台湾の鴻海、米EV新興Lordstown Motors の工場買収

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台湾の電子製品受託生産大手、鴻海精密工業(Foxconn)は9月30日、米新興電気自動車メーカーLordstown Motors Corp が保有する組立工場を2億3000万ドルで買収し、新型ピックアップトラックの生産を引き継ぐと発表した。今後6カ月以内に契約完了を目指す。

Lordstown Motors は経営の混乱からEVの自社生産を断念し、鴻海に生産を委託する。鴻海にとっては米国初のEVの生産拠点となる。

基本合意は次の通り。

鴻海は2億3000万ドルで工場を買収する。ハブモーター組立ライン、バッテリーモジュール、梱包ラインなど一部の資産や、特定の知的財産権は含まれない。

鴻海は5000万ドル分のLordstownの普通株も購入する。

鴻海がLordstownのフルサイズのピックアップトラックEnduranceを同工場で組み立てるための受託生産契約を交渉 (この契約締結が工場購入の条件)

鴻海は、EVメーカーFisker Incと提携しており、同社からも生産を受託する。

鴻海とFiskerは本年5月、Project PEARというプログラムで新しいEVを共同開発・生産する契約を交わした。Personal Electric Automotive Revolutionの頭文字を取っているプロジェクトPEARの車両はFiskerブランドとして北米、欧州、中国、インドで販売される。
生産準備は米国で2023年末までに始まる予定で、2024年に本格生産に入る。

鴻海はEV事業の本格参入を目指し、「全世界に工場を造る」(劉董事長)としている。7月には、米国ではウィスコンシン州と立地協議を進めていると公表していたが、その後、交渉難航が伝えられ た。、

今回、戦略を変更し、Lordstownの工場買収に踏み切った と見られる。劉董事長は、今回の合意について、鴻海が「北米でEVの生産能力を前倒しで確保する目標」の達成に寄与すると述べた。

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GMは2018年に3つの工場の閉鎖と、ミシガン州Hamtramckの工場をEVトラックの生産に切り替えることを発表した。
その後、全米自動車労組(UAW)との協議が長引く中で長期のストライキもあったが、2019年秋に合意にこぎつけ、工場の再編計画が具体的に動き出した。

その一環として、GMはオハイオ州 Lordstownの自動車生産工場を閉鎖し、設備の一部をEVトラック専業の地元のスタートアップ企業Lordstown Motors に売却した。


Lordstown Motorsは2021年後半から、Lordtownの旧GM組立工場でピックアップトラック「Endurance」の生産を開始する計画を立てていた。

2021年1月にLordstownのEnduranceの予約注文が10万台に達したと発表されたが、2021年3月に空売り筋のHindenburg Research(以前に Nikola Motorに関して「試作品と技術が全て偽の詐欺企業」と発表)がLordstown Motorsについて、「収益も販売可能な製品もない会社であり、その需要と生産能力の両方について投資家を欺いていると考えられる」と発表した。

その2カ月後、Lordstownは、「資金不足のためEnduranceの生産台数が約2200台からわずか1000台に半減する可能性が高い」と報告した。

同社は本年6月、米証券取引委員会への届け出で「Going Concernの前提に疑義が生じている」と開示した。初のピックアップトラック開発に必要な現金が不足する恐れがあり、資本を追加調達できなければ向こう1年以内に存続できなく可能性があると説明した。

6月14日にCEOとCFOが直ちに辞任したと説明した。自動車の予約注文に関する発表の一部に不正確な内容が含まれていたことも明らかにした。

その後、投資会社Yorkville Advisorsが運用するヘッジファンドが、3年間で4億ドル相当の株式を購入することに合意したことが7月26日に明らかになった。

しかし、自社生産を諦め、鴻海に生産委託することとしたもの。

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「全世界に工場を造る」とする鴻海精密工業は2021年1月、中国の電気自動車の新興メーカーである拝騰(Byton)と提携し、EVの量産に乗り出すと発表した。2022年1~3月期の量産を予定する 計画であった。

拝騰(Byton)は南京が拠点で、2020年1月にSUVの量産モデル「M-Byte」を発表、"Tesla Killer"、"Red Killer" と呼ばれた。

丸紅は2020 16日、拝騰との資本業務提携を発表した。戦略的パートナーとして、モビリティ事業EV バッテリーマネジメント事業、海外事業を中心に協業するとした。

しかし、直後から資金繰りが悪化し、2020年夏に事業停止に追い込まれた。

拝騰は2021年1月に鴻海との提携を発表したが、再度資金繰りが悪化、一部の債権者が7月に南京市の裁判所に「破産重整」と呼ばれる再建型の倒産手続きを申し立てた。

拝騰は鴻海と提携する一方で、2020年9月に設立した関連会社「盛騰汽車」にEVの開発や生産などの主要な事業を移管している。 これには中国国有自動車大手、中国第一汽車集団などが出資しており、盛騰のEV関連事業は継続するとみられる。

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