中国税関総署は9月18日、台湾産の2種類の果実、バンレイシとレンブについて、9月20日から輸入を一時停止すると発表した。
税関は、これらの果物から害虫のPlanococcus minor(柑橘類コナカイガラムシ)を繰り返し検出したとして、禁輸は植物感染症のリスクを防止するためだと説明している。
いずれの果物も、中国が主な輸出先となっており、昨年、バンレイシは約1万4千トン(総生産の約23%)、レンブは約4800トン(同約10%)輸出された。
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バンレイシ(別名:釈迦頭)は中南米原産だが、台湾では主に台湾東部の花蓮県や台東県で栽培されている。
実が熟す前に出荷され、硬い状態で店に出されるが、熟し始めるとあっという間に実が崩れてしまう ため、中国などごく限られた地域へ輸出されるのみで、日本へはほとんど入ってこない。
レンブ(蓮霧)は、マレー半島原産で、リンゴと梨を合わせたような淡い味わいの果物。
日本では沖縄、奄美群島のほか、一部でハウス栽培されている。沖縄ではデンブとも呼ぶ。
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中国は2021年3月1日から台湾産パイナップルの輸入を禁止している。この時も自国の作物に影響を及ぼしかねない「害虫」を複数回確認したためとしている。
台湾のパイナップル生産は年間43万~45万トンで、輸出は5万トン前後だが、このうち9割以上が中国向けで、対中輸出額は年間約57億円と、台湾の果物農家の貴重な収入源である。
今回、台湾の行政院(内閣)農業委員会によると、問題の害虫については輸出のための検疫措置を強化しており、今年6月末以降、中国側から検疫における不合格の通知は受けていなかったという。
パイナップルの輸入停止時と同様に輸入先で対処できる害虫でもあり、一方的な輸入停止は認められないとの考えを示した。
月末までに中国側が改善要求に応じない場合、「WTOに提訴する」と強調した。
いずれの禁輸も、中国が敵視する台湾の民進党・蔡英文政権への揺さぶりとみられている。
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台湾は、新型コロナウイルスのワクチン輸入でも中国の妨害を受けていると主張している。
台湾の蔡総統は5月26日、「AstraZeneca、Moderna、ドイツのBioNTech(Pfizer と提携)と積極的に交渉し、AstraZenecaとModernaからは購入できた。BioNTechとは契約成立に近づいたが中国の妨害によって今も契約できていない」と明言した。
台湾は人口2350万人に対し、確保したワクチンは約1300万回分で、接種率はいまだ約43%にとどまる。
台湾当局は9月2日、鴻海精密工業と台湾積体電路製造(TSMC)が海外から独自に調達した新型コロナウイルスワクチンを、両社から無償で受け取ったと発表した。中国の妨害でワクチン調達が進まないとして民間企業にワクチン調達を委ねる異例の決定を下していた。
両社は既に合計1500万回分の調達契約を結んでおり、Pfizer / BioNTechのワクチン 93万回分が同日、台湾に到着した。両社は今後の調達分も含め、ワクチンを全量、当局に無償提供する。
調達資金は諸経費込みで合計最大3億5000万米ドル(約390億円)。
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