河野太郎候補の原発政策が自民党内で論議を呼んでいる。
「安全が認められた原発は当面、再稼働する」と述べ、反原発の主張をおろしたのではとも見られたが、新増設はないとしたうえ、「核燃サイクルはなるべく早く手じまいすべきだ」とした。
河野候補の主張:
2050年までにカーボンニュートラルを実現するには石炭、石油から止めていかないといけない。きちんと省エネをする。再生可能エネルギーを最大限、最優先で導入していく。 それでも足らないところは、安全が確認された原発を当面は再稼働していく。それが現実的なんだろうと思ってい る。
これから新増設、リプレース、新設の計画が動いていくことはない。運転期間延長は最長20年のため、いずれ原子力はゼロになるんだろうと思う。
核燃料サイクルはなるべく早く手じまいすべきだ。
その根拠として高速増殖炉「もんじゅ」計画の頓挫や、プルトニウムの安定的な消費が見込めないことなどを挙げる。
完成の遅れや規制対応で建設費は当初計画から大きく膨らみ、経済合理性も損なわれている。この政策にこれまで協力をしてくれた自治体に迷惑をかけることなく、きちんとした将来展望を描けるように国は責任を持たなければならない ともした。
河野氏は以前のブログで次のように述べている。
再処理はやめ、高速増殖炉からは撤退、使用済み核燃料をドライキャスクで暫定保管しながら、もはや守ることができない国と自治体の数々の約束について、守れないという現実を認めて具体的な方策を考えるという方向性でほぼ一致したといっても良いと思います。
自民党内のリプレース推進派は、リプレースを主張するとともに、再処理をしなければ各原発で使用済み燃料が溢れ、止めざるを得なくなると訴えている。
使用済み燃料の処理のために、破綻している核燃料サイクルをやれというのが間違いである。実際には後述の通り、乾式貯蔵で最終処分が決まるまで保管し続ける方法がある。
自民党内の一部は、核燃料サイクルが止まることで、プルトニウムの保管が認められなくなることを恐れているとされる。
日本はプルトニウムを再処理して分離している唯一の非核保有国で、保有量46トンは、中国が軍事用に持っていると推定される量の10倍以上 、核兵器の数に換算すると数千発分に相当する。
これは、核燃料サイクルのために例外的に認められているもので、核燃料サイクルをやめると、保有を認められなくなる。
自民党の一部は、将来、核を保有するためにプルトニウムの所有に固執しているとされる。 (実際には核保有はあり得ないが、プルトニウムは持っておきたい。)
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核燃料サイクルについては下記を参照
2013/2/14 核燃料の再処理問題
2020/12/21 日本の原発の最近の諸問題
日本の核燃料サイクルは2つ、①プルトニウムとウランを混ぜて作るMOX燃料を高速増殖原型炉「もんじゅ」で使用する計画 、②プルトニウムをMOX燃料として利用する計画であった。
①については、2016年12月21日に廃炉が正式決定され、現在、廃炉作業中。
②については、原子力規制委員会はようやく2020年になり、7月に 青森県六ケ所村の「再処理工場」、12月に同「MOX燃料工場」について、安全対策の基本方針が新規制基準に適合すると認める審査書を正式決定した。
しかし、日本原燃は、「MOX燃料工場の完成目標時期を2022年度上期から2024年度上期に2年延期すると発表した。7回目の延期になる。
「MOX燃料」を軽水炉で使用する「プルサーマル」について、大手電力でつくる電気事業連合会は2020年12月17日、新たな計画を発表した。これまで「16~18基」としていたプルサーマルを導入する原発の目標数を、「2030年度までに少なくとも12基」へと事実上、下方修正した。
現在、プルサーマル炉で再稼働しているのは4基(高浜3,4号、伊方3号、玄海3号)だけで、未稼働で利用可能なのは他に5基(浜岡4号、島根2号、泊3号、女川3号、柏崎刈羽3号)の合計9基、他に建設中の大間原発 があるが、12基稼働の目途は立っていない。
2020/5/15 原燃・再処理工場の安全基準「適合」へ
日本はプルトニウムを再処理して分離している唯一の非核保有国 で、既にMOX燃料として 24.3トンを持つが、六ケ所村再処理工場がフル稼働すると年間6.6トンのプルトニウムが追加される。
45.5トンのうち、英国の21.2トンは、MOX燃料製造工場が閉鎖されているため、プルトニウムでの保管であり、英国は2011年に、日本が処分費用を払えば英国にある日本のプルトニウムを引き取って英国自身の100トン以上のプルトニウムとともに処分してもよいと提案した。
電気事業連合会の予測では、2030年度までに少なくとも12基稼働するとして、プルトニウム利用量は、2024年度 0.7トン、2025年度1.4~2.8トン、2026~30年度 約6.6トンに過ぎない。
仮にこれが実現しても、既存のMOX燃料(日本にプルトニウム換算8.9トン、フランスに15.4トン)はそのまま、残り続けることとなる。
原発の新増設がなく、いずれ原発はゼロになるとすると、核燃料サイクルは続ける意味はない。
そもそも、核燃料サイクル構想は1990年代に始まったもので、当時は原子力発電所の新増設が検討され、かつ、ウランの入手が埋蔵量の問題から今後難しくなるとの予想があった。
この想定が変った。なお、MOX燃料のコストはウランの9倍との試算も報告されている。
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自民党内のリプレース推進派は、リプレースを主張するとともに、再処理をしなければ各原発で使用済み燃料が溢れ、止めざるを得なくなると訴えている。
現在、各原発で使用済み燃料の保管能力が無くなりつつある。これも最終処分を決めないまま、原発を建設した咎めである。
このため、対策として各原発は乾式貯蔵施設を敷地内に建設しつつある。最終処分が決まるまでの仮の措置としているが、実際には長期間の保管が可能であるとされる。
乾式貯蔵は1980年代にできた技術で、安全性は問題なく、空気が循環するだけで冷却できる。再処理をやめた米国では、原発の廃棄物はすべてこの方式で処理しているが、何の問題も起こっていないという。
2019年11月時点での各原発の使用済み燃料貯蔵量と対策は次の通り。
貯蔵能力 | 貯蔵量 | 乾式貯蔵 |
余裕年数 |
|||
対策前 | 対策後 | |||||
伊方原発 | 930t | 710t | +500t | 約6年 | 約29年 | 2020/6 規制委、設置許可発出決定 |
玄海原発 | 1,190t+290t | 980t | +440t | 約5年 | 約21年 | プール内の核燃料の間隔を詰める「リラッキング」+290tは着工済み 2021/3/17 規制委、乾式貯蔵の審査書案了承 |
東海第二 | 260t+180t | 370t | +70t | 約3年 | 約6年 | 既存能力の180tは乾式貯蔵 設置許可済み |
浜岡原発 | 1,300t | 1,130t | +400t | 約2年 | 約8年 | |
むつ 中間貯蔵施設 |
+3,000t (最終 5,000t) |
2020/11 規制委、事業変更許可発出を決定 |
https://www.enecho.meti.go.jp/about/special/johoteikyo/kanshiki_tyozou.html
なお、核燃料サイクルを止める場合、各原発での保管に加え、「原料用」として六ケ所村に送っている約3000トンの使用済み核燃料の扱いが問題となる。原料として使用しない場合、各原発に送り返すこととなる。
青森県六ケ所村議会は2012年9月、政府が原子力発電所から出る使用済み核燃料の再処理から撤退する場合、村内に保管されている使用済み核燃料などをすべて村外に搬出するよう求める意見書を全会一致で採択した。
各原発での貯蔵量に加え、この分の対策を考える必要がある。
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