三井化学と韓国の SKC Co., Ltd.は9月30日、ポリウレタン原料事業を統合したJVのMitsui Chemicals & SKC Polyurethanes Inc.の合弁契約を解消する と発表した。
両社は2015 年 7 月に両社のポリウレタン原料事業を統合し、成長市場の需要獲得、新規事業のグローバルな展開、収益性の向上を目指して、シナジーの最大化を図りながら共同運営を 行なってきた。
しかし、両社の考え方の違い(三井化学は高機能品・バイオ製品等により着実に収益を向上させていく方針、SKCはグローバル進出などの成長を重視する方針 )の間で徐々に齟齬を来すようになり、 合弁解消を決めた。
後記の通り、JV設立に当たり、三井化学の事業は海外事業を含め合弁会社Mitsui Chemicals & SKC Polyurethanesの100%子会社としていた。
このため、解消に当たり、100%子会社を三井化学が引取り、これを除いた合弁会社をSKCのものする。
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三井化学は2001年4月に自社の事業と武田薬品の事業を統合し、三井武田ケミカルとした後、2006年4月に三井化学ポリウレタンと改称、2009年4月1日に吸収合併した。
2013年時点でのポリウレタンの状況は次の通り。(単位:t /年)
TDI | MDI | PPG | ||
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大牟田工場 | 旧 三井化学 | 120,000 | 60,000 | - |
鹿島工場 | 旧 武田薬品 | 117,000 | - | - |
錦湖三井化学(韓国) | 錦湖石油化学 | - | 200,000 | - |
名古屋工場 | 旧 三井化学 | - | - | 57,000 |
徳山分工場 | 旧 武田薬品 | - | - | 50,000 |
千葉ポリオール(日本曹達10%)のPPG 28千トンを2012/6に停止している。
三井化学は2014年2月6日、ポリウレタン材料事業とフェノール事業、高純度テレフタル酸(PTA)の再構築を発表した。
TDI 及びMDI事業は、中国を中心とするアジアでの大規模な新増設による市況悪化のため収益が低迷している。
同社のウレタン部門の営業損益は2012年度が -26億円であったが、2013年度は -52億円と悪化している。
今回、汎用ウレタン原料は、国際競争力が劣位の鹿島TDI、大牟田MDIを2016年12月末に停止し、国際競争力を十分有する他のプラントで、最適生産体制による同事業での勝ち残りを図る。
三井化学は2014年12月22日、韓国SKCとの間で両社のポリウレタン材料事業を統合する合弁契約を締結したと発表した。
ポリウレタン材料の総合メーカーとして、極東アジアから中国、ASEAN、欧州、米州まで、両社のネットワークを利用してグローバルに顧客に価値を提供する。
SKCは蔚山でポリオール原料のPOを生産しており、コスト競争力がある原料調達が可能になる。
三井化学は2015年3月23日、ポリウレタン材料事業の統合について、合弁会社の骨子を発表した。
合弁会社(韓国法人) Mitsui Chemicals & SKC Polyurethanes Inc.
その100%子会社(日本法人) 三井化学 SKC ポリウレタン
三井化学の事業を海外事業を含め、100%子会社とした。事業範囲 SKC側の事業はポリオール→システム製品のみで、三井側は全てを扱っている。
SKCは蔚山にPO/SM併産設備(180/400千トン)とEvonik/Uhde法の100千トンのHPPO processの2系列のPOプラントを持つ。
工場と製品 色塗り部分が三井化学に戻る。 数字は能力(千トン)
TDI MDI Polyol System 三井化学 大牟田 120
(受託)合
弁
会
社三井化学
SKC
ポリウレタン日本 徳山 40 旧 三井化学 名古屋 50 インド Vithai Castor Polyols 8 旧三井化学
子会社Jayant Agro-Organics 50%
伊藤製油 10%韓国 錦湖三井化学 麗水 610 Kumho Petrochemical 50% 中国 天津天寰ポリウレタン 天津 蝶理 14.9% 蘇州 佛山三井化学SKCポリウレタン 佛山 100% タイ Thai Mitsui Specialty Chemical 〇 Siam Resin and Chemicals 48% インドネシア MCNSポリウレタンインドネシア 〇 三井物産ケミカル 14%、Pintu Mas 5% マレーシア MCNSポリウレタンマレーシア 〇 Scientex 30% 本社直属 韓国 蔚山 180 旧 SKC
中国 Beijing Mitsui Chemicals &
SKC Polyurethanes〇 旧 SKC 100%子会社
米国 MCNS Polyurethanes USA 〇 ポーランド MCNS Polyurethanes Europe 〇 メキシコ MCNS Polyurethanes Mexico 〇 JV 設立後に設立、稼働
インド MCNS Polyurethanes India 〇 ロシア (計画) (〇) 現在、計画中
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三井化学は、当該ポリウレタン原料事業の構造改革を加速し、さらなる企業価値向上に努めるとしている。
なお、三井化学、SKC 両社は、本提携解消後も、今までの良好な関係性を踏まえ、必要な範囲で協力関係を続けていくともしている。
合弁解消の理由として、三井化学(高機能品・バイオ製品等により着実に収益を向上させていく方針)とSKC(グローバル進出などの成長を重視する方針 )の間で徐々に齟齬を来すようになったとしている。
汎用ウレタン事業については、三井化学は、国際競争力が劣位の鹿島TDI、大牟田MDIを2016年12月末に停止し、国際競争力を十分有する他のプラントで、最適生産体制による同事業での勝ち残りを図ることを決めている。これについてはSKCは事業をやっておらず、新規に工場を建設するという動きは全くない。両社とも現状維持と見られる。
残るのはシステム製品である。
これについては、SKCは蔚山に原料POの2工場とポリオール工場をもつ。既に中国、米国、ポーランドにシステム製品事業を単独で行なっていた。これを世界中に拡大しようというのは当然のことであろう。
JV設立後に、メキシコとインドで新工場を稼働、ロシア(サンクトペテルブルクの特別経済区)での投資を決めている。
JV設立時に 三井化学は、ポリウレタン材料の総合メーカーとして、極東アジアから中国、ASEAN、欧州、米州まで、両社のネットワークを利用してグローバルに顧客に価値を提供するとしている。
何故、SKCのグローバル進出などの成長を重視する方針 が受け入れられないのだろうか。
これは口実で、何らかの利害対立があるのだろうか。
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