サムスン電子、米テキサス州に半導体工場新設

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サムスン電子は11月24日、米国テキサス州Austin近郊のTaylor市に最先端の半導体工場を新設すると発表した。
建物、土地、工場設備などを含めた総投資額は170億ドルの見込みで、同社にとり米国最大の投資案件となる。

ホワイトハウスのSullivan大統領補佐官 (安全保障問題担当)と経済政策の取りまとめを担う国家経済会議のBrian Deese委員長は連名で 、「工場の新設はサプライチェーンの保護や製造拠点の活性化、国内の雇用創出につながる」と歓迎、「バイデン政権は二度と半導体不足に直面しないよう、製造能力の拡大をはかるため、同盟国や友好国、民間セクターに働きかけ続けてきた。中間層を支援し、長期にわたる競争力を強化するため、引き続きあらゆる手段で製造やテクノロジー分野に投資していく」と 述べた。

2022年前半に着工し、2024年後半の製造開始を目指す。2,000人以上のハイテク人材の雇用、数千人規模の間接雇用、工場建設で6,500人以上の雇用を見込む。

Samsungは「新工場では先端工程が適用される」としており、半導体性能を左右する回路線幅で3ナノ(ナノは10億分の1)メートルの次世代品を生産するとみられる。
同社が現在量産する最先端は5ナノ品で、2022年に韓国の工場で3ナノ品の生産を始める予定であるが、米国新工場でも同じ性能の半導体を量産する見通し 。

台湾のTSMCは米国アリゾナでは回路線幅が小さい最先端型の工場(5nm)を建設中で、更に3nmの工場の建設を計画している。

2021/10/18 半導体大手、台湾のTSMCが日本で工場建設 に記載

Samsungにとって半導体回路を形成する「前工程工場」の新設は2017年に稼働した韓国平沢工場以来で、6カ所目となる。新工場が稼働すれば、韓国3カ所、米国2カ所、中国1カ所の生産体制となる。

同社は本年5月の韓米首脳会談後、170億ドルを投資し、米国内の第2ファウンドリー工場を建設する方針を発表、 その後、テキサス州Austin、アリゾナ州の2カ所、New Yorkの計4カ所を候補とし検討してきた。

本年2月にテキサス州当局に提出した資料で、Austinと同市のあるトラビス郡から20年間で合計14億8000万ドルの税軽減措置を求めたことが判明した。

トラビス郡から今後20年間で100%の減税(7億1830万ドルの価値がある)を望んでおり、Austin市からの50%の減税(5年間で8720万ドル)も求めているほか、経済開発プロジェクトのための固定資産税の減税を与えることを可能にするテキサス税法の第313条の適用(推定2億5290万ドル相当)も要請しているという。

候補となっているニューヨークやアリゾナ州も不動産税の軽減措置を提供しているという。

最終的に、南西約25キロのAustin市内には1996年開設の同社半導体工場が既にあり、近接する両工場でインフラや資源を共有できる点が大きな決め手となった。

また、半導体産業の集積やインフラの充実度、地元政府の支援なども理由として挙げている。

Austin市周辺にはDell、Apple、Google、Facebookらハイテク企業が集積しており、Silicon Hillsと呼ばれている。最近ではOracleやTeslaがカリフォルニア州からAustinに本社を移転すると表明 している。

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Samsungの李在鎔副会長が11月14日、5年ぶりに北米に出張し、24日に帰国した。副会長は仮釈放中で、毎週木曜日に開かれる三星物産の合併・サムスンバイオロジックス不正会計疑惑関連の裁判に出席しているが、この時期は裁判がなく、海外出張が可能だった。新工場の発表は帰国後に行われた。

先ずModernaや世界トップの通信事業者Verizonの最高経営陣と会い、18日には米連邦議会を訪れ、半導体投資支援法案を担当する中心議員たちに会った。関連法案の可決などを巡る議会の協力を要請したという。

19日にはホワイトハウスの高官らと会い、半導体供給網問題の解決策や連邦政府レベルでの半導体企業向けインセンティブなどについて話し合った。

その後、西部に移動し、20日にMicrosoftのCEOと会って、半導体やモバイルだけでなく、仮想現実(VR)や増強現実(AR)、メタバースなど、浮上する次世代技術への協力やソフトウェア生態系の拡大について意見を交換、Amazon経営陣とは人工知能やクラウドコンピューティングなど、革新技術協力の拡大案について議論した。

韓国の財界関係者は、「特に今回の出張では、現地企業家だけでなく米国政界の中心人物たちと会って、グローバルサプライチェーン問題の解決および韓米友好増進に寄与するための民間外交官の役割を果たしたという点で、三星トップとしてさらに地位を高めた」と評価した。

米政府は半導体業界へ計520億ドルの補助金を拠出する方針。Samsung は補助金支給条件などを確認した上で、新工場建設を決定したという。

バイデン大統領は2021年3月31日、2兆米ドルを超えるインフラ投資計画 American Job Planを発表した。

そのうち、R&D、製造近代化、中小企業として5,800ドルが含まれている。
 R&D、未来の技術への投資 1,800億ドル
 製造業、中小企業活性化  3,000億ドル
 Workforce Development   1,000億ドル

大統領は、この中から、米国半導体業界の国内生産回帰の実現に向け、500億米ドルを割り当てることを明らかにした。
ホワイトハウスは、「超党派議員グループによって提唱されたCHIPS for America Act、
American Foundries Act of 2020 の要望に従い、半導体の製造および研究に資金を投入する指示も出している」と述べた。

2021/10/22 半導体供給問題:米国の場合 

但し、当初の計画は大幅に削減されており、半導体向けの分がいくら残ったのか明らかでない。

また、競合となる米Intel が外国企業への補助金支出に反対姿勢を強めており、Samsungが予定通り補助金を受け取れるか不透明な面も残る。

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