新型コロナウイルスの収束は「デルタ株のゲノム変異蓄積」?

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国立遺伝学研究所と新潟大のチームは、10月に開かれた日本人類遺伝学会で、新型コロナウイルスの流行「第5波」の収束には、流行を引き起こしたデルタ株でゲノムの変異を修復する酵素が変化し、働きが落ちたことが影響した可能性があるとの研究結果を 発表した。

ウイルスは増殖する際にゲノムを複製するが、複製ミスが時々起きて変異が生じる。変異が積み重なるとやがて増殖できなくなる 。

1971年にManfred Eigenが『エラー・カタストロフの限界(ミスによる破局)』を予言した。

しかし、新型コロナウイルスを含むコロナウイルスの仲間は、ほかのRNAウイルスにはない複製エラーを修復するための一群の酵素を持つことがわかっている。
重要なのは「nsp(non-structural protein)14」と呼ばれる切断酵素で、これはほかのRNAウイルスに比べて約3倍も長いゲノムのコロナウイルスが、長大なゲノムに生じる複製エラーを修復するために獲得したシステムと考えられている 。

このため、これまでは変異が起きてもnsp14により複製エラーが修正され、変異が積み重なって増殖できなくなるという 事態には至らないと考えられてきた。

チームは、新型コロナウイルスの流行「第五波」の収束には、流行を引き起こしたデルタ株で このnsp14酵素が変化し、働きが落ちたことが影響した可能性があるとする。

国立感染症研究所が公開する国内で検出した新型コロナのゲノムデータを分析したところ。第5波では、nsp14に関わる遺伝子が変化したウイルス の割合が感染拡大とともに増え、ピークの前から収束までの間は、感染者のほぼ全てを占めていた。

nsp14の遺伝子が変化したウイルスでは、変異を修正する機能が落ち、ゲノムの変異が通常の10~20倍あった。

チームは、nsp14 酵素の変化の理由として、人間の体内でウイルスに変異を起こして壊す「APOBEC」という酵素がnsp14を変化させたと推測している。東アジアやオセアニアでは、この酵素の働きが特に活発な人が多いという。

APOBECは人体にも悪影響を与える。これによるゲノム変異が発がんの原因の一つであるとされる。

この推定が正しいなら、新しい別のウイルスが入ってこない限り、第6波はないことになる。逆に、収まったからといって海外からの渡航を緩めると、新しいウイルスが侵入し、再度、蔓延することが十分考えられる。

海外で再度蔓延しているのは、そのためではないか。

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