新たな変異株オミクロン

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南アフリカの専門家らは11月25日、少数ながら新型コロナウイルスの新たな変異株を検出したと発表した。

11月9日に採取された検体から最初の感染が確認された。11月24日にWHOに報告された。

この変異株は「B.1.1.529」と呼ばれ、体の免疫反応を回避したり、感染力を高めたりする可能性がある「非常に珍しい」変異を持つ。

生物情報学を研究するProf de Oliveira は25日の南アでのブリーフィングで、「B.1.1.529」には異例の多くの変異が生じており、これまでの例と「極めて明確に異なっている」と指摘した。

全体で50か所の変異があり、うち、スパイクたんぱくで32の変異がある。 ワクチンはこのタンパク質を標的にしている。

変異が多すぎ、当初の武漢株とは著しく異なっている。このため、当初のウイルスを前提にしたワクチンが効かない可能性がある。

英ロンドン大学遺伝学研究所の科学者によれば、免疫不全の人の慢性感染の過程で進化したとみられ、治療を受けていないHIV感染者だった可能性がある。南アのHIV感染者は820万人と世界最多である。

WHOは11月26日「B.1.1.529」をオミクロン(Omicron)と命名、最初からVOC(Variants of Concern:懸念される変異株)に追加した。

複数の変異について「うちいくつかは懸念すべきだ」と表明した。ほかの変異ウイルスに比べ再感染する可能性が高いとみられるという。

https://www.who.int/news/item/26-11-2021-classification-of-omicron-(b.1.1.529)-sars-cov-2-variant-of-concern

VOC(Variants of Concern):懸念される変異株

感染しやすい、重症化しやすい、ワクチンや治療薬が効きにくいことなどが既に実証されている変異株

VOI(Variants of Interest):注目すべき変異株

VOCよりは警戒度は低いが、市中において複数の感染例やクラスターが確認されている変異株

日本の国立感染症研究所は11月26日、感染・伝播性、抗原性の変化等を踏まえた評価に基づき、注目すべき変異株(VOI:Variants of Interest)として位置づけ、監視体制の強化を行うと発表した。 →11月28日にVOCに引き上げた。

ーーー

医療機関からの初期情報によると、この変異株は国内最多の人口を有する南アフリカの北部ハウテン州(Gauteng Province:州都はヨハネスブルグ)で急速に感染を拡大させている。他の8州にもすでに感染が及んでいる可能性があるという。


南アで確認された症例は約100例。ボツワナ(南アの北側、ハウテン州に近い)と香港でも確認されている。研究者によると、ハウテン州の新規感染者は90%がこの変異株への感染である可能性もある。

香港に到着した旅行者2人から「B.1.1.529」が検出された。香港政府が11月25日遅くに明らかにした。

1人は南アからの帰国者だが、もう一人はカナダからの帰国者で、向かいの部屋に隔離されていた。南アからの帰国者がマスクなしでドアを開けた際に、空気感染したと見られる。2人ともワクチンを2回接種している。2つの部屋と、同じ階の廊下と共用エリアの環境から陽性の検体が採取された。

ヨーロッパでも初めてベルギーで感染者が見つかり、既に世界に広がっている可能性も出てきた。

感染したのは若い成人女性で、ワクチンを接種しておらず、体内に抗体ができる感染歴もなかった。
11月11日にエジプトからトルコ経由で戻った。南アや近隣国との直接的なつながりはないという。
イスラエルの感染者はアフリカ南部マラウイからの渡航者だった。
イスラエルの感染者はアフリカ南部マラウイからの渡航者だった。

イスラエルでも見つかった。マラウイ(モザンビークの北)からの渡航者だった。他に感染した可能性の高い人が3人いるという。 (本稿作成は11月28日朝だが、その後、各国で多数が発見されている。)


英政府は11月25日、新たな変異株に対する懸念を理由に南アなど一部のアフリカ諸国からの航空便を一時禁止すると発表した。

日本政府は11月26日、新型コロナウイルスの新たな変異株が南アフリカで発見されたことを受け、水際対策を強化 した。

強化する対象者は南アフリカやナミビア、ジンバブエ、ボツワナ、レソト、エスワティニの6カ国からの入国者や帰国者で、指定の場所で10日間の待機を義務付ける。
27日には、モザンビーク、マラウイ、ザンビアのアフリカ3カ国を水際強化の対象に追加した。

付記  岸田首相は11月29日、全世界からの外国人の新規入国を11月30日午前0時から当面の間、原則禁止すると発表した。

付記  11月28日に第三国経由で成田空港に到着したナミビア大使館の外交官からオミクロン株が検出された(11月30日)。
    同行した家族2人は陰性だった。



EUは11月26日の緊急協議で、アフリカ南部7カ国から域内への渡航を制限する方針で一致した。上記6カ国にモザンビークを加える。

WTOは緊急の会合を開き、11月30日から12月3日までスイスのジュネーブで4年ぶりに開催することにしていた閣僚会議を無期限延期すると発表した。
林外相と萩生田経産相は現地への訪問を取りやめる。

EUは11月26日、Charles Michel大統領が訪日し11月29日に岸田首相と東京で会談すると発表したが、コロナウイルスの急拡大を受け、延期した。

ワクチンが効かない可能性があるとされるが、PfizerとBioNTechはオミクロン株へのワクチンの有効性を検証中で、今後2週間でデータが得られる見通し。ワクチンの改良が必要な場合は6週間以内にワクチンの内容などを再設計し、早期の生産を目指す。

Moderna
やJohnson & Johnsonもワクチンの有効性を調べる試験などに着手しているという。

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WHOは「B.1.1.529」をオミクロンOmicronと命名し、VOC(Variants of Concern )に追加した。

ギリシャ語アルファベットでは、ミュー(mu)の次はニュー(nu)、クサイ (xi)オミクロン (omicron)だが、何故か、ニューとクサイを飛ばした。

   ネットには、尾身会長のオミから「尾身クローン」だと話題になっている。

実際は、ニューとクサイは意図的に避けられた。ニューは「new」という言葉と混同するため、クサイは「ある地域に汚名を着せないようにする」ためにそれぞれスキップされた。

クサイについては、英語ではxiと書くが、中国の習近平国家主席の英語名(Xi Jinping)と同じであることから、WHOが中国に気を遣って使用しなかったとの臆測が広がっている。


WHOのVOCとVOIは下記の通り。(2021/6/15 時点の表に加除した。)  

随時、加除されており、当初、「注意すべき」としてVOIに入れたが、その後、問題なしとして削除したものが多い。

WHO
判断
WHO label 最初に発見 変異
VOC:
Variants
of
Concern
アルファ VOC-202012/01
B.1.1.7)
2020/9
英国
従来株よりも感染しやすく(1.32倍)、
重症化しやすい可能性あり。
23箇所の変異
H 69/V70欠失、Y144欠失、N501Y、A570D、P681H等
ベータ 501Y.V2
(B.1.351)
2020/5
南ア
従来株よりも感染しやすく(1.5倍)、
免疫やワクチンの効果を低下させる可能性あり。
N501Y (easily gain access to our cells)
E484K, K417N (affect our immune system)
242-244欠失
ガンマ 501Y.V3
2020/11
ブラジル
従来株よりも感染しやすく(1.4~2.2倍)、
免疫やワクチンの効果を低下させる可能性あり。
N501Y (easily gain access to our cells)
E484K, K417N (affect our immune system)
デルタ B.1.617.2 2020/10
インド
感染力 1.95倍 L452R
オミクロン
(11/26追加)
B.1.1.529 2021/11
南ア
K417N, N440K, G446S, S477N, T478K, E484A, Q493K, G496S, Q498R, N501Y, Y505H
VOI:
Variants
of
Interest
イプシロン B.1.427およびB.1.429 2020/3
米国
従来株よりもやや感染しやすく、一部治療薬の効果を低下させる可能性あり。 L452R
ゼータ P.2
2020/4
ブラジル
   
イータ B.1.525 2020/12
多数国
   
シータ P.3系統
2021/1
フィリピン
従来株よりも感染しやすく、免疫やワクチンの効果を低下させる可能性あり。 N501Y
E484K
イオタ B.1.526 2020/11
米国
   
カッパ B.1.617.1
2020/10
インド
  L452R、E484Q、P681R
ラムダ C.37 2020/8
ペルー
感染力の強さに加え、ワクチン効果が最悪で 1/5落ちる。
南米のほか米国やドイツなど計29カ国で感染が確認
490番目のまったく違う新しいところに変異
ミュー
8/30追加
B.1.621 2021/1
コロンビア


国立感染症研究所による国内における変異株の分類(2021年10月28日時点)はWHOと異なる。 VOC、VOIのほかにVOUがある。

11月26日にオクミロンをVOIに加えた。 (これまでVOIは該当なしだった。) → 11月28日にVOCに引き上げた。

分類

定義

主な対応

該当

変異株

懸念される変異株

(VOC; Variants of Concern)

公衆衛生への影響が大きい感染・伝播性、毒力*、及び治療・ワクチン効果の変化が明らかになった変異株

対応

? 週単位で検出数を公表(IDWR)

? ゲノムサーベイランス(国内・検疫)

? 必要に応じて変異株PCR検査で監視

? 積極的疫学調査

ベータ株

ガンマ株

デルタ株

オクミロン

注目すべき変異株

(VOI; Variants of Interest)

公衆衛生への影響が見込まれる感染・伝播性、毒力、及び治療・ワクチン効果や診断に影響がある可能性がある、又は確実な変異株で、国内侵入・増加の兆候やリスクを認めるもの(以下、例)

・検疫での一定数の検知

・渡航例等と無関係な国内での検出

・国内でのクラスター連鎖

・日本との往来が多い国での急速な増加

警戒

?週単位で検出数を公表(IDWR)

?ゲノムサーベイランス(国内・検疫)で監視

?積極的疫学調査

?必要に応じて変異株PCR検査の準備

オクミロン

監視下の変異株

(VUM; Variants Under Monitoring)

公衆衛生への影響が見込まれる感染・伝播性、毒力、及び診断・治療・ワクチン効果に影響がある可能性がある変異を有する変異株

また、VOCやVOIに分類された変異株であっても、以下のような状況では、本分類に一定期間位置付ける

・世界的に検出数が著しく減少

・追加的な疫学的な影響なし

・国内・検疫等での検出が継続的に僅か

・特に懸念される形質変化なし

監視

?発生状況や基本的性状の情報収集

?ゲノムサーベイランス(国内・検疫)で監視

?(VOC/VOIからVUMに移行後国内発生が継続するものは)週単位で検出数を公表 (IDWR)

アルファ株

(旧)カッパ株

ラムダ株

ミュー株

AY.4.2
(デルタ プラス)

https://www.niid.go.jp/niid/ja/2019-ncov/2551-cepr/10792-cepr-b11529-2.html

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