない場合、イマチニブが入院中のCOVID-19患者に臨床的利益をもたらす可能性があることを報告した。
3)インフリキシマブ(infliximab)
ヒトTNFαを認識するキメラモノクローナル抗体であるTNFα阻害剤で、クローン病など免疫システムの病気に使われる。
Johnson and Johnsonが生産。
特定の自己免疫性炎症状態の治療に20年以上承認されており、COVID-19に対して最も臨床的に脆弱な高齢者を含む、広域スペクトルの炎症を制限する上で好ましい有効性と安全性を示す。
WHOのテドロス事務局長は「より効果的でアクセスしやすい治療法を見つけることが依然として切実に必要だ」と強調した。
WHOは既にデキサメタゾンなどのステロイド系抗炎症薬について、致死率を下げる効果があるとして重症者への投与を推奨している。
デキサメタゾン:ステロイド剤(重度の肺炎・リウマチなどの薬)
メーカー (一般の抗炎症剤) 対象 主に中等症や重症患者 承認 英 2020/6/16 標準治療に 日本 2020/7 使用承認 2020/6/17 COVID-19 重症患者にステロイド剤デキサメタゾンが効果
WHOは本年7月、コロナ治療薬のガイドラインを更新し、中外製薬が創製した抗体医薬「アクテムラ」、米Regeneron Pharmaceuticalsの「サリルマブ」を推奨薬剤に追加した。
いずれも炎症を引き起こすIL-6の活性を抑制することで関節の炎症を改善する。
アクテムラ :抗リウマチ薬
メーカー 中外製薬 Roche/Genentech 承認 FDA 2021/6 EUA 日本 年内申請 2021/6/28 中外製薬の抗リウマチ薬「アクテムラ」、FDAが新型コロナウイルス治療薬として緊急使用許可
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