中国財政部は10月13日、財庫〔2021〕35號 「政府調達活動における国内外資本企業の平等な扱いの関連政策に関する通知」を発表し、政府の各レベルの予算担当機関に対し、政府調達において中国国内に設立された国内資本企業と外資系企業を平等に扱うよう求めた。10月25日に発表した。
中国の政府調達の規模は2020年に約3兆7000億元(約66兆円)に達した。国内総生産(GDP)の3.6%に相当する。
中国の「政府調達法」では地方政府や国有企業に対し、原則として中国で生産した製品やサービスを購入するよう規定しているが、これまで日本企業からは「中国で製品を作り、価格も中国企業と同水準で入札に応じたのに、競り負ける例がある」との不満が上がっていた。
中国は9月にCPTPPに正式に加盟申請した。CPTPPでは、政府調達で国内外企業の差別を原則的になくすよう求めている。
CPTPP 政府調達
各締約国(その調達機関を含む)が、個別の「対象調達」を実施するにあたり服する手続的規律
一般的原則(15.4 条)
・ 他の締約国の物品及びサービス並びに他の締約国の供給者に対し、即時にかつ無条件で、(a)国内の物品、サービス及び供給者並びに(b)当該他の締約国以外の締約国の物品、サービス及び供給者に与える待遇よりも不利でない待遇を与える(15.4 条1 乃至3 内国民待遇及び無差別待遇)。
・ 調達機関は、供給者の資格の審査(15.9 条)又は限定入札(15.10 条)の規定が適用される場合を除くほか、対象調達について公開入札の手続を用いる(15.4 条 4 調達の方法)。
・ 物品に関する対象措置について、通常の貿易において当該物品について適用する原産地規則を適用する(15.4 条5 原産地規則)。
・ 調達のいかなる段階においても調達の効果を減殺する措置を求める等してはならない(15.4 条6 調達の効果を減殺する措置)。
・ 調達に関する情報の公表、公示等が電子的手段により行われる機会を提供するよう努める(15.4 条8 及び9 電子的手段の利用)等
中国政府は、加盟交渉入りをにらみ、政府調達で外資企業が受ける差別的措置の是正を行ない、CPTPPの条件を満たす狙いがある。
「政府調達活動における国内外資本企業の平等な扱いの関連政策に関する通知」の内容は以下の通り。
統一された、開かれた、競争力のある秩序ある政府調達市場システムを構築し、政府調達における公正な競争を促進するために、政府調達活動において中国に設立された国内外の資金提供企業の平等な扱いに関する以下の事項をここに通知する。
1.政府調達への国内外の企業の平等な参加の確保
法律に従い、政府調達は、中国の国内および外資系企業によって生産された製品(サービスを含む)を平等に扱うものとする。
すべてのレベルの予算部門は、「中華人民共和国の政府調達法」および「中華人民共和国の外国投資法」およびその他の関連法規を厳格に実施するものとする。
国家安全保障と国家機密に関するものを除き、中国で生産された製品は、その供給者が国内資本か外国資本の企業であるかどうかに関係なく、法律に従って対等な立場で政府調達活動に参加する権利を保証する。2.政府調達活動において国内外の企業を平等に扱うという要件を実施する
政府調達活動において、すべてのレベルの予算単位は、政府調達情報の公開、サプライヤー資格決定、資格レビュー、および評価基準に関して、国内資本企業または外国資本企業に異なる、または差別的な扱いを適用してはならず、使用してはならない。
所有権、組織形態、株式保有構造、投資国、製品ブランド、およびその他の不合理な条件により、国内外の企業間の公正な競争を効果的に確保することは禁止する。3.国内外の資本の企業の正当な権利と利益を等しく保護する。
政府調達活動において、調達書類、調達プロセス、落札または取引結果が彼らの権利と利益を害したと信じる国内外資本の企業は、関連する規制に従って質問や苦情を提起することが出来る。
すべてのレベルの財務部門は、「政府調達の質問および苦情措置」を厳格に実施し、苦情チャネルを開き、法律に従ってサプライヤーからの苦情を受け入れ、公正に処理するものとし、扱いで差別をしないものとする。
この通知の要件に違反する規制および慣行、ならびに製品、サプライヤーおよびその他の選択のためのデータベース(注 あらかじめ調達元候補を絞ったリストなど)、および規制に違反するその他の規制および慣行の確立などの規制および慣行については、すべての地域が整理しなければならない。適時にそれらを整理して修正し、11月末までに財務省に提出する。
地方政府の中には、外資を事実上締め出すために、あらかじめ調達元の候補を絞ったリストを作成する動きもある。
「通知」では、これらと修正し、11月末までに修正状況を報告することを要求している。
問題点は例外処理で、「通知」では「国家安全保障と国家機密に関するものを除き」としており、定義が曖昧なままだと、例外規定を恣意的に運用する可能性が残っている。
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