あぶらとり紙でパーキンソン病を早期診断

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順天堂大学、花王、㈱ Preferred Networksらの研究グループは9月11日、パーキンソン病 患者皮脂中のRNA(リボ核酸)に病態と関連した特有の情報が含まれることを発見したと発表した。さらに皮脂RNA情報を用いた機械学習モデル がパーキンソン病の診断方法になりうることを明らかにした。

将来的にはあぶらとりフィルムで顔の皮脂を拭き取るだけで、疾患の早期診断につながる技術の確立を目指す。

パーキンソン病は日本で2番目に多い神経変性疾患で、運動に関する症状や自律神経障害、認知機能低下が徐々に進行する。

現在のところパーキンソン病を根治するための治療方法は存在していないが、早期に確定診断を行ない、適切な治療を継続することで症状をコントロールすることができるため、より簡便な検査方法が求められている。

パーキンソン病では皮脂の増加を伴う脂漏性皮膚炎などいくつかの皮膚症状が高頻度に併発することが知られているため、「皮脂にはパーキンソン病と関連した情報が含まれる」との仮説を立て、共同研究を実施した。

花王はヒトの皮脂に含まれるRNAを解析する独自の技術を開発し、2019年に機械学習や深層学習などの人工知能関連技術を保有するPreferred Networksと共同研究を始めた。

今回、パーキンソン病患者の病状を正確に反映するバイオマーカーを探索する順天堂大学も参加し、早期診断への応用を目指す研究を進めた。

あぶらとりフィルム1枚を用いて顔全体から皮脂を採取し、採取した皮脂からRNAを抽出し、次世代シーケンサーを用いて網羅的にRNA発現量を測定した。

皮脂RNA解析の結果、パーキンソン病の病態と密接に関係するミトコンドリア に関連した複数のRNAが増加する傾向が示された。

次に、皮脂RNAの情報と機械学習モデルによってパーキンソン病を判別できるか検証した。

その結果、皮脂RNAに含まれる情報を用いて機械学習モデルを構築することで、パーキンソン病を精度よく判定することができることが示された。

但し、パーキンソン病の診断は、鑑別しなければならない類似の疾患が存すること、皮脂RNAの変化に関しても日々の生活などの外的要因が完全には精査されていないといった課題がある。

研究グループでは、類似の疾患との鑑別診断が可能な機械学習モデルの構築や、精度向上のために制御が必要な日常生活の影響について検討を続けており、パーキンソン病の新たな検査方法の開発を目指している。

本研究成果は、英国科学雑誌の「Scientific Reports」誌のオンライン版に9月20日付で公開された。

Non-invasive diagnostic tool for Parkinson's disease by sebum RNA profile with machine learning

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