Redlen Technologiesは、医療用画像診断機器やセキュリティ検査装置に用いられるCadmium Zinc Telluride(テルル化亜鉛カドミウム)半導体検出器モジュールの開発・製造において世界トップクラスの技術を有している。
この技術を、次世代型のコンピュータ断層撮影装置 として注目されるPhoton Counting CTに用いることで、体内の特定の物質の鮮明な画像化が可能になると見込まれている。
これにより、従来技術では困難とされてきた、非常に小さな病巣の早期発見や、細かな病変の把握が可能になると期待されている。
さらに、従来のCTと比べ、少ないX線照射でノイズの少ない画像取得が可能になるため、被ばく量の大幅な低減による患者の身体的負荷の軽減と、撮影画像の高解像度化による診断精度の向上が期待できる。
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一般的なX線CT装置では、X線が被写体に照射され、被写体を透過する際に生じるX線のコントラストをシンチレーターで光に変換し、その光をフォトダイオードでとらえることで画像を作り出 す。
シンチレータ+フォトダイオードという構成をしており、入力フォトンによりシンチレータで発光した光をフォトダイオードで電気信号に変換し、一定間隔でDASで積分することで1ビューあたりの出力を得るエネルギー積分型(Energy Integrated)収集方式を使用している。
これに対し、Photon Counting CTでは照射されたX線のフォトン(光子)の数を半導体センサーでカウントすることでX線を測定 する。
それぞれのフォトンが持っているエネルギーによって半導体内で発生する電荷の量も異なるため、その違いを識別することで高精度に物質を弁別することができ る。
低被曝で高分解能な画像取得が可能であるため次世代のCTとして期待されてい る。
https://jsrt-tohoku.jp/cms/wp-content/uploads/2017/06/63cfef1d6d757ea7d1e7723dfe1f2808.pdf
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Redlen Technologies Inc.とは当初、日立製作所が提携した。
日立とRedlen Technologiesは2016年3月7日、光子計数型断層撮像装置(Photon Counting CT)用の半導体検出器モジュールを共同開発することで合意したと発表した。
Redlen Technologiesが開発したCZT半導体(Cadmium Zinc Telluride:テルル化亜鉛カドミウム)をPhoton Counting CTに用いることで、指定した物質のみの断層画像を得られるようになり、機能画像(病巣の性状)による診断が可能になる。
これにより、血液中の脂質プラークや石灰などの物質を鮮明に画像化でき、動脈硬化などの予防指導に活用できる可能性がある。また、PCCTはX線による被ばく量の低減、診断の定量化、高分解能化などの面においても期待されている。
今回の共同開発では、半導体検出器から得られる多量のデータを高速に処理する信号処理技術の開発、およびRedlen が製造するCZT半導体を検出器モジュールに実装する技術開発を進めてい き、共同開発で得られた検出器モジュールを用いPhoton Counting CTを開発していく予定であるとした。
日立製作所は2019年12月18日、画像診断関連事業を富士フイルムに譲渡することを決定したと発表した。
売却する事業は、日立の子会社だった旧日立メディコが手掛けるMRIとコンピューター断層撮影装置(CT)、さらにその子会社日立アロカメディカルが強みを持っていた超音波診断装置を中心とした画像診断機器事業である。
2019/12/20 富士フイルム、日立の医療機器事業を買収
日立の画像診断関連事業は2021年3月31日付で富士フイルムへ事業譲渡され、同日より、富士フイルムヘルスケアとして営業を開始した。
当然、日立とRedlen Technologiesの提携契約は富士フィルムヘルスケアに引き継がれていると思われるが、日立(富士フィルム)とRedlenの契約がどうなったかについては今回の発表では触れられていない。
富士フイルムヘルスケアによると、現在も共同開発を継続して進めており、Redlen からは、当面オペレーションは変わらないと聞いているという。
キャノンと富士フィルムはこの分野で競合している。キャノンが100%子会社が競合相手に協力するのを許すだろうか?
キャノンのこの事業は元 東芝メディカルシステムズである。
買収に当たり、独禁法対策で奇手を使い、問題となった。
2016/3/18 キヤノン、東芝メディカル買収を発表、独禁法対策で奇手
最終的に公取委の承認を得たが、東芝メディカルの買収を計画していた富士フィルムは、次のように述べている。
この買収にフェアな姿勢で臨んだ我々にとって、アンフェアな競争であった。これが許されるなら、競争法が形骸化する。
2016/7/4 公取委、キヤノンによる東芝メディカルシステムズの株式取得を承認
富士フィルムはその後、日立の事業を買収した。
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