ドイツ連邦下院議会選挙(総選挙)は9月26日に投開票された。
速報は下記の通りで、社会民主党がメルケル首相のキリスト教民主・社会同盟(CDU/CSU) を抑えてトップとなり、環境政党の「緑の党」が第3党に躍進した。
社会民主党の首相候補のOlaf Scholz 副首相兼財務相の勝利である。キリスト教民主同盟のArmin Laschet 党首のミスが響いた。
2021/9/4 メルケル首相後任は?
しかし、社会民主党も206議席で過半数(368議席)には遠く及ばない。当然、連立しかあり得ないが、現在連立を組んでいるCDU/CSUと社会民主党はともに首相候補を出して争っており、少なくとも当面は連立を組む気はないとされる。
その場合、両党が他の1党と組んでも多数決に達しないため、どちらかが主導の3党連合となる可能性が高い。
但し、「ドイツのための選択肢」は極右政党であり、左派党は旧東独の共産党系で、いずれも連立を組みにくい。(社会民主党のScholz候補はテレビ討論で連立を完全には否定しなかった。)
どちらの党が緑の党と自由民主党の両方を取り込むかがキイになるとみられる。
付記 各党のシンボルカラーから3党連立の名前が付けられた。
社会民主党(赤)、緑の党(緑)、 自由民主党(黄)は交通信号機の色から「信号連立」
CDU/CSU(黒)、緑の党(緑)、 自由民主党(黄)はジャマイカの国旗の色から「ジャマイカ連立」と呼ばれる。
しかし、緑の党も首相候補を出して争っており、連立を組むためには厳しい条件を出すと思われる。
自由民主党も、増税せず、政府借り入れに対する憲法上の制限を復活させることを公約に掲げており、簡単には連立に応じないと見られる。
3党連立が成り立った場合、いろいろの政策でどのように折り合うか、想像しにくい。
付記 社会民主党、緑の党、自由民主党は10月15日、連立交渉に入ることで合意した。
前回も、当初、社会民主党が連立を離脱、CDU/CSUは緑の党、自由民主党との3党連立を協議したが、自由民主党が協議から離脱したため2党では過半数に達せず、すったもんだの結果、半年後の翌年3月に元の社会民主党との連立にこぎつけた経緯がある。
2018/3/17 メルケル首相 再選
今回も決着までに数カ月かかると見られている。最終的には前回同様、3党連合が成り立たず、CDU/CSUと社会民主党の連立になる可能性もある。
連立が成り立ち、次期首相が決まるまでは、メルケル首相が続けることとなる。
第一次 2005/11 |
第二次 2009/10 |
第三次 2013/12 |
第四次 |
今回 |
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2017/9 |
2018/3 | 2021/9 | 首相候補 | ||||||||
キリスト教民主同盟 | キリスト教 民主・社会同盟 (CDU/CSU) |
連立 | 連立 | 連立 | 245 | 連立協議 | 連立 | 196 | Armin Laschet 党首 | ||
キリスト教社会同盟 | |||||||||||
ドイツ社会民主党(SPD) | 連立 | 連立 | 152 | 離脱 |
→ |
206 | Olaf Scholz 副首相 兼財務相 |
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緑の党 | 67 | 協議 | 118 | Annalena Baerbock 共同党首(女性) |
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自由民主党(FDP) | 連立 | 80 | 協議 | 離脱 | 92 | ||||||
ドイツのための選択肢(AfD) | 87 | 83 | (極右政党) | ||||||||
左派党 | 69 | 39 | (旧東独共産党系) | ||||||||
無所属 | 9 | 1 | |||||||||
合計 |
709 (過半数は355) |
735(過半数 368 ) |
ドイツ下院は4年ごとに総選挙で、法定定数は598議席で、うち小選挙区は299議席となっている。それなのに、前回は709議席、今回は735議席となったのにはドイツ独特の仕組みがある。
下院選挙の仕組み
有権者は比例で政党に、小選挙区では候補者に1票ずつ投じる。
・ 小選挙区の最多得票者が当選
・ 全体議席を政党名簿投票の結果で各政党に配分
但し、政党名簿投票で有効得票総数の5%以上を獲得 or 小選挙区で3名以上の当選者を出した党に配分する。
・ 配分議席数から小選挙区当選者数を除いた数を比例当選者数とする。
但し、小選挙区当選者の数の方が多い党が出た場合、計算上は小選挙区当選者を落とすことになるが、超過分を取り消さない。
この場合、当選者比率が投票結果の比率を上回ることになる。このため、議席配分の比率を守るために議席数を増やす。
例 開票結果が下記の通りであったとする。
A党 B党 国民の選択 小選挙区当選 60議席 190議席 政党得票比率 20% 30% 総議席 598 119議席 179議席 差引比例議席 49議席 -11議席
この場合、B党は小選挙区で190議席をとりながら、総議席では179議席となり、小選挙区で選ばれた議員を11名やめさせることとなる。有権者は小選挙区での190議席を選ぶとともに、B党に全体の30%を与えたが、これを否定することになる。
国民が選んだ190議席と30%の両方を満足させるには、総議席を増やすしかない。B党だけ増やすと他の党の比率が変ってしまうため、全党に適用する。
この結果、次の通りとなる。(端数の扱いを無視している)
A党 B党 小選挙区当選 60議席 190議席 政党得票比率 20% 30% 総議席 633 126議席 190議席 差引比例議席 66議席 0議席
小選挙区では小差であっても1位の得票者のみが選ばれるため、小選挙区の当選者の比率が全体の政党得票比率と大きく異なることがある。
このため、この調整が必要になる。
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