田辺三菱製薬は9月30日、連結子会社のカナダのMedicagoが開発しているCOVID-19の植物由来のウイルス様粒子ワクチン(開発番号:MT-2766)について、10月2日より日本において第1/2相臨床試験を開始すると発表した。2022年3月までに日本での承認申請をめざす。
付記
田辺三菱製薬は12月17日、 カナダにおいて承認申請を実施したと発表した。
Medicagoは植物由来のウイルス様粒子(VLP:Virus Like Particle)技術を用いた新規ワクチンの研究開発に特化したバイオ医薬品会社で、遺伝子操作によって植物の細胞内にVLPを生成させ、効率的に抽出・精製する独自技術を有している。
田辺三菱製薬は2013年7月12日、Philip Morrisと共同で、カナダのMedicago Inc.の全株式を取得することで同社取締役会と合意したと発表した。
両社は買収後のMedicagoを、田辺三菱60%、Philip Morris 40%のJVとして運営する。報道では現在の出資比率は田辺三菱が67%、Philip Morrisが33%となっている。
2013/7/19 田辺三菱製薬、カナダ医薬品会社Medicagoを子会社化
Medicagoは下記の技術を持つ。
Proficia™ 植物の葉でのワクチン製造
2016/2/26 田辺三菱製薬、タバコの葉からインフルエンザワクチン
VLP 遺伝子情報を持たないウイルス様粒子(体内でウイルスの増殖がなく安全性に優れる)
VLPExpress™ 新ワクチンを早く見つける手法
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ワクチンは毒性を弱めた微生物やウイルスを使用、弱い病原体を注入することで体内に抗体を作り、感染症にかかりにくくする。
但し、弱いとはいえ病原体を接種するため、まれに体調が崩れることがある。ウイルスはcapsid というたんぱく質でできた殻の中に、遺伝子(DNAやRNAなどの核酸)を収めている。
ウイルス様粒子(VLP)は、capsidの殻を持つため、生体はこれを認識して免疫反応を起こし、通常のウイルスに対するのと同様に抗体をつくって攻撃を仕掛ける。遺伝子情報を持たないため体内でウイルスの増殖がなく、安全性にも優れる有望なワクチン技術として注目されている。
一般にワクチンは受精卵などに接種し増殖させるが、Medicagoは生育の早いタバコ属の植物からワクチンをつくる技術の開発を進めている。
植物の細胞内に遺伝子操作によってVLPを生成させ(Proficia technology) 、効率的に抽出・精製する独自技術で、VLPを安価に短期間で大量に製造することを可能としている。植物からヒト用のワクチンをつくる初の事例になる。
生育が早い植物を使うため、5~8週間で効率的に生産でき 、「コストを抑えられる見込み」。新たな変異ウイルスへの対応を巡っても、最短6週間程度というファイザー製などに迫る。
2~8℃度で冷蔵保存できる ことも利点である。
田辺三菱製薬は2020年7月15日、カナダのMedicagoが、新型コロナウイルス感染症用のワクチンの第1相臨床試験を開始したと発表した。
第1相臨床試験では、①単剤、②GlaxoSmithKlineのアジュバントまたは③Dynavax社のアジュバントを添加したワクチンを、3用量(3.75、7.5、15 micrograms)のグループにわけて、21日間隔で2回接種し、安全性と免疫原性を評価したが、最終的にGlaxoSmithKlineのアジュバントを添加することとした。(既報のSanofiワクチンもGSKのアジュバントを使っている。)
2020/7/17 田辺三菱製薬、カナダ子会社の新型コロナウイルスワクチンの第1相臨床試験開始を発表
カナダ、米国、英国、ブラジル、アルゼンチン、メキシコで約24,000人の治験参加者を対象にした第2/3相臨床試験の第3相パートの投与を終了し、現在結果を解析している。
海外で実施した試験および本試験のデータを用いて、早期の日本における承認取得をめざす。
新しい技術のため、有効性、安全性が明確に示せるかどうかが課題となる。
国内の承認申請時までに米国、英国、カナダ、ドイツ、フランス」のいずれかで承認又は緊急使用許可(EUA)が取れていると「特例承認」が得られる。
Medicagoは2024年までにカナダと米国で合計年10億回分の生産能力を確保する。カナダ政府と最大7600万回分を供給する契約を結んでおり、2021年末までの実用化をめざす。
日本でも需要を見極めたうえで国内生産を検討する。
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