ロシアの国営エネルギー大手Gazpromは9月10日、ロシア産天然ガスをドイツに運ぶパイプライン「Nord Stream 2」の完成を発表した。
Nord Stream -2 は全長約1200キロメートルで、サンクトペテルブルク北方のビポルクからバルト海海底約1200キロを通ってドイツ北東部グライフスバルトまでを結ぶ。輸送能力は年550億立方メートルで、ロシアの欧州へのガス輸出量の約4分の1に当たる。
2019/11/9 Nord Stream -2、年内完工へ
付記
ドイツ連邦ネットワーク庁は11月16日、「Nordstream 2 」の認証手続きを凍結すると発表した。
運営する事業会社の「Nordstream 2 AG」はGazpromの子会社で、スイスに本拠を置くが、連邦ネットワーク庁は書類審査の結果、ドイツの法律に基づいて組織された事業会社だけが認可手続きの対象になるとの結論を出した。Nordstream 2 AGはドイツの法律に基づく子会社を設立する方針で、子会社が改めて認可を申請する。
ドイツ経済省は11月26日、「Nordstream 2 」を承認してもEUへのガス供給を脅かすことはないと発表した。EU諸国との協議の上、分析結果を当局に提出したとした。「分析の結果、承認はドイツおよびEUへのガス供給の安全性を脅かすものではないと結論付けた」と指摘している。
経済省のガス供給に関する分析は当局が承認手続きを続けるための需要な要件となっている。
付記
ドイツのショルツ首相は2022年2月22日、ノルドストリーム2の認可手続きを停止する考えを表明した。ロシアがウクライナ東部の武装勢力が支配する地域を独立国家として承認し、派兵を決めたことを受け、事実上の制裁に踏み切る。
独経済省に対してガス供給に関する報告書を撤回するように要請したことを明らかにし「技術的に聞こえるが、これによってパイプラインは認可できなくなる」と説明した。
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パイプラインは欧州のロシア産ガスへの依存を高め、ウクライナを迂回するものと批判されている。ロシアによる2014年のクリミア半島併合以降、対立関係にあるウクライナは、ロシアがパイプラインを「危険な地政学的武器」として利用する可能性があると欧州に警告してきた。
トランプ前大統領はこの計画でドイツのMerkel 首相を批判していた。バイデン大統領もNord Stream 2は欧州にとって悪い取引だと信じていると語っていた。
しかし、バイデン大統領は5月25日、Nord Stream 2 計画の完了を容認する立場を表明した。
バイデン大統領は、「私は初めからNord Stream 2に反対してきた」と述べつつ、一方で、同プロジェクトは自身が大統領に就任した際にはほぼ完成していたと指摘した。その上で、「そのため、現在さらに制裁を科し続けることは、米国の欧州との関係の観点から非生産的となり得ると考えている」と発言した。
米国とドイツは7月21日、Nord Stream 2 の建設計画をめぐる合意を発表した。米独両政府の共同声明では、ロシアが天然ガスなどのエネルギーを、敵対関係にあるウクライナなど他国を揺さぶる「武器」として使用した場合、ドイツが独自の制裁措置をとるほか、EUにも制裁を働きかけることを明記した。
2021/5/28 米、ガスパイプライン計画「Nord Stream 2」を容認
欧州で天然ガス価格の高騰が止まらない。世界経済の回復によるエネルギー需要の高まりや風力発電の不振などが要因とみられる。
国際エネルギー機関(IEA)は9月21日、声明を出し、ガス価格上昇について解説した。
それによると、需要の回復、技術的問題などによる供給体制の混乱、異常気象などの要因が重なっている。昨年の欧州の冬が異常に寒く、しかも長期間続き、暖房需要が増えた。加えて、ここ数週間、風が弱く、風力エネルギーをいつものように利用できないでいるという問題もあるという。
Nord Stream -2 は完成したが、稼働にはドイツの独禁当局の承認を得る必要がある。障害は2019年のEUガス指令の改正である。
次の3つが条件となるが、2019年4月に欧州議会は、このルールをNordstream-2のような、第3国からEU圏へと入ってくるガスパイプラインへも適用する内容の指令を採択した。
(1)ガスの供給とガスの輸送を分離すること
(2)ガス輸送のために第三者にその利用を解放すること
(3)料金体系のドイツ規制当局による承認
(1) はEU域内の部分のみで、ドイツの領域の海底から上陸地点を経て既存のパイプライン網に至る接続部分に限り適用されるが、Gazpromが双方を担う現在の形態は認められない。
付記EU司法裁判所の法務官は10月6日、事業会社はガス指令について争う立場にないとの一般裁判所の判断を覆し、ガス指令の改正はそれ以前に建設が始まっていたノルド・ストリーム2だけが対象であることが実態であることなどを指摘し、事業会社にとってガス指令は直接的な関心事項であるとして、EU司法裁判所で争う立場にあることを認めるとともに、ガス指令の条件の適用の有無という問題の実質については一般裁判所に差し戻すべきとした。
これに対し、ロシア政府は早期稼働を求め、EUに対し圧力をかけている。
一部にはロシアが価格上昇を演出しているのではとの疑惑が出ている。
Gazpromは、供給契約で定められた約束は守っていると主張、欧州の大手ガス7社はGazpromが長期契約義務を果たしていると認めた。
プーチン大統領は10月21日、「ドイツの規制当局があす供給を許可すれば、その翌日には175億立方メートルのガスの供給が始まる」と述べた。また、ガス不足と価格高騰はEUのエネルギー政策の責任だと指摘した。
Nord Stream 2の運営会社は10月18日、2本あるパイプラインの1本目について操業開始に向けテクニカルガスを充填したと発表した。2本目のラインについても稼働準備が順調に進んでいる。
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