ENEOSホールディングスは10月11日、子会社のENEOSがジャパン・リニューアブル・エナジー(JRE)の全株式取得を決定したと発表した。
Goldman Sachsのアセット・マネジメント部門が運用するインフラファンド及びシンガポール政府投資公社のGICから買収する。取得価額は2000億円で、2022年1月下旬ころに譲渡を受ける。
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ジャパン・リニューアブル・エナジー(JRE)は、2012年8月にGoldman SachsのGS Renewable Holdingsにより設立された。
これから大きく成長すると見られている産業分野に、自分たちでニュービジネスを立ち上げるという考えによるもの。
再生可能エネルギーについては、社内に The Goldman Sachs Alternative Energy Investing Groupを持ち、 いろいろな活動をしている。
日本で再生可能エネルギーへのニーズが高まる中、大規模かつ長期的にクリーンエネルギーを提供するため、長期投資を視野に入れ、再生可能エネルギー事業を専門に行うJREを立ち上げた。
* Bloomberg のインタビュー記事 Goldman Rocks Japan Solar With New-Style Securities
2013年12月に、森トラストグループの森章代表が率いるMAプラットフォームがGS Renewable Holdingsへの資本参加を決めた。
シンガポールの政府系投資会社GICは2017年10月、GS Renewable Holdingsの株をMAプラットフォームから入手した。取得価額は百数十億円とされる。
GICは、旧称 Government of Singapore Investment Corporation で、シンガポール政府の投資会社の一つ。(他に、Monetary Authority of SingaporeとTemasekがある。TemasekはSingaporeの古称で「海の町」の意味)
GICはホテルなど多くの日本の不動産に投資しているが、日本のインフラ、再生エネルギーへの最初の投資である。
日本の再生エネルギー買い取り制度は国際的にみて割高で、認定済みの施設には長期間、好条件の買い取り価格が約束されるほか、今後建設する発電施設もパネル設置や運営コストを削れば、十分採算があうとみた。
現在のGS Renewable Holdingsの株主はGoldman Sachsが75%、GICが25%となっている。両社とも売却で膨大な利益を得ると思われる。
ジャパン・リニューアブル・エナジーの事業の状況は次の通り。
設備容量
運転中 建設中 合計 太陽光 43件 346,585kW 6件 273,715kW 49件 620,300kW 陸上風力 4件 48,200kW 6件 184,200kW 10件 232,400kW バイオマス 1件 24,400kW 1件 24,400kW 合計 48件 419,185kW 12件 457,915kW 59件 877,100kW
詳細は https://www.jre.co.jp/business/list/
再生可能エネルギーの主力電源化に向けた切り札として普及が期待されている洋上風力発電においても、「洋上風力の産業競争力強化に向けた官民協議会」のメンバーとして、風況観測や建設計画策定等の事業化検討に積極的に取り組んでいる。
年間売電量 598百万kwh 一般家庭約136千世帯分の年間消費電力量相当
ENEOSグループは、2040年長期ビジョンにおける「ありたい姿」として、「アジアを代表するエネルギー・素材企業」、「事業構造の変革による価値創造」、「脱炭素・循環型社会への貢献」を掲げ、石油精製販売をはじめとする基盤事業のキャッシュフロー最大化を図りつつ、石化、素材、次世代型エネルギー供給、環境対応型事業といった成長事業への戦略投資を積極的に進めている。
「脱炭素・循環型社会への貢献」については、2040年に自社排出分のCO2についてカーボンニュートラルを達成することを目標としており、2022年度末までに、国内外における再生可能エネルギー事業の総発電容量を100万kW超に拡大することを目標としている。。
JRE全株式取得後のENEOSの国内外における運転中・建設中の再生可能エネルギーの総発電容量は、 約122万kW(2021/9時点)となる。今後、ENEOSはエネルギー事業者としての知見と、JREの事業開発能力を結集して、日本を代表する再生可能エネルギー事業者を目指す。
また、将来的には、発電量が変動する再生可能エネルギー電源を、蓄電池や電動車両(EV)を用いて最適に制御するエネルギーマネジメントシステムと組み合わせることにより、CO2フリー電気を安定的かつ効率的に供給できる体制を構築する。現在、ENEOSグループが進めている将来のCO2フリー水素サプライチェーン構築への貢献が期待できるとしている。
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