毎日新聞(9/15 夕刊)はこのタイトルで、感染制御学が専門の愛知県立大の清水宣明教授に話を聞いている。
WHOや米疾病対策センター(CDC)は今春、新型コロナは空気中に漂うウイルスを含んだ微粒子「エアロゾル」を吸い込むことで起きる「空気感染」(エアロゾル感染)が感染経路だと明記した。
しかし、国は「飛沫感染や接触感染 」が原因とし、かたくなに空気感染を認めていない。
厚労省のウェブサイト:
新型コロナウイルス感染症は、主に飛沫感染や接触感染によって感染するため、3密(密閉・密集・密接)の環境で感染リスクが高まります。
このほか、飲酒を伴う懇親会等、大人数や長時間におよぶ飲食、マスクなしでの会話、狭い空間での共同生活、居場所の切り替わりといった場面でも感染が起きやすく、注意が必要です。
付記 今回の声明を受けてか、厚労省は10月末にウェブサイトを下記の通り修正し、エアロゾル感染を主たる感染原因と認めた。
感染者の口や鼻から、咳、くしゃみ、会話等のときに排出される、ウイルスを含む飛沫又はエアロゾルと呼ばれる更に小さな水分を含んだ状態の粒子を吸入するか、感染者の目や鼻、口に直接的に接触することにより感染します。
一般的には1メートル以内の近接した環境において感染しますが、エアロゾルは1メートルを超えて空気中にとどまりうることから、長時間滞在しがちな、換気が不十分であったり、混雑した室内では、感染が拡大するリスクがあることが知られています。
また、ウイルスが付いたものに触った後、手を洗わずに、目や鼻、口を触ることにより感染することもあります。WHOは、新型コロナウイルスは、プラスチックの表面では最大72時間、ボール紙では最大24時間生存するなどとしています。
実際は、接触感染の感染リスクは極めて小さいことが分かっている。
また、飛沫は比較的重いため、口や鼻から吐き出されると空中を漂わず、瞬時に落下する。それを鼻から吸い上げるというのは大変難しく、飛沫感染と言われているのも大半が空気感染だとみられている 。
清水教授は、「真の感染経路に真正面から向き合わず、消毒や手洗い、アクリル板の設置といった効果の低い対策ばかりを推奨した結果 、第5波までに多くの犠牲者を生み出したのだと思います」としている。
エアロゾルは3時間程度は感染性を有して空気中を浮遊し続けることが報告されている。従って、食堂などで食事する場合、食事相手への対策をいくらやっても、以前の客が出し浮遊しているウイルスを吸い込み感染することが考えられる。
他人がいなくても、閉鎖された場所でマスクを外すと、以前にいた人が出したウイルスを吸い込む可能性もある。
特にデルタ株の場合、患者から検出されるウイルスの量が従来の新型コロナウイルスの少なくとも4倍以上になると推定されるという。浮遊ウイルスの量が多いと感染する可能性も高くなる。
清水教授を含む感染症などの専門家38人が8月18日に、新型コロナウイルスの主要な感染経路として政府が否定している「空気感染」を前提とした対策を取るよう求めて緊急声明を出した。
最新の知見に基づいたコロナ感染症対策を求める科学者の緊急声明 新型コロナウイルス感染拡大を受け、政府や一部医学関係者から「策が尽きた」との声が聞こえている。早期発見と隔離、ワクチン、緊急事態宣言等で用いられてきた対策以外に有効な施策がないとの意見には同意できない。彼らが感染拡大の可能性の指標とする人流は、たとえあったとしても、人と人の交わりの場において実効性のある対策がとられれば、必ずしも感染は広がらないはずである。 その意味で、感染経路への理解が進み、空気感染が主たる経路であると考えられるようになっている現在、対応すべきことは明らかである。すなわち、最新の知見を踏まえれば、対策が尽きてしまったと言うほどのことはなされていない。未だ様々な方法が残されており、それらによる感染拡大の阻止は可能である。 空気感染は主に感染者の口腔から空間に放出されるウイルスを含んだエアロゾルが空間に滞留する量(濃度)に応じて起こる。理論的にもエアロゾル滞留濃度を下げることで感染抑止は可能なはずであり、少なくとも以下に挙げる2つ方向において対策の余地は大きい。
1)ウイルス対応マスクによる、口腔から空間に放出されるエアロゾルの量と、他者からのエアロゾル吸入の抑制 ウイルス対応の、すきまの少ない不織布マスクは感染者からのウイルス排出を抑えると同時に、非感染者がエアロゾルとしてウイルスを吸入する確率を小さくでき、相乗効果があることは周知の事実である。一方で、若者を中心に広く使われているポリウレタン製のマスクや布製のマスクは、直接下気道に吸い込まれ肺炎のリスクを高める粒子径5μm以下のエアロゾルの吸入阻止に無力である。これもすでに広く知られていることであり、たとえば感染拡大時のドイツでは、公共の場や交通機関等では一定以上の性能を持つマスク着用が罰則付きで義務化され、ウレタンマスクの着用は禁止される。一方、わが国ではそうしたことに何の制約もないし、正式な呼びかけすらなされていない。日本でも、人流抑制やロックダウンの可能性を云々する前に、こうした効果の明らかな基本が徹底されるための措置を可及的速やかに実施すべきである。 2)滞留するエアロゾルの機械換気による排出、エアロゾル濃度抑制 屋内で感染者から放出されたエアロゾルは長時間空間に滞留しうる。窓開けやドア開けが有用な換気方法だが、1時間に2回程度の短時間の窓やドアの開閉では必ずしも十分な換気は確保されない。さらに、夏や冬は、冷暖房効果が大きく損なわれる危惧から窓開け換気の実施自体も容易でなく、今般の感染拡大の一因になっている疑いが強い。換気不十分の、複数の人が集まる狭い密閉空間では、発生するエアロゾルの空間濃度を下げるための工夫、すなわち熱交換換気や空気清浄機等を含めた機械的換気の適切な活用が重要となる。 以上から、私たちは国や自治体が以下の対策を速やかに検討するよう提起する。 A)ウイルス対応マスク装着についての市民への速やかな周知と必要な制度的措置 B)熱交換換気装置や空気清浄機、フィルター等の正しい選択と有効な活用についての行政の理解と市民一般への十分な周知 C)効果の科学的証明には時間を要するため、最新の知見から有効と予想できる対策は、中立的組織による効果の検証を平行しつつ、公平性や安全性に配慮して実施する 私たちの手には現在、感染抑制に活用できる不織布素材、熱交換換気装置、空気清浄機、扇風機やエアコンに付加する形でのフィルター等、科学技術の成果がある。室内空気環境を専門とする建築学分野は、シックハウス症候群を端緒とし、医学界との共同研究の歴史を持つ。本声明で指摘した項目と、狭義の医学に留まらない科学知を総合した対策の検討と実施が、いま速やかに必要である。 2021年8月18日 世話人:本堂 毅(東北大学大学院理学研究科) 以下 36名(略) |
清水宣明教授によると、新型コロナが国内で初めて確認された段階で、専門家会議が「空気感染ではない」と言い切ってしまったことが全ての元凶 である。「最初に否定してしまったものを今更認めるわけにはいかないのでしょう。」
2020/2/24 新型コロナウイルス感染症対策専門家会議 見解 は次の通り。
このウイルスの特徴として、現在、感染を拡大させるリスクが高いのは、対面で人と人との距離が近い接触(互いに手を伸ばしたら届く距離)が、会話などで一定時間以上続き、多くの人々との間で交わされる環境だと考えられます。我々が最も懸念していることは、こうした環境での感染を通じ、一人の人から多数の人に感染するような事態が、様々な場所で、続けて起きることです。
これまでに判明している感染経路は、咳やくしゃみなどの飛沫感染と接触感染が主体です。
空気感染は起きていないと考えています。ただし、例外的に、至近距離で、相対することにより、咳やくしゃみなどがなくても、感染する可能性が否定できません。
専門家が当初空気感染を否定した理由は、専門家会議の議事録によると、エアロゾル感染を明記した方が良いという意見に対し「単にエアロゾル感染と書くと、たちまち医療機関では医療用のN95マスクがなくなり、一般の方は恐ろしくて外出できない状況にもなりうる」との発言がある。
また、東京オリンピックの開催を控えていたので、空気感染を認めてしまうと感染対策が大変になり、開催の印象が悪くなると懸念したのではない かと推定する。
「感染対策が難しいから主要な感染経路を伏せる」というのでは本末転倒で、空気感染はまさに 「不都合な真実」だったのだろうとしている。
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